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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
33/43

第32話

 ――――時は少し遡る

 海底城にて、四柱帝ガブリエルを倒したアルディア達。

 3年もの間、誰もが倒す事が叶わなかった四柱帝の一柱をアルディア達が倒したという出来事は、瞬く間に世界中へと広まっていった。

 そして、その情報は、聖都ニルヴァーナの教皇のところにも届いていた……。


 ――――聖都ニルヴァーナ・教皇の館・教皇の間

「失礼いたしますっ!」

 そう言いながらドタドタドタ、と慌ただしく教皇の間へと入室する一人の兵士。

 入室した兵士は、教皇の間へと入室すると部屋の奥にある玉座の前まで歩み寄ると、そのまま跪いた。

「なんじゃ、騒々しい」

 自身の目の前で跪いた兵士にそう言ったのは、玉座の上で胡座をかいていた、一人の小柄な少女であった。

「大変申し訳ございません、『ルクレツィア教皇聖下』」

 兵士は跪いたまま、玉座の上で胡座をかく少女へとそう言う。

 兵士の前の、玉座の上で胡座をかいている少女こそが、3年前に四柱帝を召喚した張本人『ルクレツィア・クラウディウス』教皇であった。

 見た目こそ幼さの残る少女ではあるものの、綺麗に手入れされている金色の髪、その髪を時間のかかりそうな縦ロールに巻いており、また、出しているおでこ含め傷や荒れのない綺麗な肌をしており、彼女がいかに日々裕福な生活をしているかが覗えた。

 また、身に纏う紫色のドレスも、絢爛豪華な装飾が施されており、彼女の持つ紫色の羽扇子もドレス同様絢爛豪華な装飾が施されており、まさに贅の限りを尽くしたものである事が覗えた。

「して、何用じゃ?」

 ルクレツィアは虎のような金色の目で、兵士を睨みつける。

 兵士を睨みつけるその目は、少女らしい大きな一重の瞳ではあるものの、彼女の持つ威圧感が、兵士に大きなプレッシャーを与えていた。

「申し訳ございません。実は、四柱帝の一柱、ガブリエル殿が敗れました!」

 兵士は震えながら、ルクレツィアにそのように報告をした。

 兵士の報告を聞き、動揺のあまり騒ぎ始める室内。しかしながら、ルクレツィアは特に驚いた様子もなく、ただ、胡座をかいた状態で兵士を引き続き睨みつけていた。

「……それだけか?」

「は?」

「それだけか? と聞いているのじゃ!」

 突然語気を強めるルクレツィアに、驚く兵士。

「も、申し訳ございません。以上の通りです」

 兵士は更に怯えた様子で、ルクレツィアにそのように報告をした。

「ふん、下らぬ。もう良い、下がれ」

 ルクレツィアはそういうと、手に持った羽扇子を畳み、出て行けと言わんばかりに兵士に向かって畳んだ羽扇子を振った。

「も、申し訳ございません。失礼いたします」

 兵士はそう言うと立ち上がり、足早に教皇の間を後にしたのであった。


「よろしいのですか? ルクレツィア教皇聖下」

 兵士が教皇の間を後にして少しした後、側近と思われる老齢の紳士がルクレツィアにそう尋ねる。

「ガブリエルと言えば北の大陸のエリアじゃな? 大方カスティードのあばずれがつまらぬ事でもしたのじゃろう」

「エクレール殿ですかな。確かに、3年前より四柱帝討伐の活動を行っておりましたな」

「雪女め。じゃが、まだ三柱残っておる。一柱落ちたところで、どうという事はないわ」

「左様でございますか」

 ルクレツィアがそういうと、老齢の紳士はそう返した。

「ふん。さて、他の四柱帝はどう暴れてくれるかの」

 ルクレツィアはそう言うと、胡座のまま、大きく玉座の背もたれにもたれかかったのであった。


 ――――時は戻り、現在

 東の大陸に向かうため、北の大陸ホイップシティから船に乗るアルディア達。

 元々内海側は穏やかではあったが、ガブリエルを倒した事で海自体の平穏が戻った事もあり、1年間、ルベンから旅立った時よりも穏やかな船旅であった。

 アルディアも、そんな穏やかな船旅を満喫していたのであった。

「ん~、いい気持ちー」

 船の甲板の上で、海風にあたりながらそう言うアルディア。

 すると、

「アル、何やってんの」

 と、エスメラルダがやって来て、アルディアに声をかけた。

「エスメ君。ちょっと風にあたってたんだ」

 アルディアはエスメラルダにそう答える。

「そっか。アルのお陰で、海も穏やかになったもんね」

「そんなことないよー」

 アルディアは少し照れながら、そう答える。

「謙遜しなくていいよ。この穏やかな海は、アルがガブリエルを倒したお陰なんだから」

「はは、ありがとう」

 エスメラルダの言葉に、アルディアは軽く笑いながらそう答えた。

「……ところでアル、そーいえば服、少し変わった?」

「え、服?」

 エスメラルダの突然の問いかけに、思わずそう返すアルディア。

「うん、急に話変えてごめんだけど……」

「あ、いいよ。うん、服ね。前の服がさ、ガブリエルの攻撃で破れちゃったみたいでさ。同じ形で、サイズも調整してくれたのをエクレール様が用意してくれたんだ」

「成る程、エクレール様が……。だからかな? なんか同じ見た目してるけど、ちょっと高級な感じがしたから……」

「やっぱりいい物なのかな? 着心地とか前の服より全然良いんだよね……」

 アルディアはそう言うと、少し苦笑いをした。

「そりゃエクレール様の用意したものだしね。品質は一級品なんじゃない?」

「だよねー。折角エクレール様が用意してくれた物だし、大切にしないとね」

「そうだね」

 アルディアとエスメラルダは、そんな他愛もない会話をしながら、東の大陸に向かう船旅の時間を過ごしていた。

 そして、そんな感じでアルディア達は船上での時間を過ごしていき、港町ルベンに到着したのであった。


 ――――港町ルベン

 船旅を終え、港町ルベンに着いた一同。

 だが、1年ぶりに訪れたルベンの様子は、どことなく活気がなく、暗い様子であった。

「何かあったのか?」

 元々ルベンの町議でもあったザフィーアは、町の様子を見て、そう言葉を漏らす。

「旅立った時は、もう少し活気があったと思ったんだけどね」

 エスメラルダも現在のルベンの様子に違和感を覚えたのか、町の様子を見ながらそう言った。

「とりあえず私は一度、情報収集も兼ねて家に戻ろうと思うが、君たちはどうする?」

 ザフィーアはアルディア達に尋ねる。

「あたしは行くところないから、着いていってもいい?」

「僕も特に行く場所はないから同行させてもらえればとは思うけど……」

 ルービィ、エスメラルダはそれぞれ、ザフィーアに同行する旨、回答をする。

「アル、君はどうする? 一度アシェルに顔でも出すか?」

「う~ん……」

 ザフィーアの言葉に少し考え込むアルディア。

 しかし、少し考えた後、

「とりあえずまだ、皆の仇のラファエルを倒したわけじゃないし……。アシェルには、全部の戦いが終わってから行きたいかな?」

 とザフィーアに答えた。

「そうか」

 ザフィーアはそういうと、正面を向き、

「では、我が家へ向かおうか」

 ザフィーアがそう言うと、一同はザフィーアの家へと向かうのであった。

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