表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
34/43

第33話

 北の大陸ホイップシティから船で東の大陸港町ルベンに到着したアルディア達。

 町の様子に違和感を覚えつつも、一同はザフィーアの家へと向かうのであった。


 ――――港町ルベン

 港からザフィーアの家に向かい、町中を歩くアルディア達。

 どことなく暗い様子の住民ではあったが、アルディア達の姿を見ると、明るい表情を浮かべる様子が見受けられた。

「我々が歓迎されていない……わけではなさそうだな」

 ザフィーアは町中を見渡しながら、そう言う。

「まぁ僕らはともかく、ザフィが歓迎されていないって事はないんじゃない?」

 エスメラルダはザフィーアの発言に対し、そう返した。

 するとその横で、

「エスメは歓迎されてないって……何やったんだろーね、アル」

「さぁ?」

 と、ルービィとアルディアがエスメラルダの発言内容について、話をしていた。

 そんな両者の話を耳にしたエスメラルダは、

「(いや、1年前、誰かさんたちのせいでこの町で食い逃げ事件起こしたんですけど!?)」

 と、心の中でツッコミを入れるのであった。

 そんなやりとりをしながら歩いていると、一同は目的地であるザフィーアの家の前へと辿り着いたのであった。


 ――――港町ルベン・ザフィーアの家

 ザフィーアの家に辿り着いた一同。

「ただいま」

 ザフィーアはそう言うと、引き戸を開き中へ入る。

「「「おじゃましまーす」」」

 ザフィーアに続き、アルディア、エスメラルダ、ルービィもそう言い、家の中へと入っていった。

 すると、

「はーい」

 と言いながら、マリンが小走りで奥から駆け寄ってくる。

 そして、アルディア達を見ると、

「あ……」

 と言い、立ち止まる。

「ただいま」

 立ち止まっているマリンに、改めて声をかけるザフィーア。

 するとマリンは、

「ザフィーア……あんた戻ってきたなら連絡の1つくらいよこしなさいよ!」

 と言うと、ザフィーアの頭を小突いた。

 頭を小突かれたザフィーアは、小突かれた部分を右手でさすりながら、

「いや、ホイップシティから船に乗るときに、『使いミニオン』を使ってこれから戻るって手紙を送っただろう」

 と、マリンに苦言を呈する。

 マリンは

「あぁ、そーいや届いてたわね」

 というと、ケラケラと笑い、ザフィーアの肩をパシパシと手で叩いた。

 そんなマリンの様子を見て、ザフィーアは眉間に皺を寄せながら右手の眉間に当て、溜め息をつくのであった。

 すると、

「ところでザフィさん、ミニオンって何?」

 と突然横からアルディアがザフィーアに尋ねる。

 溜め息をついていたザフィーアは、アルディアの問いかけに気づくと、アルディアの方を向き、

「あぁ、ミニオンってのは、魔法で創り出した生命体の事だ。クリーチャーと違って、生成時にプログラミングした要件を果たしたら消滅するのが大きな違いだな。だからその分、クリーチャーよりも創り出すのが簡単で、手紙のやり取りとかに使うのには便利なんだ」

 と、ミニオンの魔法についての説明をしたのであった。

 その説明を受けたアルディアは、

「へぇ~、クリーチャー以外にも、魔法でそーいう存在を創れるんですね」

 と、反応をした。

 すると今度はマリンが、

「さぁ、いつまでもこんな所で話してないで、奥に上がりなさいよ」

 と、話を切り上げ、家の中にあがるよう促した。

 一同は、マリンの言葉に従い、家の奥へと入っていったのであった。


 ――――港町ルベン・ザフィーアの家・客間

 マリンの誘導に着いていき、ザフィーア宅の奥へとあがったアルディア達。

 奥へ上がるとマリンに座るよう促され、アルディア達はマリンに言われるがまま、床に座った。

 床に座って待っていると、

「おまたせー!」

 と言いながら、マリンはお茶の入った湯飲みを人数分持ってきた。

 アルディア達はマリンからお茶を受け取ると、

「ありがとう」

 とお礼を言った。

 そして、マリンから差し出されたお茶を少しずつ、口へと運んだ。

 そんな様子を見ながらマリンは、

「さて、まずは……」

 とアルディアの方へ視線を向ける。

 そして、

「アルディアちゃん、あんた大きくなったわね。1年前と比べて大人っぽくなったんじゃない?」

 と、アルディアに話しかけた。

 マリンの言葉にアルディアは

「え、そ、そうですか?」

 と、照れながらそう答えた。

 マリンは、

「本当よ。なんか本当に立派になったわね」

 と、優しく微笑みながら、アルディアにそう言った。

「あ、ありがとう、ございます」

 マリンの言葉にアルディアは更に照れながら、そうお礼を言ったのであった。

「もう、お礼なんていいわよ!」

 マリンはいつものようにケラケラと笑い、アルディアにそう言った。

 そして今度は、エスメラルダとルービィの方を見ると、

「ところであんたたち。うちのザフィーア、北の大陸で浮気とかしてなかった?」

 と尋ねた。

 マリンの突然の発言に、突然お茶を吹き出すザフィーア。

 そして、

「ゲホッ! ゲホッ!」

 と咳き込みながら、

「あのな、私たちは四柱帝を倒しに行っていたんだぞ? そうでなくても、私が浮気なんかするわけないだろう……」

 とマリンに言った。

 ザフィーアの言葉にマリンは、

「本当でしょうね?」

 と、疑うような目でザフィーアを睨みつけた。

 そして、アルディア達の方を見ると、

「あんたたち、本当? 北の大陸に美女いなかった?」

 と、アルディア達に尋ねた。

 アルディアは、

「美女って綺麗な女性の事ですよね? エクレール様は綺麗でしたよ」

 とマリンに答えた。

 それを聞いたエスメラルダは、

「(バカッ! そういう意味じゃあ……)」

 と心の中で呟きながらも右手で顔を押さえるものの、時すでに遅し。アルディアの言葉を聞いたマリンは、

「へぇ~、エクレール様、ねぇ……」

 と言うと、ゆっくりとザフィーアの方に視線を向けるのであった。

 ザフィーアは、

「いや、エクレール様ってカスティード国の女王様だぞ? 手を出そうものなか極刑ものに決まっているだろ!?」

 とマリンに答える。

 しかしながら、マリンは何も言わず、ただひたすら疑うかのようにじとーっとザフィーアの方を見つめ続けていた。

 そして、しばらくの間ザフィーアに疑いの目を向けた後、

「まぁ、こいつ(ザフィーア)の件については追々本人に問いただすわ」

 と言い、ザフィーアの浮気疑惑についての話を切り上げたのであった。

 ザフィーアは溜め息をつきながら、

「アル……」

 と、ぼそりとアルディアに呟く。

 一方、状況が理解出来ていないアルディアは、

「あれ? 私何か悪いことでも言った?」

 と、首を傾げるのであった。


「ところで、話は変わるのですが、何だか町の様子が1年前と比べると、変わったような気がするのですが……」

 ザフィーア浮気疑惑の話題を変えるために、別の話題をマリンに振るエスメラルダ。

 マリンは、

「あー、町の様子ね。うん、あんたたちが旅立ってから色々あってね」

 と、エスメラルダに答えると、お茶をすすった。

「色々、ですか……」

 エスメラルダはマリンに尋ねる。

「そ、色々。あんたたちが北の大陸に旅立って少ししてからかしら? 『ハイン』と名乗る魔族が東の他陸の各町で軍を率いて暴れ出してね」

「魔族が、ですか」

「そ、魔族。ただでさえこんな時代なのに、迷惑な話なんだけどね」

「考え辛いが、『魔王』の僕とかか?」

 マリンとエスメラルダの会話に、割って入るかのように問いかけるザフィーア。

 マリンは、

「全然。魔王とは関係なさそうよ」

 と、ザフィーアの問いかけに対し、きっぱりと否定をした。

「はっきりと否定しましたね」

「確かに現魔王が穏健派であることを考えると考え辛いのは事実だが、そこまではっきりと否定できる根拠でもあるのか?」

 ハインという魔族と魔王との関係を否定したマリンに対し、エスメラルダとザフィーアはそれぞれ、マリンにそう言う。

 マリンは、

「根拠も何も、ハインとかいう魔族、自分でラファエルの配下だって名乗ってるもの」

 と、答えた。

 そのマリンの言葉に、一同は耳を疑った。

「ラファエルの……配下?」

「そ。まぁ自分でそう名乗ってるだけだけどね」

 エスメラルダの言葉にそう返すマリン。

「地上の者が、四柱帝の配下になっているのか」

「そうみたいね。何でかはわからないけどね」

 マリンは、今度はザフィーアの言葉にそう返した。

 そして続けて、アルディア達が旅立ってからの東の大陸の事について、説明を続けた。

「で、そのハインが各町に現れては四柱帝、っていうかラファエルに刃向かおうとしている者たちを次々と誘拐、処刑していてね。色んな町でも被害が出ているのよ」

「うわぁ……」

「ひどい話だな」

「許せないね!」

「……」

 マリンの話に、エスメラルダ、ザフィーア、ルービィはそれぞれ思いを口々にした。

 一方、アルディアはというと、表情を曇らせながらも何も言わず、ただ静かにマリンの話を聞いていた。

「続けるわよ。で、あんた達が戻ってくるつい数日前、このルベンにもやって来てね。そこでうちの親父が連れて行かれたのよ」

「「「「……え?」」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ