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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
37/43

第36話

 東の大陸の各地で暴れている四柱帝ラファエルの配下を名乗る魔族『ハイン』によって連れ去られたルベンの町長『タンザ』を求め、ディナの都を訪れた一同。

 ディナの都の宿屋にて、女将よりディナの政に携わっている『ディア』という者についての情報を得た。

 ディアに会うため、一同は翌日、ディアが居るという屋敷を尋ねるのであった。


 ――――ディナの都・屋敷門前

 宿屋の女将よりディアが居ると教わった屋敷を尋ねた一同。

 屋敷の場所に辿り着くと、他の建物よりも一回り以上大きな、平屋建ての家が目の前に現れた。

「ここがディア殿の居る屋敷か」

 屋敷を前にし、ザフィーアがそう言う。

「明らかに他の家と違うねぇ」

 ルービィも道中の家と比較し、そう言う。

「でも、カスティード宮殿と比べると、そこまでって気も……」

 アルディアはカスティード宮殿と比較し、そう言う。

「まぁ、カスティード宮殿は流石に王族の居城だし、しかもあそこ、歴史的建造物だからね……」

 アルディアの言葉を聞き、エスメラルダはアルディアにそう返した。

「とりあえず、進もうか」

 ザフィーアがそういうと、一同は屋敷の方角へと歩みを進める。

 すると、屋敷の入口に立っていた門番が、

「待て!」

 と、屋敷に近づいてくるアルディア達を制止するかのように声をかけた。

 門番の声を聞き、思わず立ち止まる一同。

 一同が立ち止まると、門番は一同に近づき、

「何用だ!?」

 と声をかける。

「失礼。こちらにいらっしゃるディア様にお会いしたく、お伺いしました。私はルベン町議のザフィーアと申します」

 ザフィーアは要件と、併せて自己紹介をした。

「ザフィーア殿でしたか。失礼しました」

 門番はそういうと、敬礼のポーズをとる。

 そして、

「して、本日はアポを取られておりますか?」

 とザフィーアに尋ねた。

「いや、特にアポは取っていないのだ」

 ザフィーアは、門番にそう答えた。

「左様ですか……」

 ザフィーアの言葉に、門番はそう答える。

 そして、

「一度、ディア様に確認して参りますので、ここでお待ちいただけますか」

 というと、門番は屋敷の中へと入っていったのであった。


 ――――しばらくの後

「お待たせして申し訳ありません」

 屋敷より戻ってきた門番が、一同の前にやってきて、そう言葉にする。

 そして、

「ディア様のお時間がいただけましたので、どうぞ中へ」

 というと、一同を屋敷の中へと案内した。

 一同は、門番の後ろを着いていき、屋敷の中へと入っていったのであった。


 ――――ディナの屋敷・屋敷内

 門番に案内され、屋敷の中を進むアルディア達。

 屋敷の内部はカスティード宮殿と異なり、木造の廊下が続いており、廊下の天井には明かりとして魔石を用いたすりガラスのランプが吊されていた。

 少し前まで見慣れていたカスティード宮殿の内装とは大きく異なる屋敷の様子を、アルディアは物珍しい様子で見渡しながら、門番の後を着いていっていた。

 そして、屋敷の奥に進み、とある部屋の襖の前に着くと、門番は突然歩みを止めた。

「こちらです」

 門番は一同の方を見ると、襖に手を向けた。

「ありがとうございます」

 ザフィーアはディアの部屋まで案内をしてくれた門番に、そうお礼を言う。

「とんでもございません。では、失礼します」

 門番はそう言うと、一礼をすると、今まで歩いてきた道を戻っていった。

「では、行こうか」

 門番が自分たちの前から去ると、ザフィーアはそう言い、襖を開いた。

 そして一同は、部屋の中へと進んでいった。


 ――――ディナの屋敷・ディアの部屋

 襖を開け、部屋の中に入る一同。

 部屋に入ると沢山の書籍が積まれた机と、その机に向かって書類に目を通している黒茶色の髪の男性の姿があった。

「ディア殿、ご無沙汰しております」

 部屋に入ったザフィーアが、机に向かって書類に目を通している男性に声をかける。

 ディアと呼ばれた男性は、自身にかけられた声に気がつくと、顔をあげアルディア達の方を見た。

 そして、

「おお、ザフィーア殿。よくいらした」

 と、声をかけたのであった。

 ザフィーアに声をかけると、ディアと呼ばれた男性は立ち上がるとザフィーアの方へ近寄る。

 そして、

「いやいや、北の大陸で四柱帝ガブリエルを破ったとの噂、ここにも耳に入っていますぞ。ガブリエルを破った一行に冬雪を持った魔剣士も居たとの事。間違いなくザフィーア殿であろう」

 というと、笑顔でザフィーアの手を握った。

 ザフィーアは

「まぁ、確かにその一行の魔剣士とは私の事ですが……。ガブリエルを破ったのはここにいる『アルディア』です」

 そういうと、アルディアの方へ視線を向けた。

 ザフィーアが視線を向けると、ディアと呼ばれた男性もアルディアの方へ視線を向けた。

 ディアと呼ばれた男性と目が合ったアルディアは、小さく一礼をする。

 アルディアが一礼をすると、ディアと呼ばれた男性は握っていたザフィーアの手を離すと、アルディアに近寄る。そして、

「なんと、こちらのお嬢さんがあの四柱帝を!?」

 と、黒い瞳を大きく開き、驚いた様子を見せた。

「はい……。私もあんまり記憶にないのですが、私が倒したみたいです」

 アルディアは、あまりはっきりしない様子でディアと呼ばれた男性にそう答えた。

「そうですか。いやはや何とも、凄いことだ!」

 アルディアの言葉を聞いたディアと呼ばれた男性は、関心した様子でそう言った。

 そして、

「ああ、そうだ、失礼した。自己紹介がまだでしたな。既に聞いているかもしれないが、私の名はディア。このディナの都の政治を執っている者だ」

 と、自己紹介をした。

 ディアが自己紹介をすると、アルディアたちも、

「アルディア、です」

「エスメラルダです」

「ルービィだよ!」

 と、各々自己紹介を行った。

「いやはやご丁寧にどうも」

 一同の自己紹介を受けると、ディアはそうお礼を言った。

 そして、

「さて、本来であれば北の大陸での四柱帝との戦いのお話を是非聞きたいところではあるが……。今日は要件があってわざわざディナまで、そして私のところまで来たのであろう?」

 とアルディア達に尋ねた。

「はい。本日ディア殿を尋ねた理由は、実は我が義父、タンザの行方を尋ねてです」

 ザフィーアは、ディアにディナの都に訪れた理由を答えた。

「タンザ殿の行方……。……ルベンで何かあったのですか?」

 ザフィーアの言葉に、ルベンで何かあった事を察したディアは、ザフィーアに尋ねた。

 ディアに事情を聞かれたザフィーアは、北の大陸から戻ってからの経緯を全てディアに説明をした。

 ザフィーアの説明を聞いたディアは、

「成る程……」

 と言うと腕を組み、ゆっくりと溜め息をついた。

 そして目を閉じ、上を向き、しばらく考え込むと、

「……先ず、タンザ殿の行方についてだが申し訳ない。私のところにも何の情報も入っていないのだ」

 とザフィーアに答えた。

「そう……ですか」

 ディアからの回答を聞いたザフィーアは、残念そうにそう言った。

「そしてそのタンザ殿を連れ去ったというハインという魔族についてだが、ここディナで目撃したという話は私の耳には入っていない」

「そちらもですか……」

「申し訳ない。だが、レビ平原にて、そのハインという魔族の特徴を持った者が出没しているという噂は聞いたことがある。もしかしたら、近くには現れているのかもしれない」

「そうですか……」

 ディアの言葉にそう答えるザフィーア。

「折角尋ねてもらったのに、力になれず申し訳ない」

 ディアはそういうと頭を下げる。

「とんでもない。頭を上げてください、ディア殿」

 頭を下げたディアに、そう言うザフィーア。

 そして、

「私の方も改めて情報を集めてみようと思います。ディア殿、本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございました」

 とお礼を言うと、頭を下げた。

「とんでもない。また何かあったら是非尋ねてください」

 頭を下げるザフィーアに、ディアはそう答えた。

「お心遣いありがとうございます。では、本日はこれで失礼します」

 ザフィーアはそう言うと、一同はディアの部屋を後にしたのであった。


 ――――ディナの都・町中

 屋敷を後にした一同は、ディナの都の町中をあてもなく歩いていた。

「完全に手詰まりだね……」

 エスメラルダは苦笑いしながらそう言う。

「さて、どうしたものかな……」

 ザフィーアは町中を歩きながら、そう言った。

 今後どうするか。そんな事を考えながら町中を歩いていると、

「退けぇ! 愚民ども!」

 突然、前方の方角より大きな声が聞こえてきた。

「何だ?」

 大声を聞いたザフィーアは歩みを止め、そう言う。

「トラブル?」

 大声を聞いたルービィは、少し首を傾げながらそう言う。

「にしては穏やかじゃない様子だけど……」

 ルービィの言葉に、エスメラルダは少し疑問を抱き、そう言う。

「とりあえず、行ってみた方がいいんじゃないかな?」

 アルディアは一同にそう尋ねる。

 アルディアがそう言うと、ザフィーア、ルービィ、エスメラルダは首を縦に振った。

 そして、駆け足で声のする方へと走っていった。


 声のした方角の方へ駆け寄ると、そこには既に大勢の人が集まっていた。

 人々は同じ方に視線を向けていたが、後から来たアルディア達はその視線の先の様子が見えなかった。そのため、一同は人混みをかき分けながら前へと進んでいった。

 人混みをかき分けながら進んでいくと、そこには倒れている女性と、その女性の方を死んだような目で見ている多数の人族と魔族、そしてその先頭には、黒馬に乗った黒衣の魔族の姿があったのであった。

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