第20話
オーバードライブの魔法で一時的に能力強化を行ったアルディア。
その効果で、トリトン、ポセイドンを圧倒し、いよいよトリトンの撃破に成功したのであった。
これにより、トリトン、ポセイドンによる連携魔法『サイクロン』の阻止にも成功。戦況は一気にアルディア達が優位な状況になった。
だが、トリトンの撃破と同時にアルディアのオーバードライブの魔法の効果も消滅。オーバードライブの反動か、アルディアは魔法が切れると同時に、その場で膝から崩れ落ちた。
「アルディア!」
膝から崩れ、倒れ込みそうになるアルディアのもとに駆け寄り、アルディアの身体を支えるルービィ。
アルディアは、完全にエネルギー切れと言わんばかりに、自身の身体を支えるルービィにもたれかかっていた。
「まさか……四柱帝の幹部を倒したなんて……」
エスメラルダは、上手くいかないと思っていたアルディアの策で、四柱帝ガブリエルの幹部であるトリトンの撃破という事実に、驚きを隠せない様子でそう言葉にする。
「だが、これでサイクロンの魔法は阻止できた。完全に風向きはこっちに流れているぞ」
ザフィーアはこれは好機と言わんばかりに、そう言う。
一方、残ったポセイドンはというと、
「おのれ……まさか……」
と、相方であるトリトンがやられた事に怒り震えていた。
そして、
「よくもやってくれたな!」
と、怒りに身を任せるかのように声を荒げ、牙に水を纏いアルディアに襲いかかった。
襲いかかってくるポセイドンに気づいたルービィは、迎撃のため行動をしようとする。しかしながら、怒りに身を任せ襲いかかってきているポセイドンの遊泳速度が想像以上に速く、自身の腕からアルディアを離すことすら間に合わない状態であった。
(やられる……)
心の中でそう呟くルービィ。
ポセイドンの牙がルービィと、そしてアルディアに襲いかかろうとした時であった。彼女たちの目の前に現れたザフィーアが、刀でポセイドンの噛みつき攻撃を抑えたのであった。
「ザフィーア!」
間一髪、助かったルービィは、思わずザフィーアの名を口にする。
「少しの間抑えられるだけだ。今のうちに離れろ」
ザフィーアはルービィに対しそう言う。
ルービィはこくりと頷くと、アルディアを抱え、その場を離れたのであった。
ルービィが離れた事を横目で確認するザフィーア。ザフィーアは一安心しつつもポセイドンの攻撃を抑えるのに必死だった。
すると、
「ザフィーア、援護するよ」
そう言いながら近づくエスメラルダ。
エスメラルダはポセイドンに向かい紋様を描き魔法を発動させる。
すると、ポセイドンの横腹部分に描かれた紋様が光り、それと同時にポセイドンに衝撃を与えた。
エスメラルダが描いた紋様は、刻印による衝撃を与えるものであったのだ。
側方から発動されたエスメラルダの魔法の衝撃で、怯むポセイドン。ザフィーアはその隙を見て、氷の魔法を纏った刀でポセイドンを斬りつける。
ザフィーアの斬撃を顔面で受けたポセイドンは、態勢を立て直すと、
「おのれ……」
とザフィーアを睨みつけた。
ザフィーアは刀を構え、応戦する態勢を取る。
ポセイドンも頭部に水の魔法を纏い、攻撃の態勢を取り、ザフィーアに襲いかかろうとした。
すると突然、ポセイドンの顔面下部に強い衝撃が走り、ポセイドンは上に吹き飛んだ。
ザフィーアはポセイドンが居た位置より少し視線を下にさげる。
すると、そこには右手の拳に炎を纏い大きく上に突き上げ、ポセイドンにジャンピングアッパーを仕掛けたルービィの姿があった。
「ルービィ!?」
アルディアを介抱するため後ろに下がったと思っていたルービィの姿がそこにあり、思わず名前を呼んでしまうザフィーア。
ルービィはポセイドンへのアッパー攻撃を終えると、ザフィーアの元にやってきて、
「お待たせ」
と言う。
「ルービィ、アルディアは?」
ザフィーアはルービィにアルディアの様子を尋ねる。
「アルディアはとりあえず壁にもたれかけさせて、安静にしてきた」
ルービィはザフィーアにそう答えた。
ザフィーアは、
「そうか。まぁ反動で倒れているだけだし、大丈夫だろう」
と言った。
「それよりもアレ、そろそろ倒さないと、ね」
ルービィはそういうと、ポセイドンの方へ顔を向ける。
「そうだな」
ザフィーアもそういうと、彼もまた、ポセイドンの方へ顔を向けた。
死角からのルービィの攻撃を受け、怯んでいたポセイドンは態勢を立て直すと、
「くっ……」
と苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。
態勢を立て直したポセイドンを見たザフィーア、ルービィはそれぞれ片手を前に出す。
そしてザフィーアは
「エスメラルダ、援護を頼む」
とエスメラルダに声をかける。
何か攻撃を仕掛けるつもりだと察したエスメラルダは、
「了解!」
と言うと、攻撃強化の紋様を描き、発動をさせた。
エスメラルダの魔法が発動したことを確認したザフィーア、ルービィは、それぞれ前に出した手のひらから、光線状の冷気、炎をポセイドンに向かって放った。
「む……ぅ……」
ザフィーアとルービィの魔法を胴体で受け止めるポセイドン。
エスメラルダの魔法の効果で強化されている魔法に、押され気味でありながらも耐えていた。
しかしながら、相反する属性を持つ2つの魔法は、ポセイドンの身体でどんどんと衝突をはじめ、反発するエネルギーが発生しはじめる。
そして、そのエネルギーは爆発という形で解放された。
「うぉ!」
ザフィーアとルービィの魔法により発生した爆発で身体を飛ばされるポセイドン。
吹き飛んだ身体は、背中から床に叩きつけられた。
そんなポセイドンの様子を見たザフィーアは、放っていた光線状の冷気を止め、ポセイドンに向かって駆け寄った。
そして、腹部を上にしてひっくり返っているポセイドンに近づくと、駆け寄った勢いのまま飛び上がり、ポセイドンの腹部目がけ、刀を強く突き刺した。
腹部を突き刺されたポセイドンは目と口を大きく開き、
「かはっ……」
と声を漏らし、筋肉が張ったように全身を伸ばしたまま、しばらく硬直する。
その後、少しの時間が経つと、硬直した身体はだらりと垂れはじめ、大きく見開いていた目はゆっくりと閉じていった。
そしてそのまま、身体は塵となって消滅をしていったのであった。
「や……やった……」
ポセイドンが消滅したことを確認したエスメラルダは、思わず声を漏らし、その場で膝から崩れ落ちた。
そしてルービィ、ザフィーアもまた、トリトン、ポセイドンとの戦闘が終わった事で気が抜けたのか、その場で膝をついたのであった。
ザフィーアはその場で刀を鞘にしまうと、
「少し……休もう……」
と一同に提案をする。
一同は何も言わず首を縦に振って答えたのであった。
こうしてガブリエルの幹部、トリトン、ポセイドンとの戦いに勝利を収めたアルディア達。
だが、この先にはまだ、四柱帝『海帝ガブリエル』が控えているのである……。




