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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
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第39話

 ディナの都の町中にて、ハイン率いる軍勢と遭遇したアルディア達。

 ルービィとザフィーアの活躍とディアの出現によって、ハインの軍勢は撤退。ハインに命を狙われた女性は一命をとりとめた。

 だが、再びハインが現れる可能性もあり、アルディア達はハインの出現に警戒をしていた。

 そんな日が数日経過したある日……。


 ――――ディナの都・裏通り

 アルディア達がハインと交戦した通りから奥に入った裏通り。

 夜も更けた頃、この通りでは何名もの女性の姿があった。

 どの女性も尖った耳をしており、その容姿から魔族と思われる女性は、他の女性と接触することもなく、適当な距離を置き、ただその場に立っている。

 通りに男性がやってくると、魔族の女性たちは次々と声をかけていく。そして、男性との会話が終わると、女性は声をかけた男性と共に、夜の町へと消えていった。

 ここに立っている魔族の女性たちは、このようにして"客"を捕まえているのであった。

 そんな通りに、頭にフードを被った、黒い服装をした者の姿が現れる。

 恐らくその者も男性なのだろう。裏通りに立っていた金髪の魔族の女性が、その黒い服装の者に声をかける。

「お兄さん、今ヒマ?」

「……」

 黒い服装の者は、女性の問いかけに、何も言わず首を縦に振る。

「ねぇ、だったら私と遊ばない?」

 魔族の女性はそう言うと、黒い服装の者に身体を密着させる。

 黒い服装の男性は、

「構わない。だが、もう少し人気のないところへ移りたい」

 と、女性に答える。

 その言葉に、金髪の魔族の女性はクスリと笑った。

「"外"がいいってこと? 大胆ね。いいわよ、行きましょう。でも、移動したらまずは"商談"、ネ?」

「わかっている」

 黒い服装の者が魔族の女性にそう返すと、魔族の女性は黒い服装の者と腕組みをし、夜の闇へと消えていったのであった……。


 ――――翌朝

 この日は朝から、裏通りが騒がしかった。

 普段は日中でもそこまで人通りのない裏通りであるが、珍しく多くの人族や魔族が集まっていたのであった。

 騒ぎを聞きつけたディナの役人が、

「どいてください! そこを通して」

 と、群衆をかき分けて前へ進んでいく。

 そして、群衆の視線の先へ辿り着くと、あるものを目にしたのであった。

「!これは……」


 ――――ディナの屋敷・ディアの部屋

「ディア様、失礼します!」

 屋敷内のディアの部屋に、突然役人が入ってくる。

「朝から騒々しいな。どうしたのだ」

 ディアは、手に持っていた書籍を閉じ、入ってきた役人にそう尋ねる。

「申し訳ございません。実は裏通りで殺しの事件がありまして……」

「事件?」

 役人からの説明を受けたディアは首を傾げつつも、

「わかった。現場に向かおう」

 そう言うと立ち上がり、ディナの都の裏通りへと向かったのであった。


 ――――ディナの都・裏通り

 役人からの話を聞き、現場へ向かったディア。

 現場に向かう途中、ディアが宿に寄りアルディア達に声をかけたため、現場にはアルディア達も同行していた。

「ザフィーア殿、朝から申し訳ない」

 ディアは早朝より連れ出した事をザフィーアに詫びる。

「いや、構いませんよ」

 ザフィーアはディアにそう返した。

「しかし、町中で殺しとは……」

「場所が裏通りなのでね。治安の良い場所とは言い難いのですが……」

 ザフィーアとディアはそのような会話をしながら歩いていると、裏通りへと辿り着く。

 裏通りの事件現場と思われる場所では、役人が立っており、現場へ近付こうとしている野次馬をあしらっていた。

 そんな役人の前に現れるディアとアルディア達。

 役人はディアの姿を見ると、

「ディア様! お疲れ様です」

 と言い、敬礼をする。

 ディアは

「早朝よりお疲れ様。この者達と一緒に、中に入れてもらえるか?」

 と、役人に尋ねた。

「勿論でございます」

 役人はそう言うと、道を開けた。

 役人が道を開けると、先へ進もうとする一同。

 すると、

「アル。エスメ。二人はここに残ってろ」

 と、突然ザフィーアがアルディアとエスメラルダにそう言う。

「えー」

「また?」

 アルディアとエスメラルダはザフィーアの言葉に、そう苦言を呈する。

「アル、お前は四柱帝を倒しているとはいえ、まだ子供。殺しの現場なんか見るものじゃない」

「……」

「それにエスメ。色々と世の中の事を知ってはいるが、お前もだ。ここは、私たち大人に任せて欲しい」

「……わかったよ」

 ザフィーアの言葉にエスメラルダはそう答えると、エスメラルダはアルディアと共にその場に立ち止まった。

 そんなアルディアとエスメラルダを見て、ザフィーアは

「すまない」

 と言うと、ディア、ルービィと共に事件現場へと向かったのであった。


 役人が封鎖していた場所の奥へ進むザフィーア、ルービィ、ディアの3名。

 進んだ先には、数名の役人と、うつ伏せに倒れた遺体の姿があった。

 うつ伏せに倒れた遺体の背中部分から青い血が流れていることから、殺された被害者は魔族であることが覗える。

「ディア様、お疲れ様です」

 事件現場の調査をしていた役人の一人が、ディアに気づくとそう言い、敬礼をする。

 一人の役人が敬礼をすると、他の役人も次々とディアに挨拶をし、敬礼をした。

「お疲れ様。事件状況を聞かせてもらえるか?」

 ディアは役人に事件状況について尋ねる。

「はっ。今回の被害者は、この場所を生業にしている、所謂"春を売る仕事"をしている魔族の女性です」

「"春を売る仕事"の魔族、か……」

 役人の報告を聞くと、ディアは顔を曇らせる。

「ディア殿、どうされましたか?」

 顔を曇らせるディアに、ザフィーアはそう尋ねる。

「ああ、ザフィーア殿。お恥ずかしい話なのですが、ここディナの都では裏通りの治安改善が中々進んでいなくてな……。特に魔族の女性による"春を売る"行為も問題になっているのだ」

「そうですか……。大きな町特有の問題ですな」

「そうかもしれませんな。しかも、残念ながら種族差別問題が未だ残っている。故に表ではまともに生計を立てられない魔族が、このような行為に及んでいるのだ」

「魔族差別問題、ですか……」

 ディアの話を聞き、ザフィーアは腕を組み、息をフーッと吐いた。

「魔族差別? 何ソレ?」

 ディアとザフィーアの会話に出てきた言葉に引っかかったルービィが、二人の会話に割って入るように、そう尋ねる。

「ああ。まぁ、由来は4,000年以上も昔にあった『人魔戦争じんませんそう』という、人族と魔族による大戦なのだが……。この戦争で人族が勝った為、現在も魔族は差別的な扱いを受けることもあるという問題だ」

「へー」

「4,000年以上も昔の戦争の話を理由に、未だに差別の口実にするのも如何なものかと思うのだが……」

 ディアはそう言うと、右手で頭を抱え、溜め息をついた。

 そして、

「すまない。報告を続けてくれ」

 と、役人に言った。

「はっ! では報告を続けます。被害者の魔族女性についてですが、遺体を確認したところ、背中から鋭利な刃物で刺され死亡したと思われます。なお、遺体を確認したところ、抵抗した様子も覗えないことから、被害者と近しい者、もしくは"客"の線が高いかと……」

「成る程……」

 役人からの報告を聞くと、ディアはそう言った。

「しかし、近しい者だとしても、"客"だとしても、抵抗した様子もないまま殺されたとなると、加害者も相当の手練れなのでは?」

「はい。恐らく魔法による刺殺と考えていますが、だとしてもかなりの使い手かと……」

 ザフィーアの問いかけに、役人はそう返した。

「手練れの魔法の使い手、か」

 役人の報告を聞き、そう呟くディア。

 するとそんなディアの元に、別の役人がやってきて、

「ディア様。被害者の手にこのようなものが……」

 と、三つ折りにされた一枚の紙を持ってきた。

 役人が持ってきた紙を広げ、中を確認するディア。

 すると、ディアの表情がどんどんと強張ってきた。

「どうされましたか、ディア殿?」

 強張るディアの表情を見て、そう尋ねるザフィーア。

「犯人が、わかった」

 ディアはそう言うと、手に持った紙をザフィーアに渡した。

 ディアから紙を受け取り、ルービィと共に中を確認するザフィーア。

 中に書かれた内容を読むと、ザフィーアは目を大きく開いたのであった。

「これは……」

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