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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter1 北の大陸
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第29話

ガブリエルとの戦いに勝利し、カスティードに戻ったアルディア達。

ガブリエルとの戦いのダメージで、アルディアは数日間眠っていたが、その後無事目を覚ました。

四柱帝の一柱であるガブリエルを倒したアルディア達は、情報収集等も兼ねて、一月の間、カスティードに留まることとした。

そして、アルディアが目を覚ましてから数日が経過したある日……。


―――カスティード宮殿・図書室

カスティードの図書室にて、シュトレンが書籍を読みあさって調べ物をしていたところ、

「失礼しま~す……」

という挨拶と共に、アルディアが図書室に入ってきた。

「おや、アルディア殿」

図書室に入ってきたアルディアに気がついたシュトレンは、アルディアに声をかける。

「あ、先生!」

自身に気づいたシュトレンに、手を振りながら反応するアルディア。

そしてそのまま、シュトレンの下へと歩み寄った。

「アルディア殿、身体は大丈夫ですか?」

自身の下に寄ってきたアルディアに、そう声をかけるシュトレン。

「はい、もう元気いっぱいです!」

アルディアは元気よく、そう答えた。

「それは結構。ガブリエルとの戦いの事、伺いましたよ。先ずは、よくご無事で」

シュトレンは笑みを浮かべながら、アルディアに話しかける。

「ありがとうございます!」

アルディアは元気よく礼を言い、頭を下げる。

そして、頭を上げると、

「実は、そのガブリエルとの戦いの事で、色々と相談したいことがあったんです……」

と、シュトレンに相談を持ちかけた。

「相談事、ですか」

シュトレンはそう言うと、読んでいる本を閉じた。

「はい。実は……」

アルディアはそう言い始めると、ガブリエル戦はオーバードライブ頼みだった事、そのオーバードライブも1回では倒しきれず、発動後も反動でしばらく動けなかった事、今後他の四柱帝と戦う上でもオーバードライブについては必要になるであろう点から今以上に練度を高めた方が良いと思っている事など、主にオーバードライブ絡みの事について相談をした。

アルディアの話を一通り聞き終えたシュトレンは、

「成る程」

と呟く。

そして、

「さて、先ず今回のガブリエル戦ですが、今一度1点、思い出してもらいたい事があります」

と話し出した。

「思い出してほしいこと?」

アルディアはシュトレンに尋ねる。

「はい。他の四柱帝と戦う上でもかなり重要になるお話です」

シュトレンはアルディアの問いかけにそう返す。

「今回のガブリエル戦。大前提として貴女方はサファイアドラゴン殿による加護で、ガブリエルの攻撃に対し、強大な防御を持っていた。厳しい事を申し上げるようですが、この点を忘れないでいただきたいですね」

「あ……」

シュトレンの指摘に、思わず声を漏らすアルディア。

「戦いのお話を聞いた限り、サファイアドラゴン殿の加護による恩恵はかなり大きいかと思われます。しかしながら、貴女方はあれだけのダメージを負っていた。もし加護がなかったら……」

「そう、ですね……」

「貴女の今回のオーバードライブ作戦も、この加護による防御恩恵の大きさにもよるところかと。故に加護が期待できない他の四柱帝との戦いでは今回の戦い方は危険すぎる。そういう点では、貴女のオーバードライブに関する課題は尤もですね」

シュトレンはそう言うと、メガネをクイッと上げた。

「そうですよね」

「ですが、先ずは現状のオーバードライブの状態を見てみないと解決策も出せませんね。申し訳ありませんが、今ここでオーバードライブを発動してもらっても良いですか?」

「今ここで、ですか?」

アルディアはシュトレンに尋ねる。

「はい、ここで」

シュトレンはアルディアにそう返す。

「わかりました……」

アルディアはそう言うと、目を閉じ、魔力を溜め始めた。

そして、暫くその状態のまま待機した後、目を開き、オーバードライブを発動。アルディアは白いオーラを滾らせた。

その状態のアルディアを見たシュトレンは、

「成る程」

と一言、呟く。

「で、次はどうすればいいですか?」

アルディアはオーバードライブを発動させたまま、シュトレンに尋ねる。

「今ので大体はわかりました。もう解除してもらっても構いませんよ」

「解除!?」

解除しても良いというシュトレンの言葉に、少し裏返った声でそう返すアルディア。

「もしかして、解除の方法がわからない?」

アルディアの反応に、シュトレンはそう尋ねる。

「はい。海底城での戦いはいつもオーバードライブが持たずに解除されちゃっていたので……」

シュトレンの問いかけに、アルディアはそう返す。

「成る程。では仕方ありませんね。効果が切れるまで待ちましょう」

シュトレンはそう言うと、アルディアのオーバードライブが切れるまで暫く待機をした。

そして、暫くの後、アルディアの身体から滾っていた白いオーラが消滅。アルディアのオーバードライブの効果が切れたのであった。

オーバードライブの効果が切れたアルディアは、オーバードライブの反動でその場で膝から崩れ落ちる。

そんなアルディアの様子を見て、シュトレンはアルディアに近寄り、話を始めた。

「貴女のオーバードライブ、既に指摘をされているかもしれませんが身体の中に抑えきれない魔力がオーラとなって放出されてしまっていますね。故に溜めた魔力全てを強化に充てられていない。かなり溜めて発動させていますが、実際の強化としては2倍くらい、でしょうか」

「2倍……」

「まぁしかしながら、通常状態からの2倍であれば十分強化できていると思いますがね。ただ、溜め時間の長さ、発動時間の短さ、発動後の反動、これらを考えると、そのオーラとして滾ってしまっている分の魔力を抑える術は身につけるべきですね」

「魔力のコントロール、ってことですか?」

アルディアはシュトレンに尋ねる。

「そうですね。特にオーバードライブに特化した、ですが」

「オーバードライブ特化の魔力コントロール……」

「そういう意味では、オーバードライブ状態を自力で解除できる術も身につけるべきでしょうが……」

シュトレンはそう言うと、一息つき、考え込む。

そして、少しの間、考え込んだ後、

「私に一つ、いい修行方法があります。試しますか?」

とアルディアに尋ねた。

「修行……ですか」

「はい。とはいえ実戦とかではありませんが……どうしますか?」

「……」

アルディアは首を傾げながらも、オーバードライブコントロールの修行とのことで、シュトレンの提案を受けることとしたのであった。


―――カスティード宮殿・通路

「ではガトー殿、後はよろしくお願いしますよ」

シュトレンはガトーにそう言うと、その場を後にする。

去りゆくシュトレンに、ガトーは何も言わずボウアンドスクレープをする。

「あの~……これは?」

アルディアは自身の着ている服の両袖をつかみながら、ガトーに尋ねる。

シュトレンが提案した修行を行うことを受け入れたアルディアだが、その後直ぐに着替えさせられた服は、カスティードで働くメイドの服。

そんなメイド服を着た状態で、シュトレンからは何も言われず、現在この場に居たのであった。

「シュトレン殿から伺っております。オーバードライブの修行をされるとか……」

「あ、はい。そうなんですけど……」

ガトーの言葉に、何か言いたそうにそう返すアルディア。

「シュトレン殿からは、オーバードライブ状態で日常生活における活動をすることで、コントロールを身につけるのが一番だと伺いました。故に、アルディア殿には今からオーバードライブを発動していただき、オーバードライブ状態で簡単なお仕事をしてもらおうかと……」

「オーバードライブ状態で!? しかも私、ここの宮殿でのお仕事なんてやったこと……」

「その点は大丈夫ですよ。ちゃんと指導者もつけますから」

ガトーはそういうと、一人のメイドを呼ぶ。

ガトーに呼ばれてやって来たメイドは、アルディアと同年代くらいの少女であった。

「こちらのメイド『マリー』の指導に従ってください」

「はじめまして、マリーです」

栗色のおかっぱ頭のメイド『マリー』はそういうと、頭を下げる。

「アルディアです。よろしくお願いします」

アルディアはそう言うと、頭を下げた。

「では早速、オーバードライブを発動させてください」

両者の挨拶が終わると、ガトーはアルディアにオーバードライブの発動を促す。

「え? もうこの場で?」

「勿論。貴女のは修行ですから」

「わかりました」

アルディアはそう言うと、目を瞑り魔力を溜め始めた。

そして、暫く溜め終わると、目を開き、オーバードライブを発動。アルディアの身体から白いオーラが迸った。

「ちょ……、何コレ……?」

初めて見るオーバードライブに、思わず言葉を漏らすマリー。

一方、ガトーはというと、

「では、その状態でお仕事の方、お願いします。マリー、よろしくお願いしますよ」

そういうと、アルディアに仕事をはじめるよう、促した。

「何よもう……」

状況把握が出来ないマリーはボソリとそう呟く。

しかしながら、ガトーに仕事を教えるよう言われた以上、やらないわけにもいかない為、

「じゃあ、早速これで掃いてくれる?」

と箒を手渡した。

「わかりました」

アルディアはマリーから箒を受け取ると、早速箒で通路を一掃きする。

すると、アルディアが箒で掃いた勢いで、突風が発生。アルディアの掃いた先に丁度いたマリーは、その突風の勢いで

「キャアアァァァァァ!!」

と叫びながら吹き飛び、壁に頭を打ち付けたのであった。

「だ、大丈夫ですか!?」

アルディアは慌ててマリーの方へ駆け寄る。

「あ、アンタねぇ……」

マリーは打ち付けた頭を擦りながらそう言い、立ち上がる。

そして、

「掃除しろって言ってるのに……逆に散らかしてるじゃない」

とアルディアが掃いた場所を指差し、そう苦言を言った。

「ごめんなさい……」

アルディアは申し訳なさそうにマリーに謝る。

「ホントこれ、今日私の仕事終わらないんじゃ……」

前途多難な状況に、マリーは思わずそう言葉を漏らしたのであった。


「あぁ、マリー。ちなみに今回については仕事が終わらなくてもフォローは入ってもらえるよう、メイド長に依頼済みですよ」

「本当ですか!? ガトー様」

「本当です。あぁ、あとアルディア殿。オーバードライブが切れたら次のオーバードライブが発動するまで作業禁止ですよ。あくまでオーバードライブの修行ですので」

「え゛!? わかりました……」

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