ズルズル蛇さん
あるところに、一匹の蛇がおりました。その蛇はのんびり屋さんでしたが、心優しい蛇でした。
ある時、蛇は
「お前はのろますぎる。忙しいこの森でその性格ではやっていけないぞ。」
と友達のキツネに言われました。それもそうだと思い、新しい自分になるため、蛇は脱皮をしました。脱皮した皮には、少し黒い色が付いていました。これで、のんびり屋さんは卒業です。
またある時、蛇は
「君は優しすぎるんだ。そんなに優しいとこの先、生き残ることなんて出来ないよ。」
と友達のウサギに言われました。それもそうだと思い、新しい自分になるため、蛇は脱皮をしました。脱皮した皮には、前回よりも濃い黒が浮かんでいました。これで、優しい性格はおしまいです。
またまたある時、蛇は
「お前は、ここに来て何年になるんだ?もうでっかくなりすぎて、こんなとこに居られちゃ迷惑だ。」
と友達のイタチに言われました。確かにイタチの言う通り、蛇は何年間もここに居ました。キツネもウサギも、もうここには居ません。
蛇はあちこちを転々としました。
「アナタの顔は怖すぎる。」
「キミは頭が良くないね。」
「お前は運動神経悪すぎだ。」
「アンタ体温調節が下手っぴや。」
「人の気持ちも考えられないの。」
「大きすぎてこの森には入れないよ。」
「君と仲良くなれる気がしないよ。」
そして、多くの事を言われました。
その都度、蛇は脱皮をしました。
春が来て夏が来て、秋に誘われ冬が来て、蛇はどこまでも地面を這いながら、自分の居場所を探し続けました。
そんなある日。
蛇が向かった先には二人の人間がいました。そして、蛇を見てとてもびっくりしました。蛇の尾っぽの先には、長い長い脱皮の皮が繋がっていたのです。その二人は言いました。
「こんなに長い脱皮の皮は見た事ないよ。」
「模様も綺麗で珍しい。良かったら僕らにそれを譲ってくれないかい?」
二人組は蛇に向かって、そう話しかけました。
「こんな皮が欲しいなら……」
蛇はそう言って脱皮の皮を彼らに譲りました。
「「ありがとう!!」」
蛇はその言葉に驚きました。感謝された事なんて、今までただの一つもありませんでした。
固まっている蛇をよそに、二人は浮かれ足で帰っていきました。
『ありがとう』
その言葉をゆっくり反芻した蛇は、自身の身体がとても軽くなっている事に気が付きました。
まるで、羽が生えているかのようです。
蛇は、空を目指しました。
今まで見上げたことすらなかった空を、
睨みつけるようにして翔けていきました。
尾を引くような、
後ろ髪を引かれるような
そんな感じのお話です。