第6話
ルベンから定期船に乗り、北の大陸へと渡ったアルディア達。
北の大陸の南東、海沿いの町である「ホイップシティ」に辿り着いたアルディア達は、定期船で購入した防寒着、ブーツ等を早速装備し、北の大陸の北端にあるカスティード国へと向かった。
そして、馬車等での移動をはじめ数日後、目的地であるカスティード国へと辿り着いたのであった。
――カスティード国
カスティード国へと到着したアルディア達は、移動の馬車から降り、カスティード国を見渡す。
雪国であるカスティードの町並みは、東の大陸の町々とは大きく異なり、レンガ造りの家が並んでおり、また、町の造りも、流石に国家を名乗るだけあり、上手く整備がされており、カスティード国入口から正面に向かってメインの道路が伸びており、その道路を挟むかのように家や店舗が建っていた。
そして、正面道路の奥地には一際目立つ大きな宮殿が建っていた。
「正面にあるあの宮殿が、カスティード国の女王『エクレール女王』のいらっしゃる『カスティード宮殿』らしい」
「じゃああそこの建物を目指して、この大通りを歩いて行けば大丈夫だね!」
「まぁ……すんなり行くかは不明だがな……」
ザフィーアがエスメラルドにそう言うと、一行はカスティード宮殿を目指し、歩き始める。
そしてしばらく歩いた後、カスティード宮殿正面へと到着をした。
――カスティード宮殿・正面
「はぇ~、おっきい~」
カスティード宮殿を間近で見て、思わず言葉を漏らすアルディア。
「とりあえず門番に話をつけ、中に入ろう」
ザフィーアはそう言うと、早速歩き出し、門番に近づいた。
「「何者だ!」」
門の左右に並んだ門番は、手持ちの槍で門を塞ぎ、アルディア達に尋ねる。
「失礼。貴国が四柱帝と戦っているという話を耳にして、我らも志願したく、東の大陸よりやって来ました」
「わかった。しばしお待ちを」
ザフィーアが門兵に挨拶をすると、一人の門兵が宮殿内へと入っていった。
門兵が宮殿内に入り、しばらくすると、先ほどの門兵と共に、正装をした老紳士がやって来た。老紳士はアルディア達のところへやってくると、
「この度は四柱帝との戦いに参戦いただくために、遠路はるばる当国へ来国いただき、ありがとうございます」
と、礼を言い、ボウアンドスクレープをした。そして頭を起こすと続けて
「私は当国大臣を務めております、ガトーと申します」
と、自己紹介をした。
「ご丁寧にどうも。私はザフィーアと申します」
「エスメラルダです。よろしくお願いします」
「ルービィだよ!」
「アルディアです」
ザフィーアが自己紹介をすると、エスメラルダ、ルービィ、アルディアも順番に続けて自己紹介を行う。
「ご丁寧に有難うございます。では、こちらへどうぞ」
ガトーはそう言うと、アルディア達をカスティード宮殿の中へと案内をした。
――カスティード宮殿・通路
「先ずはじめに断っておきます。当国では確かに四柱帝と戦う者を募集はしておりますが、全員を受け入れているわけではありません。明らかに戦闘能力が足りないと判断した者、集団においてトラブルメーカーとなりそうな者、四柱帝側のスパイと思われる者等、場合によってはお帰りいただく事もあります」
「戦闘能力も……ですか」
「はい、戦闘能力もです。足を引っ張る可能性もある、という所もありますが、一番はやはり死ぬとわかっている者を戦場に出すわけにはいかない、という当国女王の考えでもあります」
「成る程……」
ガトーの話を聞いたザフィーアは、"戦闘能力"という要素について、戦闘経験自体のないアルディアの事が頭を過り、少し言葉を濁す感じの反応をした。
「到着しました。この先が当国女王陛下『エクレール・エル・カスティード』様が御座す玉座の間です」
ガトーはアルディア達にそういうと、扉を開け、奥へと案内をした。
――カスティード宮殿・玉座の間
玉座の間の扉を開け、更に奥へと進むガトー。そして一番奥へと辿り着くと、ガトーは跪き、「失礼いたします、女王陛下。四柱帝との戦いに参戦希望の者4名を連れて参りました」
と玉座に座っている女性へと報告をした。
「ご苦労様です、ガトー」
女王と思われる女性はそう言うと、玉座から立ち上がり、アルディア達のところへと近寄る。そして、
「このたびは四柱帝との戦いへ参戦のため、はるばる来国いただきましてありがとうございます。私がカスティード国女王『エクレール・エル・カスティード』です」
と、一礼をした。
「ご丁寧に有難うございます。私は東の大陸港町ルベン出身のザフィーアと申します」
「同じく東の大陸出身のエスメラルダです。よろしくお願いします」
「ルービィだよ!」
「アルディア……です」
ガトーの時と同様、ザフィーアの自己紹介に続き、エスメラルダ、ルービィ、アルディアが自己紹介を行う。しかしながら、アルディアについてはガトーの時と異なり、緊張をした様子で自己紹介をしていた。そんなアルディアを見たエクレールは、
「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
と声をかける。
「すいません。凄く綺麗な人だったので……」
アルディアは緊張したまま、エクレールに答える。
アルディアが言った通り、エクレールはウェーブのかかった綺麗な金色の髪、サファイアのように深い藍色の瞳、雪のように白い肌、長い睫に小さな顔と、まるで人形のような美しい容姿の持ち主であった。
「ふふっ、どうもありがとう」
エクレールは軽く笑い、アルディアにお礼を言う。そして続けて
「さて、ガトーからも説明を受けているかとは思いますが、当国は志願された方全員を受け入れるわけではありません。当然ながらある程度の戦闘能力を有する者のみとさせていただいております」
エクレールの説明を聞き、コクリと頷くアルディア達。
エクレールは更に続けて、
「とはいえ、実戦経験の有無だけで判断をするつもりはありません。数ヶ月の間、皆様には訓練等を受けていただき、その結果を見て、判断をしたいと思います。その間の皆様の衣食住につきましてはこちらで面倒を見させていただきます」
「有難うございます」
エクレールの言葉にお礼を言うザフィーア。
「なお、結果次第ではそのままお帰りいただく事もあります。その点につきましては悪しからず……。では、後はガトーにお願いをします。よろしくお願いします、ガトー」
「畏まりました。では、皆様のお部屋へご案内いたします」
エクレールから指示を受けたガトーは、エクレールへ一礼をし、アルディア達を宿舎へと案内をした。
東の大陸から旅立ち、北の大陸のカスティード国へと来たアルディア達。
四柱帝との戦いの為、数ヶ月間の訓練が始まったのであった。