第55話
バベルのフロアにて、四柱帝ラファエルの配下のクリーチャーであるアエロ、オキュペテ、ケライノーと遭遇したアルディア達。
カスティードでの修行にて身につけたオーバードライブのコントロール、そしてその副産物として体得した光の刀身を形成する魔法で、アルディアはアエロの翼を切り落とすという反撃に出た。
その後、戦闘についての作戦を練ったアルディア達は、先ずはアエロ達の合体魔法『トリニティ』を発動させないよう、各々が相手をし、各個撃破する方向で戦うこととした。
――――バベル内部
「じゃあ、行くよ」
アルディアはそう言うと、銀のロッドに光の刀身を形成。その刀身を突き立てたまま、地上にいるオキュペテに向けて刺突攻撃を仕掛けた。
「おっと」
高速で仕掛けられたアルディアの刺突攻撃を、空を飛んで回避するオキュペテ。
「ッ! 避けられたか……」
突き立てた銀のロッドを持ち直すと、アルディアは空に飛んだオキュペテを見てそう言う。
一方、高く飛び上がったオキュペテは、
「残念だったわね」
とクスクスと、アルディアを小馬鹿にするかのように笑いそう言った。
「こいつら、空飛ぶから厄介だね!」
ケライノーと交戦をしていたルービィが、丁度アルディアと背中合わせになる位置に現れ、そう言う。
「フロア自体もこの高さだからな。屋外よりマシとはいえ、空を飛ぶ相手と交戦するのはやはり不利か……」
アルディアとルービィのやりとりを聞いていたザフィーアが、アエロと交戦をしながらアルディア達にそう言った。
ザフィーアの言うとおり、バベルの内部は1フロア大体10メートルほどの高さがあり、室内にしてはかなりの高さがあった。更に、基本的な構造は各フロアの壁面に階段があるだけの無機質な構造であり、そういう点も相まって空を飛ぶには障害物が少なく、有利な環境であった。
その点もあり、戦闘開始から優雅に空を舞うアエロ達。一方、アルディア達はというと、自由に空を飛ぶ相手に苦戦を強いられていたのであった。
「さて、次は私から行かせてもらおうかしら」
オキュペテはそう言うと、空中で留まったまま魔力を溜める。
そして、溜めた魔力を氷魔法の光線としてフロアに立つアルディア達に向かって放った。
「やばっ!」
自身に向かって氷の光線を見たアルディアは、そう言うと跳んで回避をする。
光線の直線上に居ないルービィ、ザフィーアも、着弾時の余波を警戒し、移動をして距離を取った。
アルディア達が回避をしたことで、フロア床面に着弾したオキュペテの魔法。すると着弾した魔法はフロアを凍結。氷の床へと姿を変えた。
「うわっ! 床が凍った」
エスメラルダは凍り付いた床を見て、そう言う。
「ただでさえ地上しか使えないところに、床の凍結か……。足場においてはかなり不利な状況だな」
「ザフィの魔法で氷を解除できない?」
ルービィは首を傾げながら、ザフィーアに尋ねる。
「無理だ。解除はあくまでも自分が使った魔法に対してのみだ」
ザフィーアはきっぱりとルービィにそう返した。
「そっか~」
ルービィはそう言うと、少し上を向く。
そして、
「あたしの炎で焼いたほうがいい?」
とザフィーアに尋ねた。
「やめろ。一気に加熱したらただでさえボロボロなのが熱疲労で崩れ落ちる」
「ダメかぁ~」
ザフィーアの返しに、ルービィはそう言い、溜め息をついた。
そして、
「どうしようね、この床」
ルービィは凍った床を見ながら、そう言うのであった。
一方、アルディアはというと、魔法回避後も空を飛ぶオキュペテを見つめ続けていた。
そして、
「飛んでる相手なら……同じ高さまで行くまで!」
そう言うと、数段飛びで階段を駆け上がり始めた。
すると、そんなアルディアの様子を見て、ケライノーが行動を起こした。
「……飛んだ!?」
ケライノーと交戦をしていたルービィは、突然飛び上がるケライノーの行動に戸惑い、言葉を漏らす。
だが、ケライノーはそんなルービィの様子に気を留めることなくそのまま飛び続け、塔の階段の一枚に電撃を当て、金属の階段に帯電させた。
一方、アルディアはというと、オキュペテに目が行っており、ケライノーの行動には気がついていなかった。そのため、オキュペテを狙うため階段を駆け上がっていた。そして、そのまま上り続け、とうとうケライノーが電撃を当てた段差を踏んでしまった。
「あああああ!!!!」
帯電した段差を踏んだアルディアは感電し、声を上げる。
そして、電撃を浴び続けたアルディアは、ゆっくりと倒れ込み、そのまま下へと落ちていった。
「アル!?」
段差から落ちてくるアルディアを見て、アルディアの名前を叫び、落ちるアルディアへと駆け寄るルービィ。
だが、ルービィの全力疾走も虚しく、アルディアはそのまま背中からフロア床面へと叩きつけられてしまった。
「アル、大丈夫!?」
落下してきたアルディアに駆け寄り、声をかけるルービィ。
アルディアは
「いたたたた……」
と言いながら、背中をさすり、起き上がる。
「アル、動ける? 骨折れてない?」
ルービィは起き上がったアルディアの両肩を持ち、前後に思いっきりアルディアの身体を揺らしながら、尋ねた。
「るるるるルービィ、大丈夫、大丈夫だよ」
アルディアは身体を揺らされながら、ルービィにそう返した。
「本当!?」
アルディアの言葉を聞いたルービィは、アルディアの身体を揺らすのを止めると、そう言う。
ルービィが身体を揺らすのを止めると、アルディアは
「うん。身体打ち付ける直前に、オーバードライブの出力を上げて身体能力を強化したから、重傷にはならなかったんだ」
と、ルービィに説明をした。
「アル……本当に強くなったんだね」
アルディアの説明を聞いたルービィは、改めてアルディアの成長を実感し、アルディアにそう言葉をかけた。
「ありがとうルーちゃん。……まぁでも、流石にお腹とかには衝撃が来たけどね」
アルディアはルービィにお礼を言った後、笑いながらお腹をさすり、そう言うのであった。
アルディアはルービィにそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。そして、空を飛ぶオキュペテ達を見上げた。
ルービィもアルディアが立ち上がった後、自身も立ち上がると、アルディアの横でアルディアと同じ視線の先を見つめた。
「あいつら、厄介だね」
ルービィはオキュペテ達を見つめたまま、アルディアに話しかける。
「うん。強い、っていうわけじゃないけど、空を飛ぶ分、厄介だなとは思う」
アルディアもオキュペテ達を見つめたまま、ルービィにそう返した。
一方、ケイラノーとオキュペテはというと、
「あら、私の電撃を耐えたのね」
「流石、ガブリエルを倒しただけはあるのね」
と、高所からアルディア達を見下ろしそう会話をする。
「でも、流石に決定打に欠けるわね」
オキュペテはケライノーに問いかける。
「そうね。このままでも負けないとは思うけど……」
ケライノーはオキュペテにそう返す。
そして、
「ここは、こちらから仕掛けさせてもらいましょう」
ケライノーはそう言うと横に視線を向け、雷の魔法玉を作り出す。
「そうね。そうさせてもらいましょう」
ケライノーの言葉に続き、オキュペテはそう言うと、冷気の魔法玉を作り出した。
ケライノーとオキュペテが魔法玉を作り出すと、ザフィーアと交戦していたアエロも、ザフィーアに炎を纏った爪蹴りを仕掛けた後、炎の魔法玉を作り出した。
アエロの爪蹴りを、ザフィーアは刀で受け止めた。そのため、ダメージは負わなかったものの、急に仕掛けられた爪蹴りを受け止めた勢いと氷のフロアで滑り、大きく後退をする。
「ザフィ、大丈夫?」
「ルー……。ああ、特にダメージは負っていないから大丈夫だ」
大きく後退したザフィーアは、アルディアとルービィが立っていた場所にまで移動していた。
「あの魔法玉、何する気だろう」
アルディアはアエロ達が作り出した魔法玉を見て、そう言う。
「嫌な予感はするが……」
アルディアの言葉に、そう返すザフィーア。
ザフィーアがそう言うと、
「とりあえず、阻止した方が良さそうだよね」
アルディアはそう言うと、1.2倍強化のオーバードライブ状態のまま、レイの魔法をケライノーに向けて放つ。
だが、フロアから距離のある場所に滞空していたケライノーは、アルディアのレイを軽く回避。そしてその後、横に向けていた視線の方向に身体を向けると、作っていた魔法玉を放った。
ケライノーが魔法玉を放つと、オキュペテとアエロもケライノーが放った方向と同じ方向に、作り出していた魔法玉を放った。
3体の放った魔法玉は、アルディア達の場所とは異なる方向に飛んでいく。自身とは別の方向に飛んでいく魔法玉に違和感を覚え、飛んでいく先へ視線を向けるアルディア達。
すると、視線の先、魔法玉の飛んでいく先には、エスメラルダの姿があった。
「え゛!? こっちに来る!?」
完全にノーマーク扱いだった自身に、突然飛んでくる魔法玉。エスメラルダは思わずそう言葉を漏らした。
「エスメ! 逃げろ!」
ザフィーアは珍しく声を荒げ、エスメラルダにそう言う。
「う、うん!」
ザフィーアの言葉に反応し、滑る氷のフロアを走り、回避を試みるエスメラルダ。
しかし、エスメラルダの行動開始が遅かった点、そしてフロアの凍結によって思ったように動けない点も相まって、エスメラルダが距離を取る前に魔法玉は着弾。アエロ達の合体魔法『トリニティ』は、電撃を帯びた爆発を起こしたのであった。




