親切な友人達
大学構内で綾と貴也が2人でいるところを見なくなり、周りはそれとなく察して、触れないようにしていた。
ところがなぜか皆、私に事情を聞いてくるのだ。いかにも2人を心配していますという風を装って、根掘り葉掘り聞いてくる。
私は多くは答えず、2人が別れた事実だけ認め、そっとしておいてあげて欲しい、詳細は私にもわからないとだけ答えた。
この時私は知らなかった。
綾はサークルの同期の男性達に、今回のことを相談して回っていて、実は皆、綾に相談を受けた男性達経由でほとんどの経緯を知っていたということを。
なぜ私がそれを知ったのか。
心配顔をした親切な友人達が、こんな話を聞いたが本当かとストレートに事実確認をしてきたのだ。
そして以前私に今回のことを聞いたときは「知らない」と答えたのに、嘘をついたのかと少し責められた。
私が巻き込まれているようだから、心配だったから声をかけたのにと言われても困る。
知っているからといって、誰にも彼にも話せることでも無いし、何より綾と貴也のことを私が話すわけにはいかない。
それなら最初から探ること無く、私のことが心配だから声をかけたと言って欲しかった。
綾がどんなつもりで男性達に相談をしていたのか知らないが(浮気した貴也がもちろん悪いのだが)、男性達は綾に同情的で、私に綾の様子を聞きにくる。
そして、貴也はひどいやつだから綾に二度と近づけないでくれと言うのだ。
私にどんな力や権限があるというのだろう。
本当に意味がわからない。言いたいことがあるのなら、貴也本人に言ってくれればいいのに。
そんな流れで綾が自ら相談して回っていることを知り、私はサークルと距離を置き、綾とも少し距離を置いた。会えば話はするし、誘われればお茶をする程度に留めた。
こんなことがあっても、綾のことが嫌いになったわけではない。だが、以前のようにずっと一緒にいる気は起こらなかった。
サークルと距離を置いたことで時間が出来た私は、勉強と趣味に時間を費やし、サークル以外の友人と過ごすことが多くなった。