第51話
バベルを目指し、ルベンから出港したアルディア達。
一行は、バベルのある孤島へと向かう船の上で、景色を見ながら到着までの時間を過ごしていた。
「いい天気だなー」
船の上で景色を見ながら、アルディアはそう言う。
「北の大陸から戻る時もそうだが、海上は穏やかだな」
ザフィーアも景色を見ながら、そう言う。
「海上が穏やかなのは、あんたたちが四柱帝を倒してくれたお陰だろ」
ザフィーアの言葉に、船頭は船を運転しながらそう声をかける。
「あんたたちのお陰で、俺たちは安全に船を出すことができるようになった。ありがとうよ」
船頭は続けて、アルディア達にお礼を言った。
アルディアはその言葉を聞き、少し照れながら、右の頬を人差し指で掻いた。
そんなやりとりをしながら、穏やかな海の上を北東に進んでいくと、一同の進行方向の前に天にまで昇るような大きな柱がうっすらと姿を現した。
「あれが……バベルか?」
前方に見える大きな柱を見たザフィーアが、そう言う。
「頂上が全く見えないな……」
今度はエスメラルダが、バベルと思われる柱を見上げてそう言う。
一同がそう言いながら景色を見ている中、船はどんどんとバベルの方へと近付いていく。うっすらと見えていた姿もどんどんとはっきりと見えてくる。それにより、はじめは大きな柱と形容されていたバベルが、巨大な塔であることが確認できた。
そして、船はそのままバベルの方へと更に近付いていき、いよいよバベルの建っている孤島へと辿り着いたのであった。
――――バベルの孤島
バベルが建っている孤島に辿り着いたアルディア達。
孤島に降り立つと、改めてバベルを見上げた。
「うーわー、頂上見えない~……」
エスメラルダは首を痛めそうなくらい上を見て、そう言う。
「入口? っぽい扉も大きいね」
アルディアは目の前にある、バベルの入口と思われる扉を見てそう言う。
アルディアの目前にある鉄製と思われるその扉は、アルディア達の2倍以上の高さがあり、建物だけでなく扉まで巨大なものであった。
「これ、昇るのかぁ~……」
エスメラルダはそういうと、溜め息をつく。
「まぁ、仕方あるまい……」
ザフィーアはそう言うものの、エスメラルダ同様、溜め息をついていた。
「でもさ、これどうやって入るの?」
ルービィは入口の扉を指差し、ザフィーアに尋ねる。と言うものの、バベルの入口の扉には、取っ手のようなものがついておらず、例えるなら扉というよりも厚い鉄板のようなものであった。そのため、一般的に想定できる開閉方法ではおよそ開けることのできるようなものではなかった。
「確かに、入り方がわからないな」
ザフィーアもそう言うと、扉の前で腕を組んだ。
「とりあえず殴ってみる?」
ルービィはそういうと、右手を握り拳を構える。
「やめておけ。拳が砕けるだけだ」
ザフィーアは冷静に、ルービィにそう返した。
「しかし、どうしたらいいんだろう?」
エスメラルダはそう言うと、首を傾げる。
すると、そんなエスメラルダの横を横切り、アルディアが扉の前に足を運ぶ。そして、右手を出すと、扉に触れた。
アルディアが扉に触れると、アルディアの触れた箇所を起点とし、緑色の光が蔦のように扉全体に走っていった。
そして、蔦のように伸びた緑色の光が扉全体に一通り行き渡ると、扉は左右に開き、開門したのであった。
「開いた……」
エスメラルダは開いた扉を見て、そう言う。
「アル、何かしたのか?」
ザフィーアはアルディアに尋ねる。
「んーん、何も。ただなんとなく扉触っただけなんだけど……」
アルディアは首を横に振り、そう答えた。
「そうか。……どういう理屈なんだ?」
「アルの持っている聖石にでも反応した?」
ザフィーアとエスメラルダは首を傾げながら、それぞれそう言った。
「ま、何でもいいじゃん。開いたんだしさ」
首を傾げるザフィーアとエスメラルダに、ルービィはそう言うと、前に歩き始める。
「まぁ、それもそうだな」
「考えても仕方ないしね」
「そうだね、行こうか」
ザフィーア、エスメラルダ、アルディアは先に進むルービィの背中を見ながら、それぞれそう言った。
そして、エスメラルダ、アルディアはルービィに続き、バベルの中へと入っていった。
一方、ザフィーアは船の方に戻ると、船頭に声をかけた。
「船頭。お世話になりました。お代についてだが」
「いや、それについてはマリンさんから既に話がついているしな」
「そ、そうですか……」
船頭の回答を聞き、またしても一抹の不安に襲われた。
「それよりも、俺はどうしたらいい?」
「あ、ああ、そうですね。私たちはこのままバベルを昇り、目論見通りいけばそのまま天空宮へと行くことになる。なので、このまま戻っていただければ大丈夫だ」
「そうか。じゃあそうさせてもらうぜ」
船頭はそういうと、船を出す準備をはじめた。
「万が一、迎えが必要な場合はミニオンで連絡をする。その際は、申し訳ないがお願いします」
「わかった。健闘を祈る」
船頭はザフィーアにそう言うと、船を出した。
ザフィーアは船が出たのを確認すると、アルディア達の後を追い、バベルの中へと入っていったのであった。
――――バベル内部
アルディアが入口を開いたことで、バベルの内部へと入った一同。
塔は扉同様鉄製の造りをしており、アルディアが今まで見てきた建物とは異なり、機械的な雰囲気を持っていた。
しかしながら、長い間孤島にて侵入を許さず放置されていたためだろうか。内部は至る箇所が錆びており、劣化も目立っていた。
「なんか、錆びくさいね……」
エスメラルダは、鼻をつまみながらそう言う。
「地面もなんかヌルヌルしてるね」
アルディアは右足を前後に擦りながら、そう言った。
「長い間、潮風にあてられていたからだろうか?」
エスメラルダとアルディアの話を聞き、ザフィーアはそう言う。
「上るの、危なそうだな~」
エスメラルダは鼻をつまんだまま、そう言う。
「まぁ、そう言っても仕方あるまい」
「ま、そうだよねぇ」
ザフィーアの言葉に、エスメラルダは溜め息をつき、そう言った。
「でもさ、割と直ぐに天井あるよ」
ルービィは上を指差し、そう言う。
ルービィが指差した上部を見ると、肉眼で確認できる箇所に、天井があった。
「割と近くに天井が見える……」
「意外に低いのかな?」
エスメラルダとアルディアは、ルービィが指差した先を見つめながらそう言う。
「頂上ではなく、途中のフロアだろう」
「でーすよねー」
ザフィーアの言葉を聞くと、エスメラルダは溜め息をつきながらそう言い、肩を落とした。
「ま、まぁさ、ひたすら階段上り続けなきゃいけないわけじゃないんだし」
肩を落とすエスメラルダに、アルディアはフォローするようにそう声をかけた。
「そうだな。休憩しつつ少しずつ、上っていこう」
ザフィーアも肩を落とすエスメラルダにそう声をかけた。
一方、ルービィはというと、
「ま、上るしかないし、早く行こうよ」
そういうと、壁伝いに螺旋状に取り付けられている階段を上り始めた。
「ルービィ……」
「元気だな。ま、その通りか」
エスメラルダとザフィーアは、階段を上り始めるルービィを見つめ、そう言う。
「おーい、早くいこーよー!」
ルービィは上った階段の上から、下に居るアルディア達に声をかける。
「あ、ごめん。今いくよー」
アルディアはルービィにそう言うと、走って階段を上り始めた。
「アル……」
「……我々も行こうか」
「そっすね……」
エスメラルダはそう答えると、ザフィーアと共にルービィとアルディアの後を追って階段を上りはじめるのであった。




