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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter1 北の大陸
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第27話

 エスメラルダに向けられたガブリエルの攻撃から間一髪で救ったアルディア。

 体力と魔力が回復できたのか、アルディアはオーバードライブを象徴する白いオーラを身体から滾らせていた。

「アルディア……、回復したんだ」

 オーバードライブを発動させているアルディアに、そう言うエスメラルダ。

「うん。貰った回復薬のお陰、でね」

 アルディアは笑顔でそう答える。

「回復薬っていうか……、アレただの栄養剤的なものだったんだけど……」

 アルディアの返しに乾いた笑いを浮かべながら、エスメラルダはそう言った。

「それよりエスメラルダ君、早く避難を」

「うん、わかった」

 アルディアの言葉に、エスメラルダは返事をし、アルディアとガブリエルから距離を取った。

 エスメラルダが移動をすると、アルディアは改めてガブリエルの方に顔を向ける。

「貴様、復活したみたいだが、立っているのがやっとではないのか?」

 自身の前に立つアルディアに、そう話しかけるガブリエル。

 アルディアは何も言わず、ただ、ガブリエルを見つめる。

 そんなアルディアにガブリエルは続けて、

「貴様の身体から迸るオーラも先までと比べたら明らかに小さくなっているが……、制御できるようになったわけではあるまい? オーバードライブも無理矢理発動させているのだろう?」

 と、アルディアのオーバードライブの状態を見て、そう言った。

 するとアルディアは、

「でも、回復してないのはお互い様でしょう」

 と、ガブリエルに返した。

 そして続けて

「貴方くらいなら、私がダメージを与えた左手の負傷くらい、治せるでしょう? でも、それもできないくらい、魔力がなくなっているのでしょう?」

 と、ガブリエルに話しかけた。

 アルディアの言葉を聞くと、ガブリエルは笑い、

「ハハハ、お互い満身創痍、というわけか」

 と言う。

 アルディアも、

「そうみたいだね」

 と答える。

 そして続けて、

「だから私は、この一撃にすべてをかける」

 そう言うと、アルディアは銀のロッドを高く掲げた。

 そして掲げた銀のロッドの先端に、魔力を溜め始めた。

 その様子を見たガブリエルは、

「ハハハ、いいだろう! 相手してやろう!」

 そう言うと、右手の槍を構えた。

 銀のロッドの先端に魔力を溜めたアルディアは、ガブリエルに向かって飛び上がる。

 そして、魔力を溜めた銀のロッドを後ろに引き、攻撃の態勢に入った。

 そんなアルディアの様子を見て、ガブリエルも右手の槍を後ろに引き、攻撃の態勢に入る。

「ゆくぞ!」

「リヒト、ゾイレー!!」

 叫び声と共にアルディアはリヒトゾイレを、ガブリエルは槍から三叉の水の矢を放つ。

 アルディアの放ったリヒトゾイレは、ガブリエルの放った三叉の水の矢の真ん中と激突。そのまま矢を消滅させ、槍を持っているガブリエルの右手、そしてガブリエルの胸部を貫いた。

 一方、ガブリエルの放った三叉の水の矢のうち、左右の矢はアルディアの胸部を擦る。

 直撃こそ避けたものの、魔法の勢いで左右の胸部にかすり傷を負いながら、アルディアは吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられた。

 そして、地面に叩きつけられたと同時に、先のリヒトゾイレに全魔力をのせた事もあり、アルディアの身体から滾っていた白いオーラは消滅。オーバードライブの効果が切れたのであった。

「アルディア!」

 地面に叩きつけられたアルディアに声をかけ、駆け寄るエスメラルダ。

 だが、ガブリエルの攻撃によるダメージと、3度のオーバードライブによる反動もあり、意識を失ったアルディアは、エスメラルダの言葉に反応することはなかった。

 一方、ガブリエルはというと、アルディアのリヒトゾイレを受け、右手を失い、胸部に風穴を開けつつも身体を起こし、立ち上がろうとする。

 だが、

「!!」

 自身の胸部の穴から突然、泡が出始めた事に気づいたガブリエル。

 ガブリエルの胸部から出た泡は、どんどんと増えていき、胸部からだけではなく全身から泡が溢れていった。

 ガブリエルの身体から泡が出始めた様子を見たエスメラルダは、何か始まるのかとスタッフを構え、警戒をする。

 だが、

「くそっ! 体力を消耗しすぎたか……」

 自身の身体から泡が溢れ出る様子を見たガブリエルは、そう呟く。

 そして、エスメラルダの方を見ると、

「今回のところは俺の負けを認めよう。だが、次はこうはいかんぞ!」

 と話しかけた。

 そして、その言葉を残し、ガブリエルは泡となって消滅をしていったのであった。

「か……勝った……」

 消滅したガブリエルを見たエスメラルダは、その場で膝から崩れ落ち、言葉を漏らす。

 そしてそのまま、少しの間固まった後、懐から懐中時計を出して時間を確認すると、

「まだ時間はあるし……、少し回復するのを待とう……」

 エスメラルダはそう呟くと、スタッフを使い地面に紋様ルーンを描く。

 そして、描いた紋様ルーンから癒やしの魔法を発動させたのであった。


 エスメラルダが癒やしの魔法の紋様ルーンを発動させ、しばらくした後、ガブリエルの攻撃で気を失っていたルービィとザフィーアが目を覚ます。

 目を覚ましたルービィとザフィーアは辺りを見渡し、状況を確認する。

 そんな両者に、アルディアの手によってガブリエルを倒した旨をエスメラルダは説明をした。

「まさか……」

 夢物語のような事実に、思わずそう言葉を漏らすザフィーア。

「すごいよ! アルディア!」

 ルービィはそう言うと、気を失っているアルディアに抱きついた。

「何とも信じがたい話だが……、実際にガブリエルの姿がないのが何よりの証拠なのだろう」

 ザフィーアはそういうと、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、

「とりあえず、カスティードに戻ろう」

 と、ルービィとエスメラルダに話しかけた。

 ザフィーアの言葉に、エスメラルダは何も言わず首を縦に振り、ルービィは気を失っているアルディアを背負い、そのまま神龍の間を後にした。

 そして、海底城の来た道を戻り、カスティードへと向かったのであった。

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