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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter1 北の大陸
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第3話

――港町ルベン

ゼブルンの町より西、東の大陸の内海側の海沿いに位置する港町、ルベン。

北の大陸への定期船が出ている事もあり、人の往来が多いこの町は、ゼブルンの町よりも一段と大きく、人口の多い東の大陸の中でも5本の指に入る規模の大きさを誇る町となっている。

また、海に近い事もあり、海産物をはじめとした食料に恵まれているこの町は、飲食店も多く、北の大陸との往来者だけではなく、食事を目的とした人も訪れている。

そんなルベンの町にある大衆向けの食事店の前で、アルディアとルービィは食事代の会計をしているエスメラルダを待っていた。

「エスメラルダ君、遅いね」

「どーしたんだろーねー」

そんな会話をしながらエスメラルダが店から出てくるのを待っている二人。

すると、エスメラルダが二人の事を気にもとめず、猛スピードで店から出ていき、そのまま走って行った。

慌ててエスメラルダを追いかける二人。

「ちょっと、エスメラルダ君、どうしたの?」

「置いていくなんて酷いじゃん!」

走りながらエスメラルダにそう言うアルディアとルービィ。

しかしエスメラルダは

「いいから! 兎に角走るよ!」

理由も言わず、それだけ二人に言った。

「ちょっと、せめて理由くらい言いなよ!」

「いいから! 走って!」

ルービィの問いかけに対しても、走れとだけ返すエスメラルダ。

理由もわからず走らされる事に不信感を持ちながらも、止まる気配もないエスメラルダの事もありとりあえず走るアルディアとルービィ。

すると、三人の後方から

「待てー! 食い逃げ犯-!」

そう言いながら、包丁を持って追いかける人の姿があった。

「やば、追いついてきた!」

包丁を持って追いかける人の姿を見てそう言うエスメラルダ。

「え? 何? 誰あの人?」

「っていうか何であたしら追いかけてんの?」

状況が理解できないアルディアとルービィは口々にエスメラルダに尋ねる。

「そんなのお金持ってないから逃げたにきまってるからだよ!」

「「ええー!!」」

エスメラルダの発言に驚くアルディアとルービィ。そして、

「それって泥棒だよ……」

「あんた何してんのよ!」

アルディアとルービィは口々にエスメラルダへ苦言を呈した。

しかし、

「いや、誰のせいだと思ってるの? 後先何も考えず馬鹿みたいに食べて! 総額いくらだったと思う? 4,980ガラッドだよ? 4,980ガラッド! 持ってるわけないでしょ、そんなお金!」

エスメラルダは声を荒げ、二人に反論をした。

「4,980ガラッド……。それって高いの?」

「さぁ? あたしお金のことは全然わかんないから」

4,980ガラッドという金額の価値がわからない二人は、エスメラルダから4,980ガラッドという金額を聞いても全く理解ができなかったのであった。

「(こいつら……)」

全く理解のできていない二人に対し、内心呆れ返るエスメラルダ。しかし、お店の人に追いかけられている状況は変わっているわけではないので、呆れ返りつつも、

「とにかくあの人巻くよ! 後のことはそれからだから! いいね!!」

アルディアとルービィの二人にそう指示を出した。

「「はーい!」」

エスメラルダの指示に二つ返事をすると、アルディアとルービィは早々に、エスメラルダを置いていくかのような猛スピードで走り出した。

「(あれだけ食べて何であんな速度で走れるんだよ……)」

猛スピードで去って行く二人を見て、内心そう思いつつも、エスメラルダも二人を追いかけるかのように、走る速度を上げたのであった。

「はぁ……待ちやがれ……くそっ……」

三人を追いかけていた店の店主も、物凄いスピードで去って行った三人の速度に追いつけず、いよいよその場で息を切らしてしまう。

すると背後から、

「何の騒ぎですか?」

そう言いながら、長身の男性が姿を現す。

「あ、ザフィーアさん」

店の店主は男性を見ると、そう言う。そして続けて

「実はうちの店で食い逃げした三人組がいるんですが、どうにも逃げ足の早い連中で……」

と、状況を説明した。

ザフィーアと呼ばれた男性は、

「そうですか、食い逃げ犯が……。して、その食い逃げ犯はどちらの方向へ?」

と店主に尋ねる。店主は、

「あっちの方向ですわ」

そう言うと、アルディア達が逃げていった方角を指さした。

「そうですか、ありがとうございます」

ザフィーアはそう言うと、左の腰に帯刀している白い柄の刀を抜く。

紺色の鞘から抜刀された銀色の美しい刀身を持つその刀を鞘から抜ききると、天の方を向いていた刀身をくるりと返し、地面へと勢いよく突き刺す。そして刀を持っていた右手をそのまま力強く握ると、刀から冷気が出始める。そして、地面に突き刺した刀を起点として、アルディア達の逃げた方角へ向かい、刀は氷の道を作りはじめた。

ザフィーアの刀から走った氷の道は、みるみるうちに進みはじめ、猛スピードで逃げるアルディア達に追いつきはじめる。そして、アルディア達に追いつくと、氷の道はアルディア達の足下を凍らせ、アルディア達の動きを止めたのだった。

「え? 何これ!?」

「動けない~!!」

「くそっ! 氷の魔法で凍らされたんだ……」

ザフィーアの魔法を受けたアルディア、ルービィ、エスメラルダの3人は、各々口にしながら、踝辺りまで凍らされた足を何とか動かせないか試みる。しかしながら、ザフィーアの使用した魔法は、効果こそ足下を凍らせる程度ではあるものの、それなりに強力な魔力で放っている為、中々簡単に解除できるものではなかった。

そんな悪戦苦闘をしている3人にゆっくりと近寄るザフィーア。そして、3人の下へと辿り着くと、

「食い逃げの現行犯だな? 悪いが連行させてもらう」

そう言うと、3人を縄で拘束し抵抗できない状態にした後、足下の魔法を解除。そしてそのまま、3人を連行したのであった。

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