第35話
マリンより、四柱帝ラファエルの配下を名乗るハインという魔族が、東の大陸内で暴れているという話を聞いたアルディア達。
また、そのハインによってマリンの父であるルベンの町長が連れ去られてしまった事も発覚した。
アルディア達は連れ去られたルベンの町長を探すため、ディナの都を目指すこととした。
そして、旅立つ前に英気を養うため、その日はザフィーアの家で一泊したのであった……。
――――翌朝
この日、マリンは朝から上機嫌であった。
鼻歌交じりに台所へ入ると、朝食を作り、一同に振る舞う。
流石に朝であるため、機嫌に身を任せて作りすぎるなどというような事はなく、朝食としての適正な量、内容であったが、一同に振る舞う際も常に笑顔であった。
ザフィーアを除き、何があったのか不思議に思う一同であったが、とりあえず出された朝食に手をつけ、旅立ちの身支度を整えた。
なお、その際もザフィーアについては、少し疲れた様子であった。だが、そちらについては特に疑問を抱く者はいなかった。
そして、身支度を終えた一同は、ディナの都へ向かうため、旅立とうとしていた。
――――ザフィーアの家・玄関
「では、行ってくる」
ザフィーアは変わらず、少し疲れた様子で、見送るマリンにそう声をかける。
「昨日はありがとうございました」
「ごちそうさまです!」
「いってきます」
エスメラルダ、ルービィ、アルディアもそれぞれマリンに声をかける。
「いってらっしゃい! 親父の事、よろしくね!」
マリンは満面の笑みで大きく手を振り、一同を見送る。
一同はマリンに見送られながら、ザフィーアの家を後にしたのであった。
――――港町ルベン
「マリンさん、今朝からご機嫌だったね」
ディナの都へ向かうためルベンの町中を歩いていると、突然アルディアがそう言う。
「そーだね。朝から鼻歌歌ってたし」
アルディアの言葉に同調するかのように、ルービィもそう言う。
「何かいいことでもあったのかな?」
「久しぶりにザフィが帰ってきたから嬉しかったんじゃない?」
アルディアとルービィはそんな会話をしながら、ルベンの町を歩いていた。
一方、
「ザフィ、何か今朝から疲れてない?」
ザフィーアの家を出るときも疲れた様子だった為、流石に気がついたエスメラルダがザフィーアに声をかける。
「まぁ、な……」
ザフィーアは少し言葉を濁すようにそう答えた。
「ディナまではまだ距離はあるけど……道中町もあるし、無理せず休みながら進もう」
「ああ、すまないな」
疲労感のあるザフィーアを気遣ったエスメラルダに、ザフィーアはそう礼を言う。
そんな感じで会話をしながら、一同はルベンの町を後にしたのであった。
ルベンの町を後にした一同は、ディナの都を目指し、南へ歩き始めた。
ルベンからディナまでは距離こそあるものの、アシェルやゼブルンと違い町から町までの間に街道が出来ており、その道を進んでいくだけであった。
ディナまでの道のりはエスメラルダがザフィーアに言った通り、道中いくつかの町があり、寄った町で一同は休息を取りながら、ディナの都を目指し歩みを進めていった。
そして、ルベンを出て数日が経った日。ディナを目指し街道を進む一同は、広大な草原に辿り着いた。
――――レビ平原
「あれ? 道がなくなった」
ディナの都を街道を進んでいた一同。
だが、突然街道がなくなり、広大な草原が現れたことで、アルディアは思わず道がなくなったと言葉を漏らした。
「道がなくなったということは……ここは『レビ平原』かな?」
「レビ平原?」
エスメラスダが口に出した『レビ平原』という言葉に、反応するアルディア。
すると横からザフィーアが、
「レビ平原はディナの都の前に広がる草原だ。レビ平原に辿り着いたということは、ディナの都が近いということだ」
と、アルディアに言った。
「ここからは東に向かえば、ディナの都に辿り着くかな」
エスメラルダは地図を見ながら、そう言う。
「そうだな」
エスメラルダの言葉に、そう答えるザフィーア。
「じゃ、日が暮れる前にディナに向かおう」
エスメラルダがそう言うと、一同は東の方角へ向かい、歩き出したのであった。
――――ディナの都
レビ平原より東の方角へ進むことしばらく。
一同の前に町の明かりのようなものが見えてきた。
その明かりを目指し、更に進むと、そこには沢山の建物と人が居る場所へと辿り着いたのであった。
「ここが、ディナの都……」
目の前に広がる光景を目にし、エスメラルダは思わず声を漏らす。
「なんか凄い人が多いね」
「うぇ~、目が回りそう……」
アルディア、ルービィも今まで見たことがない町の様子を目にして、思わず感想を漏らす。
「エスメもディナは初めて来るのか?」
先のエスメラルダが漏らした言葉を聞いていたザフィーアは、エスメラルダにそう尋ねる。
「うん。僕も行ったことがあるのは東の大陸の北部ばかりだったからね」
エスメラルダはザフィーアに対し、そう答えた。
「カスティードも大きかったけど、ここはカスティードとも全然違う感じだね」
「北の大陸と比べたら、そもそもの人魔数(※人口数のこと)が違うからな」
ザフィーアはアルディアにそう言うと、町の中へと一歩踏み入れる。
そして、
「今日はもう日も暮れ始めてきている。宿でも探して、探索は明日から行おう」
とアルディア達にに声をかけた。
「「「はーい!」」」
アルディア達はそう返事をすると、ザフィーアに続き、ディナの都に足を踏み入れたのであった。
――――ディナの都・宿屋
ディナの都の宿屋にチェックインした一同。
広めの部屋を一室取り、部屋に向かうと早速腰を下ろしくつろぎ始めた。
一同が部屋でくつろいでいると、宿屋の女将が部屋にやってきた。
女将は一同に茶を振る舞うと、
「本日はご宿泊いただきまして、ありがとうございます」
と、正座で頭を下げた。
そして頭をあげると、
「差し支えなければ、お客様は本日どちらからいらっしゃたのですか」
と、尋ねた。
「人を訪ね、ルベンから……」
ザフィーアは女将に対し、そう答える。
ザフィーアの言葉を聞いた女将は驚いた表情をすると、
「それはそれは遠くから……。長旅、ご苦労様でございます」
と返した。
女将の言葉に、ザフィーアはお茶を飲みながら、軽く頭を下げる。
そして、お茶を飲んでいたコップをテーブルに置くと、
「ところで女将、先も言った通り、実は人を探しているのだが、ディナの外から来た者の情報とか何か持っているだろうか?」
と女将に尋ねた。
「尋ね人ですか……。まぁ、仕事柄都外の方々とはお会いしますので、他の者よりかはわかるかと……」
女将はザフィーアに対し、そう答える。
「そうか。尋ね人っていうのは、ルベン町長の『タンザ』という者なのだが、こちらで見かけはしなかっただろうか?」
「タンザ様ですか……」
女将はそういうと少し考え込み、
「タンザ様であれば、私もお顔は存じておりますが、私の知る限りではお見かけはしておりませんねぇ」
と答えた。
「そうか……」
女将の回答を聞き、そう呟くザフィーア。
そして、テーブルに置いたコップに手を伸ばし、お茶を少し、口に入れた。
「……タンザ様についてでしたら、もしかしたら、屋敷にいらっしゃる『ディア』様であれば何かご存知かもしれませんねぇ」
「屋敷?」
女将の言葉を聞き、そう返すザフィーア。
「はい。ディナの一番奥に大きなお屋敷がありまして、そこでこのディナの政を取り仕切っているのですが、その政を取り纏めていらっしゃる方がディア様でございます」
「成る程」
「つまり一番エラい人ってことだね」
女将の言葉にそう返すザフィーアとアルディア。
アルディアの言葉に、
「そうでございます」
と返す女将。
「しかしさ、そんな偉い人、そんなに簡単に会えるものなの?」
今まで話を聞いていたエスメラルダが、女将にそう尋ねる。
「お約束はいたしかねますが……、ディア様は旅の方から外の情報を聞くのを好まれるため、可能性はあるかと思います」
エスメラルダの問いかけに、そう答える女将。
「とりあえず、会えるかどうかはわからないが、明日、そのディア様を一度尋ねてみた方が良さそうだな」
ザフィーアはお茶を飲みながら、そう言う。
「そーだね」
「OK!」
「ま、ダメ元でね」
ザフィーアの言葉に、アルディア、ルービィ、エスメラルダもそれぞれそう口にした。
「女将、色々と情報をいただきありがとうございます」
ザフィーアはそういうと軽く頭を下げる。
ザフィーアが頭を下げると、アルディア達もザフィーアに合わせて頭を下げた。
「とんでもございません。では、ごゆっくり」
女将はそう言うと、一礼し、部屋を後にしたのであった。




