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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
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第56話

 バベルのフロアにて、四柱帝ラファエル配下のクリーチャー、アエロ、オキュペテ、ケライノーと交戦をしているアルディア達。

 アルディアのオーバードライブのコントロールをはじめとし、一同の能力が強化されたこともあり、戦力的には引けをとらない状態ではあった。

 しかしながら、1フロア約10メートル程の高さがある場所、そしてそんな空間を舞いながら戦うアエロ達。地の利は相手側にある状況でアルディア達は苦戦を強いられていた。

 そして、そんな中、とうとうアエロ達の合体魔法『トリニティ』の発動を許してしまったのであった……。


 ――――バベル内部

 アエロ達の発動したトリニティによる電撃を帯びた強力な爆発。

 その爆発は、かつてルービィとザフィーアが海底城にてポセイドンに放った炎と冷気の魔法による爆発を彷彿とさせるものであった。

 それどころか、雷属性の魔法が合わさっていることによる帯電もある分、トリニティの方がより強力な魔法であることが覗えた。

 トリニティによる爆発は、その後電撃を帯びた煙を上げて、爆発した箇所の姿を隠していた。

「エスメ君? エスメ君、大丈夫なの?」

 煙によって姿の見えないエスメラルダを心配し、思わず早口でエスメラルダの無事を確認するアルディア。だが、エスメラルダの反応はなかった。

「エスメ君……嘘……」

 反応がないことに、最悪の自体が頭を過るアルディア。アルディアはその場で膝から崩れ落ちた。

「エスメ、返事しなさい!」

「……」

 エスメラルダの反応がないことに、声を荒げ叫ぶルービィ。

 そしてザフィーアはというと、無言のまま、ただ険しい表情を浮かべながら爆発による煙を見つめていた。

 すると、

「アル……、ルー……、ザフィ……」

 聞き覚えのある声が、爆発位置から大きく左の方向より聞こえてきた。

 声のする方向に急いで顔を向けるアルディア達。するとそこには、倒れ込んではいるものの、五体満足な状態のエスメラルダの姿があった。

「エスメ君、無事だったんだ……」

「腰が抜けそうだよ~」

 エスメラルダの無事な姿を見て、安堵の声を漏らすアルディアと、思わずその場で膝から崩れ落ちるルービィ。

 ザフィーアも、言葉には出さなかったものの、無事なエスメラルダを見て安堵の笑みを浮かべていた。

「よく無事だったな、エスメ」

 ザフィーアはエスメラルダに声をかける。

「ザフィ。ははは……、爆発の勢いで吹き飛ばされてね、運良く直撃は避けられたんだ」

 エスメラルダは倒れた姿勢のまま、ザフィーアにそう返した。

「そうか。いずれにせよ、無事で何よりだな」

「無事……。まぁ大きな怪我してないし、無事かぁ~……」

 ザフィーアの言葉に、エスメラルダは苦笑いをしながら、そう返した。

「しかし、これで奴らの合体魔法『トリニティ』の発動条件がわかったな」

 エスメラルダの無事が確認できると、話を切り替えるかのように、ザフィーアはトリニティに関する話題を出した。

「トリトンとポセイドンのサイクロンのように、一定の動きがあっての発動かと思ったが、トリニティの場合は単純に同一方向に魔法玉を放ち、接触させるだけで発動させられるらしい」

「その分、サイクロンに比べると威力は控えめな感じだけどね」

「控えめって言っても、あの爆発は十分驚異だよ……」

 サイクロンに比べ控えめというルービィの言葉に、攻撃を受けかけたエスメラルダは驚異である旨を思わず言葉に漏らした。

「まぁ、サイクロンと比べれば、という点はあるが……。だが、発動の簡易さ、早さは圧倒的にこちらの方が上だな」

「近づけさせないことじゃなく、とにかく同じ方向を向かせない事が大事って事だね」

「そうだな。アルの言うとおりだな」

 アルディアの言葉に、そう返すザフィーア。

 先のトリニティを見て、一同はトリニティを警戒した上での戦い方を確認。改めて今回の戦闘での動き方を協議していた。

 するとその時、

「あああああ!!!!」

 アルディアの背後に突然襲いかかる電撃の光線。

 その光線はアルディアの背中に直撃。アルディアは声を上げながら、全身を電撃に襲われた。

 そして、電撃を浴び終えると、全身から煙をあげたまま、

「かはっ……」

 と言葉を漏らし、アルディアはその場に倒れ込んだのであった。

「「「アル!!!」」」

 電撃に襲われ、倒れるアルディアに声をかける三者。

 そして、直ぐに今度はアルディアを襲った電撃の光線が飛んできた方向へ顔を向けた。

 視線の先には、空を飛び、クスクスと笑っているケライノーの姿があった。

「あまりにも隙だらけだったから、つい」

 三者と視線が合うと、ケライノーはクスクスと笑いながらそう言う。

「ダメよ? 戦いの最中に背中なんか向けちゃあ」

 ケライノーの横で、アエロが右翼で口元を隠しながらクスクスと笑い、そう言った。

「貴様……!」

 アルディアを電撃で攻撃し、クスクスと笑うアエロ達に、静かに怒りを露わにして睨みつけるザフィーア。

 そして、ルービィはというと、

「うわあぁぁぁぁ!!」

 と怒りを露わにし、拳に炎を纏わせた。

 そして、強力な脚力からの跳躍でケライノーに向かって火炎拳をしかける。

 だが、フロアから距離のある位置に滞空していたケライノーは、その距離からルービィの姿を見て避ける分には十分だった。ルービィの火炎拳はケライノーに届く位置に来たときには軽々と躱されてしまった。

 そして、空中で無防備になっているルービィに、近くに居たオキュペテが攻撃に出た。オキュペテは冷気の魔法を右足に纏うと、魔法を纏ったその足でルービィの腹部を蹴り上げた。

「がっ……」

 腹部に弱点属性の魔法を纏った蹴りを受けたルービィは、声を漏らしながら口から青い血を吐き出す。

 握っていた拳は纏っていた炎を消し、ゆっくりと拳を開く。そしてそのまま、ゆっくりと力なく、ルービィはフロアにと落ちていった。

 フロアに落ちていったルービィは、そのまま背中からフロアに身体を叩きつけられる。その衝撃でまたしても、

「がはっ……」

 と口から血を吐き出した。

「ルー、大丈夫!?」

 ゆっくりを身体を起こし、凍って滑るフロアを走りながらルービィの下へと駆け寄るエスメラルダ。

 だが、ルービィは、

「げほっ……ごほっ……」

 と、フロアに叩きつけられた衝撃からか、内臓にも衝撃によるダメージが入っていたらしく、仰向けで倒れたまま咳き込むだけで、エスメラルダの言葉に反応することはなかった。

「アルどころか、ルーまでやられちゃうなんて……」

 倒れているアルディアとルービィを見て、膝をつきそう言うエスメラルダ。

「ルー……(アルのことになると周りが見えなくなる傾向があるな)」

 ザフィーアも倒れているアルディアとルービィを横目で見て、ボソリと言葉を漏らす。

 そして、

「エスメ!」

 と声を上げ、エスメラルダの名前を叫ぶ。

「は、はい!」

 突然自身の名を叫ばれたエスメラルダは思わず敬語気味で返事をした。

「アルとルーを頼む」

 ザフィーアはアエロ達の方を向いたまま、エスメラルダにそう言う。

「わかった。……ザフィは?」

「私はこいつらの相手をする」

 ザフィーアはそう言うと、手に持った刀を強く握る。

「1対3……。大丈夫なの?」

「状況が状況だ。やるしかないだろう」

「……わかった、気をつけて」

 エスメラルダはザフィーアにそう言うと、倒れているアルディアとルービィを引きずり壁面付近に移動。移動先でスタッフを使い地面に治癒の紋様ルーンを描き、回復魔法を発動させたのであった。

 一方、ザフィーアはというと、先ほどと変わらず刀を握ったままアエロ達を睨みつける。

「一人で私たちと戦う気?」

 自身を睨みつけるザフィーアに対し、煽るかのようにクスクスと笑いながらそう言うアエロ。

「だとしたら?」

 アエロの言葉に、表情を変えず淡々とそう答えるザフィーア。

 そんなザフィーアの返しに、

「あら、勇敢ね」

「勇敢な男性は好きよ」

 と、クスクスと笑いながらオキュペテとケライノーはそう言った。

 だが、オキュペテとケライノーの言葉に、ザフィーアは特に何も返さず、表情も変えないままアエロ達を睨みつけていた。

 だが、流石のザフィーアもこの状況で容易に立ち回れると思ってはいなかった。冷静を装いつつも内心はアエロ達とどう戦うべきか、そう思考を巡らせていた。

「(数も場所も不利な状況……。さて、どうしたものか……)」

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