第15話
サファイアドラゴンより、24時間の時間制限付とはいえ、海中で活動をする術を得たアルディア達。
アルディア達はメリュジーヌの案内の下、四柱帝ガブリエルの居城『海底城』へと向かうのであった。
―――海中
海底城へ向かうため、メリュジーヌの後をついて海中を進んでいくアルディア達。
サファイアドラゴンの恩恵により、地上と同様、海中でも問題なく呼吸ができ、また、水泳の心得がなくても、問題なく海中を進むことができた。
もっとも、海底ではないため、移動する感覚としては、歩行というよりも宙に浮いて移動している感覚に近いのだろうが……。
海底城に向かう道中、時折クリーチャーに襲われる事もあったが、戦闘においても地上と大きく変わる事なく、動くことができていた。
寧ろ、襲ってきたクリーチャーがそこまで強力なクリーチャーではないものであることに、アルディアは逆に不思議に思っていた。
と言うのも、現在、海、特に外海側については既にガブリエルのテリトリーであり、しかもアルディア達が現在向かっている先はそのガブリエルの居城である海底城。それ故、もっと強力なクリーチャーが、しかも多く配置されていてもおかしくないとアルディア達は思っていた。
しかしながら、実際海中に居たクリーチャーは、そもそもがガブリエルの配下のクリーチャーであるか怪しいような、雑魚クリーチャーで、しかも時折襲われるという程度であった。それ故、良い意味ではあるが肩透かしを食らったような状態であったのであった。もっとも、この後戦う相手の事を考えると、嵐の前の静けさなのかもしれないが……。
さて、そんな感じで海中を進んでいると、
「皆様、お疲れ様です」
とメリュジーヌが声をかける。
そしてメリュジーヌは続けて進行方向に左手を向けると、
「あちらが、海底城です」
と、アルディア達に案内をした。
メリュジーヌが差した方には、地上では見ないような青白い石で出来た城が厳かに佇んでいた。
恐らく海底の石を削って作ったのであろう。デザインも刺々しい、装飾のないようなものであった。
「あそこが、海底城……」
メリュジーヌが差した方を見て、アルディアはそう呟く。
「申し訳ありません。私が案内できるのはここまでです」
メリュジーヌは頭を下げ、申し訳なさそうにアルディア達にそう言う。
「いえ、ご案内いただきありがとうございます」
メリュジーヌの謝罪に対し、頭を下げ礼を言うザフィーア。
「申し訳ありません。ご武運を」
メリュジーヌはそう言うと、アルディア達を見送った。
メリュジーヌの見送りを受けながら、アルディア達は海底城内へと入っていったのであった。
―――海底城・城内入口
メリュジーヌから見送りを受け、海底城へと入っていったアルディア達。
敵の本拠地ということで、早速大群で襲われる事を想定していたが……
「思ったほど……敵がいないな」
多少なりクリーチャーは見受けられるものの、軍隊が出迎えるわけでもなかった事で、またしても肩透かしを食らい、思わず口に出してしまうザフィーア。
「でも、流石に外よりはガブリエルのクリーチャーと思われる奴がいるけどね」
「まぁ、それはそうだが……」
エスメラルダの言葉に歯切れの悪い返事をするザフィーア。
すると横から
「まぁいないならいないでいいんじゃない?」
と、ルービィが声をかける。
「まぁ、そうもそうだな」
ルービィの言葉を聞き、そう返すザフィーア。
そして続けて、
「とりあえず襲ってくる奴は倒しつつ、先に進もうか」
そういうと、抜刀し、いつでも応戦できる状態をとった。
「そうだね。サファイアドラゴンの話だと真っ直ぐ進めばいいんだよね?」
エスメラルダは確認もかねてザフィーアに尋ねる。
「そうだったな。このまま前に進んでいこう」
ザフィーアがそういうと、一同はそのまま前に進んでいったのであった。
―――海底城・通路
サファイアドラゴンの言葉通り、海底城を真っ直ぐ前に進んでいくアルディア達。
道中、ガブリエルの配下と思われるクリーチャーと遭遇するものの、半年間の修練の成果もあり、アルディア達は難なく退けていった。
「アルディアも強くなったよね~」
海底城の通路を歩き、進みながらアルディアに話しかけるルービィ。
「そうかな?」
ルービィの言葉にちょっと照れながらそう言うアルディア。
「確かにアルディアは強くなったよね。っていうか魔法に対して理解が深くなった、って感じかな?」
エスメラルダもアルディアに対し、そう言う。
「詳しくなった、ってのはそうかも。勉強の成果かな?」
エスメラルダにそう言うアルディア。
「半年前、ガブリエルに対しあれだけの魔法を放ったわけだし、元々の能力もあったのだろう」
ザフィーアも、アルディアに対しそう言う。
「そ、そうかな~?」
アルディアは、照れながらも口元が緩みながら、そう言った。
「それだけ強くなったなら、この先も大丈夫そうだね!」
ルービィは両腕でガッツポーズをとりながら、アルディアにそう言う。
「うん、ありがとう」
アルディアはルービィの言葉に対し、お礼を言うのであった。
そんなこんなで、戦闘のないときは何気ない会話をしながら、アルディア達は海底城の奥へと進んでいったのであった。
―――海底城・大広間
ガブリエルのクリーチャーたちを倒しつつ海底城の奥へと進んでいったアルディア達。
先へ抜けると、そこには今までの通路と大きく変わり、大きな広間へと辿り着いたのであった。
「特に……何もないな」
ザフィーアは辺りを見渡し、そう言う。
その大広間はザフィーアの言った通り、広い空間ではあったものの、特にこれといったものはなく、また、入口同様、クリーチャーが大群で待ち構えている様子でもなかった。
「前に奥に続く道があるね」
エスメラルダは前方を指差し、そう言う。
「特になにもないし、このまま進もーよ」
ルービィがそう提案すると、一同は首を縦に振り、更に奥に進むため歩き始める。
すると奥から、2つの影がこちらへやってくる様子が見えた。
一同は歩みを止め、やってくる影を向かえるため、戦闘態勢に入る。
奥からやって来る影は、どんどんアルディア達の居る大広間のほうへ近づいていき、ついには大広間へと入ってきた。
「あ……」
奥からやって来た影の正体を見たアルディアは、思わず声を漏らす。
一方、影の正体も、
「おいおい、とうとうここにやって来たよ」
「まさか我らがガブリエル様の城に、地上の者が足を踏み入れるとは」
アルディア達の姿を見て、言葉を口にする。
「覚悟はしていたが、まさかお前達に遭うとはな。トリトン、ポセイドン!」
ザフィーアは影の正体に向かってそう言葉を放つ。
そう、大広間にやってきた影の正体とは、半年前、カスティード北の海岸にてアルディア達と一度接触したガブリエル軍の幹部、トリトン、ポセイドンであったのだ。




