第53話
「アエロ! オキュペテ! ケライノー!」
ザフィーアは3体を睨みつけ、帯刀している刀の柄に手をかける。
「あら、覚えてくれていたの? 嬉しい」
オキュペテはそういうと、クスリと笑う。
「誰?」
アルディアはアエロ達を指差しながら、ルービィに尋ねる。
「ラファエルのクリーチャーだよ。幹部級の」
ルービィはアルディアにそう答える。
「幹部級!?」
「ガブリエルのトリトン、ポセイドンにあたる奴ら、ってところかな」
ルービィの回答を聞き、アルディアとエスメラルダはそう反応した。
「ふふふ。あんな魚と一緒にはしないでほしいわ」
ケライノーがそう言うと、3体はゆっくりと下に降り立つ。
そして、フロアに足をつけるとゆっくりと、アルディア達の方に歩み寄った。
「あなたたち、どうしてバベルなんかへ?」
アエロはアルディア達に尋ねる。
「……それを我々が答える必要があるのか?」
ザフィーアは刀の柄に手をかけたまま、アエロ達を睨みそう答える。
「あら、冷たい。教えてくれてもいいじゃない」
アエロは口をとがらせながら、そう言った。
「ま、ある程度察しはつくけどね」
ケライノーはそう言うと、左翼で口元を隠しながらクスリと笑う。
「エメラルドドラゴンの力でも借りるつもりだったかしら?」
オキュペテはクスクスと笑いながら、そう言った。
オキュペテの言葉を聞いたエスメラルダは、
「察し良いな」
と、思わず言葉を漏らした。
「ふふ、バベルなんてエメラルドドラゴンに用がなければ訪れる場所じゃないでしょう?」
「それに、あなたたちがサファイアドラゴンと接触してる点も踏まえたら、エメラルドドラゴンと接触しようとしている可能性も容易に想像できるでしょう?」
エスメラルダの漏らした言葉に、そう返すオキュペテとケライノー。
オキュペテとケライノーに図星をつかれたエスメラルダは、思わず
「う……」
と言葉を詰まらせた。
そんなエスメラルダの横で、ザフィーアは左腰の鞘に収まった刀の柄を握ったまま、
「だとしたら、どうするというのだ?」
と言い、オキュペテ達を睨みつけた。
ザフィーアの言葉に、アエロは
「ふふ、馬鹿馬鹿しい思惑だけど……万が一って事もある」
と返す。
続けてオキュペテが
「それに万が一天空宮へ行けたとしても、あなたたちがラファエル様に敵うとは思わない」
と言う。
そして更に続けてケライノーが
「でも、わざわざラファエル様の手を煩わせる必要もない」
と言うと、両翼を広げる。
ケライノーが両翼を広げると、アエロとオキュペテも両翼を広げた。
そして3体は声を合わせて、
「「「だから、私たちが相手してあげる!」」」
と言い、戦闘態勢へと入った。
アエロ、オキュペテ、ケライノーが戦闘態勢に入ると、アルディアは銀のロッドを、エスメラルダは杖を、ルービィは拳を、ザフィーアは鞘から抜刀した刀をそれぞれ構え、戦闘態勢に入った。
アルディア達も戦闘態勢に入ると、アエロが飛び上がり両翼の翼を大きく振りかぶりはばたいた。
アエロがはばたくと、アエロの両翼の翼から放たれた魔法の炎がはばたきによって発生した風に乗って、アルディア達を襲った。
アエロの魔法を回避する余裕のなかったアルディア達は、アエロの魔法をその身で受ける。
幸い、アエロの放った魔法は、そこまで強力なものではなく、アルディア達は少し火傷を負った程度のものであった。特にルービィに至っては、同じ火属性の魔法ということもあり、殆どダメージを負っておらず、服が少し焦げた程度で済んでいた。
アエロの魔法を受けたアルディアたちは、炎の熱気で軽くむせる。
アルディアたちがむせていると、次はオキュペテが、
「じゃあ、次は私の番ね」
そう言うと、アエロ同様、両翼の翼を大きく振りかぶりはばたいた。
すると、今度はオキュペテの両翼から冷気の魔法が放たれる。冷気はアエロの炎の魔法と同様、はばたきによって発生した風に乗って、またしてもアルディア達を襲った。
アルディア達はその身でオキュペテの冷気を受け止める。この魔法も、アエロの炎と同様、そこまで強力なものではなかったため、負ったダメージは微々たるものであった。特にザフィーアに至っては、同じ水属性の魔法ということもあり、服に霜がついた程度であった。
だが一方で、ルービィは少し違った。弱点属性であるオキュペテの魔法は、ルービィの肌に軽い凍傷を負わせたのであった。
「うぅ……」
目を瞑り、声を漏らすルービィ。
そんなルービィの下に、
「ルーちゃん、大丈夫!?」
アルディアはそう言いながら駆け寄った。
「大丈夫。大したダメージじゃないから」
自身を心配するアルディアに、ルービィはそう言うと、口角を上げ、にこりと笑った。
だが、そんなアルディア達に構うことなく、今度はケライノーが動き出す。
ケライノーも先の2体と同様、両翼の翼を大きく広げ、
「今度は、わ・た・し」
ケライノーはそう言うと、大きく広げた両翼の翼を振りかぶり、はばたいた。
ケライノーはアエロ、オキュペテ同様はばたきによって発生させた風にのせて両翼から放たれた魔法をアルディア達に向けて飛ばす。炎、冷気と来て、今度は電撃がアルディア達を襲う。
この電撃もアルディア達はその身で受け止める。先の炎、冷気同様そこまで強力なものではなかったため、多少の痺れと軽い雷撃傷を負った程度だった。
だが、唯一弱点属性であったザフィーアだけは違った。ケライノーの電撃は、ザフィーアに他のメンバーよりも強い痺れを与えた。
「むぅ……」
電撃の痺れに思わず膝をつくザフィーア。
「ザフィ!?」
今までの戦いの中で殆ど膝をつくようなことがなかったザフィーアが、膝をつくという事態に思わず声をかけるエスメラルダ。
「大丈夫だ。少し、痺れただけだ……」
自身に声をかけるエスメラルダに、ザフィーアはそう返すと、ゆっくりと立ち上がる。
ザフィーアが立ち上がると、アエロ、オキュペテ、ケライノーはクスクスと笑いながら、アルディア達の前へ降り立った。
「どう? 私たちの魔法は」
アエロは挑発するかのように、アルディア達にそう言う。
「面白いでしょ? 私たち、3体とも別属性なの」
オキュペテが、自身たちの属性について説明をした。
「でも、さっきのはあくまで挨拶程度」
ケライノーがそう言うと、3体はまたしても両翼の翼を大きく広げた。
そして、
「本番は、こ・れ・か・ら」
アエロがそう言うと、3体は再び戦闘態勢へと入った。
「3体それぞれ別属性の持ち主なのか」
アエロ、オキュペテ、ケライノーの方を見ながら、ザフィーアはそう言う。
「ラファエルのクリーチャーだよね? クリーチャーって術者と同じ属性しか造れないんじゃ……」
3体それぞれが別属性であることに疑問を抱いたエスメラルダが、言葉を漏らした。
「何か、からくりがあるのだろう。何かは、わからんがな……」
ザフィーアはエスメラルダにそう言うと、刀を構えた。
「ま、そこら辺はラファエルに会ってから、かな?」
エスメラルダもそう言うと、杖を構えた。
ザフィーアとエスメラルダが武器を構えると、ルービィ、アルディアもそれぞれ再び拳を、銀のロッドを構えた。
「次、どー出るかな?」
ルービィは拳を構えながら、一同に尋ねる。
「3体いるしね。誰が動くかな?」
アルディアは銀のロッドを構えながら、3体の動きをしっかりと見つめていた。
「……こいつらも、トリトンやポセイドンみたいに合体魔法でもあるのかな?」
エスメラルダは冗談っぽく、軽く笑いながらそう言う。
すると、
「あら、察しがいいのね」
とオキュペテがエスメラルダに声をかける。
オキュペテの突然の声かけに、
「え!?」
と、驚く様子を見せるエスメラルダ。
だが、そんなエスメラルダの様子を気に留めることもなく、今度はケライノーが、
「そう、私たち、合体魔法も使えるの」
とエスメラルダに話しかけた。
「私たちの合体魔法『トリニティ』。受けてみる?」
最後にアエロがそう言うと、3体は両翼の翼を大きく広げ、魔力を溜め始める。
そんな3体の様子を見て、エスメラルダは
「いや、本当に合体魔法あったんだ……」
と、引きつった笑みを浮かべ、3体の様子を見ていた。
すると、
「!!」
突然、アエロが左翼を切り落とされる感覚に襲われた。
左翼を切り落とされたことで、魔力溜めが強制的に中断させられたアエロ。
アエロはゆっくりと切り落とされた左翼の方へ顔を向けた。すると、左翼側後方には光の刀身を成形させた銀のロッドを両手で持ったアルディアが、刃を振り下ろし屈んだ状態でその場に居たのであった。
「その魔法の発動を、待つ理由はないよね?」
アルディアはアエロの方を見ることなく、そう問いかける。
「貴女……!」
アエロは少し苛ついた様子を見せつつも、左翼を再生。再び左翼を造り出した。
バベルにてアエロ、オキュペテ、ケライノーと交戦をすることになったアルディア達。戦いは、まだはじまったばかりである……。




