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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter1 北の大陸
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第24話

 ガブリエルの発動させたタイダルウェーブによって起こされた津波に飲み込まれたアルディア達。

 アルディア達を飲み込んだ津波はそのまま勢いを弱めていき、ガブリエルが魔法で作り出した水はそのまま消えていった。

 タイダルウェーブの魔法を発動を終えたガブリエルは、泳ぎながらゆっくりと部屋上部より降りてきて、フゥーッと一息をつく。そして、タイダルウェーブの攻撃を受け、地面に倒れ込んでいるアルディア達を見て、

「流石に死んだか?」

 と言う。

 そして、

「だが、念のため、トドメはさしておこう」

 そう言うと泳いでアルディアの方に近づく。

 そして、槍を構え、アルディア目がけて突こうとした。

 すると、

「ッ!!」

 アルディアを突こうとした槍を持っている右手に攻撃を受けるガブリエル。

 攻撃を仕掛けた主の方を見ると、そこには膝立ちの状態で刀を持つザフィーアの姿があった。

 流石のザフィーアも先のタイダルウェーブの魔法の攻撃はかなり堪えたのであろう。息を切らしており、膝立ちの状態をしているのもやっとの様子であった。

 自身の手を斬りつけられたガブリエルは、ギロリとザフィーアを睨みつける。

「ふん! 起きているのがやっとのようだな」

 ガブリエルはザフィーアにそう言う。

 一方、ザフィーアはガブリエルの言葉には無視し、

「アルディア! エスメラルダ! ルービィ! 無事か?」

 と三者に問いかける。

「うん……」

「なんとか……」

「かなりキツいけどね……」

 アルディア、エスメラルダ、ルービィの三者はそれぞれ、何とか無事である旨をザフィーアに答える。

「無事ならなにより」

 三者の返答を聞き、そう言うザフィーア。

 そして続けて、

「アルディア、お前は自分の事を優先しろ。エスメラルダ、アルディアのサポートを引き続き頼む。そしてお前達が戻るまで、ルービィ、私と共に戦ってくれ」

 と話しかけた。

「わかった」

 アルディアは座ったまま、その場でこくりと首を縦に振る。

「了解!」

 エスメラルダはそういうと、フラフラの状態でアルディアの方へ近づき、引き続き回復を始めた。

「りょーかい」

 ルービィはそういうと、先のタイダルウェーブを受けたことによって出血したであろう顔面に流れる青い血を拭うと、ふらりと立ち上がり、ゆっくりとガブリエルの方へと近寄った。

「ほう。俺のタイダルウェーブを受け、まだ俺とやるつもりか?」

 自身に立ち向かってくるザフィーア、ルービィにそう言うガブリエル。

「当然! アンタを倒すためにここに来たんだからね」

 ルービィはそう答えると、両手に炎を纏わせ、拳を構える。

「それに、疲弊しているのはお互い様だろう?」

 ザフィーアもそう言うと、刀を構える。

「疲弊? 俺が?」

 ザフィーアの言葉に、少し苛ついた様子でそう言うガブリエル。

「先の私の攻撃、不意打ちだったとはいえ同属性のお前にダメージが通っただろう? 流石の四柱帝でもあれだけの魔法を使ったら魔力も落ちているのだろう?」

 ザフィーアは口元をニヤリとさせ、そう言う。

 ザフィーアがそう言うと、ガブリエルもニヤリと笑い、

「そうか。ならば試してみるといい!」

 そう言うと、槍を構えた。

 ガブリエルが槍を構えると、戦闘再開の合図と言わんばかりにルービィとザフィーアはガブリエルに向かって駆け寄る。

 自身に寄ってくるルービィとザフィーアを見ると、ガブリエルは槍先から三本の水の矢を放つ。

 ルービィとザフィーアはこの攻撃を回避。飛び上がって回避したルービィはそのまま空中から右手の拳を突き出し、炎の正拳『火炎拳』をガブリエルに向かって飛ばした。

 ルービィの放った火炎拳を左手の手のひらで受け止め、消滅させるガブリエル。

 火炎拳を消され、

「チッ!」

 と舌打ちをしながら地面に降りるルービィ。

 一方、ガブリエルは勝ち誇ったかのようにニヤリと笑った。

 すると今度は地上からザフィーアが、ガブリエルの首を目がけ、氷の斬撃を飛ばす。

 ガブリエルはこの斬撃を頭部を後ろに倒し回避。その後、今度は右手の槍でザフィーア目がけ突き出した。

 だが、この攻撃を今度はルービィが炎を纏った蹴り『火炎脚』でガブリエルの右手首を蹴り、槍の軌道を逸らすことで、ザフィーアへの攻撃を阻止した。

 攻撃を阻止されたガブリエルはギロリとルービィを睨みつける。

 火炎脚による攻撃を終え体勢を戻したルービィも、ガブリエルの方を見る。

 そして、ルービィによって槍攻撃を免れたザフィーアもまた、刀を構えなおし、ガブリエルの方を見るのであった。

「満身創痍の分際で……しぶといな」

 自身が思っていたよりも抵抗をするルービィとザフィーアに少し苛立ちを見せるガブリエル。

 すると、右手に持っていた槍を地面に突き刺し、

「では、これならどうだ」

 そう言うと両手の手のひらを前に出し、両手から水の環を作り出した。

 見覚えのある水の環を見たルービィとザフィーア。

(まさか、両手から?)

 タイダルウェーブ程ではないとはいえ、トリトン、ポセイドン戦から何度も受けている魔法『サイクロン』。それがまさか両手から2つ放てるものなのか、という疑問を抱きつつも、相手が相手なだけに最悪の事態を予想し、警戒をする。

 そして、残念ながら両者の想定した最悪のシナリオは、悪い意味で両者の予想通りのものであった。

 左右の手それぞれから作り出した水の環は、渦となってルービィとザフィーアに襲いかかる。

 その威力は、1つのサイクロンを放った時と変わらず、速度、規模も同じ程度のものが、2つも襲いかかってきた。

 襲いかかるサイクロンの魔法を回避するルービィとザフィーア。だが、ガブリエルは直ぐに次のサイクロンを放つ準備を始めた。そして、程なくして2発目のサイクロンをルービィ、ザフィーア目がけ両手から放つ。

 またしても自身目がけ飛んでくるサイクロンの魔法を、ルービィ、ザフィーアは回避。だが、またしても両手から水の環を作り出すガブリエルを見て、ルービィ、ザフィーアは共にジリ貧状態に陥っている事に焦りを感じ始めていた。

「くそっ!」

 焦りを見せたルービィは、何とか現状打破が出来ないかと試み、右手の拳に炎を纏わせ反撃をしようとする。

 だが、

「まて、ルービィ!」

 ザフィーアに呼び止められ、攻撃を中断する。

「何!?」

 ルービィはザフィーアに尋ねる。

「今、下手に攻撃なんてしようとしてサイクロンを受けてしまったらどうする!? 今は、回避に重点を置くんだ!」

「だけど……」

 ザフィーアの叱責に理解を示すものの、ジリ貧の状態に言葉を詰まらせるルービィ。

 そんなルービィにザフィーアは、

「流石のガブリエルも、そう何発もサイクロンクラスの魔法を連打できるとは考え辛いだろう。回避しつつ、向こうが疲弊するのを待つんだ」

 と、声をかけた。

 すると、

「残念だったな」

 横からガブリエルがルービィ、ザフィーアの両者に声をかける。と、同時に、サイクロンの魔法を両者に向けて放つ。

 両者はこの攻撃もかろうじて回避。その後、

「どういうことだ?」

 と、ザフィーアはガブリエルに尋ねる。

 するとガブリエルは、両手から水の環を作りながら、

「悪いがこの俺にとってサイクロンの魔法を連打することなど、造作もないこと。サイクロンで俺が疲弊することなど、あり得ない話だ」

 と、口元をニヤリとさせ、答えた。

「何だと……」

 ガブリエルの言葉を聞き、目を開き、驚きの様子を見せるザフィーア。

 サイクロンクラスの魔法を連打すれば、流石のガブリエルも疲弊する。そこを狙って反撃に出れば良いだろうと踏んでいたザフィーア。しかしながら、ガブリエルの言葉は、そんなザフィーアの希望を打ち砕くものであった。

 そして、ガブリエルのこの言葉に希望を打ち砕かれたのはザフィーアだけではなかった。

 ジリ貧状態脱却の希望を失ったルービィは、いよいよヤケクソになり、

「うわあぁぁぁ!!」

 と叫びながら、右手の拳に炎を纏いガブリエル目がけ飛びかかった。

「ルービィ!」

 自棄になり攻撃を仕掛けるルービィを止めるかのように叫ぶザフィーア。

 だが、飛びかかってしまった事で格好の的となってしまったルービィを見逃す筈もなく、ガブリエルは左手をルービィに向け、サイクロンの魔法を放った。

 飛んでしまった事で、いよいよ回避が出来なくなってしまったルービィ。そんなルービィに襲いかかるサイクロンの魔法。

 防御も間に合う状態でもなく、いよいよ直撃すると思ったその時であった。

 突如、ルービィの後方より光線が飛んできて、ルービィ目がけ放たれたサイクロンの魔法に激突。サイクロンの魔法を相殺させたのであった。

 光線が飛んできた方を見るザフィーアとガブリエル。ルービィも攻撃を中断し、自身を救った光線の主の方に顔を向けた。

 すると、光線が飛んできた方向には、白いオーラに身を纏い、銀のロッドを構えるアルディアの姿があったのであった。

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