第14話
メリュジーヌより海底に行く術がないかの回答を待つこととなったアルディア達。
メリュジーヌが現れるまでの間、アルディア達は普段と変わらぬ生活を送っていた。
そんな日々を送って数日が経ったある日……。
―――カスティード宮殿・玉座の間
「エクレール様、失礼します!」
大声と共に入室し、駆け寄るかのようにエクレールの座る玉座の下までやってきて、跪く兵士。
そんな兵士の慌てた様子を見て、エクレールは
「どうしたのですか?」
と兵士に尋ねた。
すると兵士から、
「北の海岸にて、例の水魔が現れました!」
という報告を受けたのであった。
その報告を受けたエクレールは、
「メリュジーヌ……」
と小さく呟く。そして、
「ガトー! アルディア達を呼んでください。全員揃い次第、北の海岸へ向かいます」
と、ガトーに指示を出した。
ガトーは
「畏まりました」
というと、ボウアンドスクレープをし、玉座の間を後にしたのであった。
―――少し経って
「エクレール様、失礼いたします。アルディア達を呼んで参りました」
ガトーは普段通りの穏やかな声でエクレールにそう言うと、アルディア達と玉座の間へと招き入れた。
「失礼いたします」
ザフィーアは一礼をし、玉座の間へと入室をする。
他の三人もザフィーアを真似るかのように一礼をし入室をした。
アルディア達が全員、エクレールの前にやって来ると、
「ありがとうございます、ガトー」
とエクレールはお礼を言った。
そしてアルディア達に向かい、
「先ほど、北の海岸にて水魔が現れたとの報告がありました。恐らくメリュジーヌかと思います。急で申し訳ありませんが、今から私と共に北の海岸に向かっていただけますか?」
と尋ねた。
アルディア、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアの4人は、
「わかりました!」
「大丈夫です」
「OKだよー!」
「勿論でございます」
と口々に答えた。
アルディア達の返事を聞き、
「ありがとうございます」
と礼を言うエクレール。そして、
「では、早速向かいましょう」
そういうと玉座から立ち上がり、アルディア達と共に北の海岸へと向かったのであった。
―――カスティード国・北の海岸
カスティード宮殿の玉座の間から北の海岸へと移動したアルディア達。
海岸に辿り着くと、早速先日メリュジーヌに出会った場所へと向かった。
するとそこには、メリュジーヌが、アルディア達を待っているかのように、その場所に居た。
「おーい」
メリュジーヌに向かい声をかけ、大きく手を振るアルディア。
アルディアの声に気づいたメリュジーヌは、
「あ、アルディアさん」
と言うと、一礼をした。
一同はメリュジーヌの下へ行くと、
「お待たせいたしました」
と、一同を代表してガトーがそう言い、ボウアンドスクレープをする。
「いえ、こちらこそお日にちをいただいてしまい、申し訳ありません」
メリュジーヌもそう言うと、頭を下げた。
「さて、早速本題で申し訳ありませんが、ここにいらっしゃったということは、先日の件の回答、という事で良いでしょうか?」
エクレールはメリュジーヌに尋ねる。
「はい」
メリュジーヌは首を縦に振り、そう答える。
そして続けて、
「先日の件、サファイアドラゴン様にお伝えをし、本日、サファイアドラゴン様から皆様へお話をいただける事になりました」
そういうと、こぶし大の藍色の宝石を両手で抱え、目の前に差し出した。
「それは?」
エクレールはメリュジーヌに尋ねる。
「本来であれば直接お会いいただければ良いのですが……。諸事情により、聖石『サファイア』経由でのお話になってしまう事、お詫びします」
「「聖石サファイア!?」」
メリュジーヌの言葉を聞き、アルディア、ルービィ以外の者達は口を揃え、驚いた様子でそう言う。
一方、アルディア、ルービィはというと、
「聖石サファイア?」
「何それ?」
と、『聖石』の存在そのものを理解していない様子であった。
そんなアルディア、ルービィに対し、エクレールは、
「聖石というのは、神話にも出てくる宝石です。『大地のルビー』『大海のサファイア』『大空のエメラルド』の3つがあるとされており、それぞれがこの世界の自然を司る三神龍に管理されているとか……」
と聖石について説明をしたのであった。
一方、エスメラルダ、ザフィーアは、
「しかし、まさか神話でしか聞いたことがない聖石が実在するだなんて……」
「三神龍が実在していたから、あり得る話なのだろうが……」
それぞれ聖石が実在していたことについて、思ったことを口にした。
「あの……サファイアドラゴン様にお繋ぎしても良いでしょうか?」
聖石の存在に驚き、様々な反応をしている一同に向け、メリュジーヌは先に進めてもよいか尋ねる。
「ええ、申し訳ありません。よろしくお願いします」
エクレールはメリュジーヌの問いかけに対し、そう詫びると同時に、進めてもらうようお願いをした。
メリュジーヌは、
「わかりました。では、お繋ぎいたします」
そう言うと、聖石サファイアを上に掲げ、静かに目を閉じた。
すると、聖石サファイアが青く光りはじめ、
『……我が声、聞こえるか?』
と、サファイアより声が聞こえてきた。
サファイアより聞こえる、低く威厳のある声に、緊張感の走る一同。
しかしながら、
「はい、聞こえております」
と、一同を代表し、エクレールが答えた。
そして続けて
「貴方がサファイアドラゴン様でしょうか?」
と聖石サファイアに向けて問いかけた。
『そうだ。我がサファイアドラゴンだ』
聖石サファイアから聞こえる声の主は、エクレールの問いかけに対し、そう答えた。
そして続けて
『本来であれば直接会うべきだが、我が下手に動くとガブリエルの奴が水魔達に危害を加えられかねないのでな。申し訳ない』
と一同に詫びを入れた。
「成る程、だから聖石越しで……」
「っていうかそもそもタイマンなら三神龍なら四柱帝に負けると思えないしね」
サファイアドラゴンの事情を聞き、納得するザフィーアとエスメラルダ。
一方、エクレールは、
「いえ、それは貴方のせいではありませんよ」
と、サファイアドラゴンに答えた。
『済まぬな。そう言ってもらえると助かる』
サファイアドラゴンはエクレールに改めて詫びを入れる。
そして続けて、
『して、メリュジーヌより、大体の内容は聞いている』
と、本題へと入った。
「どうなのでしょう。海底に行く術はありそうですか?」
エクレールは単刀直入にサファイアドラゴンに結論を聞いた。
『結論としては、時間制限付きではあるが、行かせる事はできる』
「本当ですか?」
『ああ、我が力で地上の者でも一時的には海底での活動をできるようにすることは可能だ。但し、24時間という時間制限の内、ではあるが』
「24時間以内ですか……」
サファイアドラゴンからの条件を聞き、エクレールはそう言うと、ガトーの方を向く。
そしてガトーに、
「どう思いますか?」
と尋ねた。
ガトーは
「そうですね。単純にガブリエルの居城に乗り込み、ガブリエルと戦うのであれば、時間としては十分かと思います。しかしながら、海底城内の散策、そしてそもそも海底城へ向かう道を考えると、決して長い時間ではないかと……」
と、エクレールに答えた。
すると聖石より、
『海底城内については、基本的には一本道と思えばいい。恐らくガブリエルの奴は我の居た部屋にいるであろうからな。入口から真っ直ぐ奥に進んだ場所が我の部屋だ。また、海底城までの道のりは、メリュジーヌに案内させよう』
と、サファイアドラゴンから答えが返ってきた。
サファイアドラゴンからの答えを聞いたエクレールは、
「成る程。それなら時間については問題はなさそうですね」
と言う。そして今度はアルディア達の方を向き、
「ここまでお話が進んでしまった状態で、今更申し訳ありません。私としては、海底城にはザフィーア、ルービィ、エスメラルダ、そしてアルディア。貴女たちに行ってもらいたいと思っております。お願いできますか?」
と頭を下げ、お願いをした。
エクレールのお願いに、アルディア、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアは、
「わかりました!」
「いいですよ」
「OKだよ!」
「元々、そのつもりですよ」
と、二つ返事で承諾をする。
アルディア達の返事を聞き、
「本当にありがとう。申し訳ありません」
と、エクレールは改めてお礼と謝罪をしたのであった。
『では、行く者は決まったようだな』
アルディア達の会話を聞いていたサファイアドラゴンは、一連のやりとりが終わると、そう話しかける。
「はい。お待たせいたしました」
エクレールはメリュジーヌの方を向くと、メリュジーヌの手に持っているサファイアに向かってそう答える。
『では、ガブリエルの下に向かう者達は、サファイアに手を触れるが良い』
サファイアドラゴンは、アルディア達にそう話しかける。
アルディア達はメリュジーヌの側に近づき、言われるがままメリュジーヌの手に持っているサファイアに触れると、
「こうでいいですか?」
と尋ねる。
すると、突然聖石サファイアが藍色の光を放ち、光り始めた。その光はアルディア達の身体を包みはじめ、アルディア達も聖石が放つものと同じ、藍色の光を纏い始めたのであった。
そして、サファイアの光がどんどん収まっていくと、
『よし、これで汝らに海中で活動できる加護を与えた』
と、サファイアドラゴンがアルディア達にそう話しかけた。
「では、これで海底に?」
エスメラルダはサファイアドラゴンにそう尋ねる。
『ああ。今より24時間、海中での活動が可能だ。これで海底城へ向かえる』
サファイアドラゴンはエスメラルダに対し、そう答える。
そして続けて、
『我が今できる事は以上だ。後はメリュジーヌに海底城までは案内させよう。では、頼むぞ』
そう言うと、サファイアドラゴンは聖石越しの会話を終了させたのであった。
「よし。じゃあ後はガブリエルのところへ向かうだけだね!」
アルディアは一同にそう言う。
「これで海底まで行けるって事らしいしね」
「よーし、やるよ!」
「ああ、向かおう。海底城へ」
アルディアの言葉に、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアは続けてそう言ったのであった。
「皆、ご武運を」
エクレールはアルディア達にそう言葉をかける。
エクレールの言葉にアルディアは、
「ありがとうございます。行ってきます!」
と元気よく返したのであった。
かくして、海中で活動をする術を得たアルディア達は、四柱帝ガブリエルの居城、海底城へと向かうのであった。




