第11話
カスティード北の海岸にて、ガブリエル軍のクリーチャー及び四柱帝『海帝ガブリエル』を退けたカスティード軍。
翌日、エクレールはその時の様子の報告を受けていた。
―――カスティード宮殿・玉座の間
「成る程、そんな事が……」
ガトーをはじめとする国の幹部の報告を受け、そのように返すエクレール。
そして続けて、
「まさか四柱帝ガブリエルまでも現れるとは……。しかしながら、負傷した者には申し訳ありませんが、向こうが引いてくれたことで、軍として大きな被害が出なかった事は幸いですね。皆、本当にご苦労様でした」
と労いの言葉をかけた。
「勿体ないお言葉です。女王陛下」
ガトーはそういうと、ボウアンドスクレープをする。
そして続けて、
「今回の戦果については、偏にザフィーア殿、ルービィ殿、エスメラルダ殿、そしてアルディア殿の功績でしょう」
とエクレールにそう言った。
エクレールは、
「ええ、本当にそうですね。彼らがこの地に来てくれたことは、私たちにとっても本当に幸運でした」
とガトーに返した。
そして、一息つくと、
「しかし……。まさかアルディアにそのような魔力があったとは……」
と言葉を続けた。
「ええ、アルディア殿の件につきましては、私も驚きでした」
ガトーはエクレールの発言を肯定するように、そう答える。
「貴方は気づいていたのですか? 『シュトレン』」
エクレールは、アルディアの魔法指導をしていた学者風の男性に尋ねる。
シュトレンと呼ばれた、学者風の男性は、
「いいえ、私も知りませんでした」
と答えた。
「そうですか……」
シュトレンを聞いたエクレールは、そのように答えた。
するとシュトレンは、
「しかしながら、魔力もさることながら、彼女の身体能力についても言及すべき点ではあると思います」
と、エクレールに告げる。
「身体能力、ですか?」
エクレールはシュトレンにそう尋ねる。
「はい、身体能力です。彼女は今回、あの強大な魔法を放つ際、人混みを飛び越える程の大きなジャンプをし、強大な魔法の反動で吹き飛んだ際も、大きな怪我をすることはありませんでした。あの身体能力は明らかに常人のものではありません」
シュトレンは戦場で自身が見ていた様子を、エクレールに伝え、アルディアの身体能力が自身の知る常人のそれではない旨も、併せて伝えた。
そして続けて、
「あれはアシェルという過疎地で培われた身体能力なのか、あるいは天性のものなのか……。いずれにせよ、恵まれた才の持ち主であることは確かですね」
とエクレールに告げたのであった。
シュトレンの報告を受けたエクレールは、
「成る程、わかりました」
と答える。
そして続けて、
「では、ザフィーア、ルービィ、エスメラルダに加え、アルディアについても、我が国の戦力として、今後活躍いただきましょう」
と答えた。
「では、4名とも?」
「ええ、正式に採用します。ガトー、彼らにその旨を伝え、準備を進めてください」
ガトーの問いかけにエクレールはそう答えると、ガトーはボウアンドスクレープをし、玉座の間を後にした。
「他の者たちも本日はこれで以上とします。お疲れのところ、ありがとうございました」
ガトーが退室した後、エクレールはシュトレンをはじめとした各員にそう告げる。
一同はエクレールに一礼をすると、玉座の間を後にしたのであった。
―――数日後
正式にカスティードの四柱帝討伐部隊に採用されたアルディア達。
打倒四柱帝を目標に、ザフィーア、ルービィ、エスメラルダは今まで以上に訓練、研究に打ち込んでいた。
一方アルディアはというと、能力こそ評価はされたものの、まだ基礎が出来上がっていないこともあり、引き続き座学をはじめとする基礎訓練を行っていた。
―――カスティード宮殿・一室にて
この日も、いつも通りシュトレンの講義を受けていたアルディア。
講義の休憩中、読んでいた書籍を開くと、ふと、ある魔法に関する記述が彼女の目についた。
「あの~、先生。ちょっといいですか?」
「どうしましたか? アルディア」
アルディアの呼びかけに反応するシュトレン。
「なんか、魔法の歴史に関するページを読んでいたら、ちょっと気になる魔法があって……」
アルディアはそういうと、本を開き、その魔法に関する記述の項目を指差し、シュトレンに見せる。
シュトレンはアルディアが指差した項目を読むと、
「あぁ……、『オーバードライブ』の魔法ですね」
と答えた。
「オーバードライブ?」
アルディアはシュトレンに尋ねる。
「そう、オーバードライブ。気になりますか?」
シュトレンはアルディアに問いかける。
「気になるっていうか……、なんか読んでると、単純に溜めて放つ、って基本的な感じのする魔法なのに、なんで過去の魔法になっちゃってるのかな、って……」
アルディアは少し首をかしげながら、そう答える。
「成る程、良い質問ですね」
シュトレンはメガネをクイッと上げながらニヤリと笑い、そう言った。
そして続けて、アルディアの問いかけに対する説明を始めた。
「確かに貴女の言うとおり、溜めて放つ、単純な魔法ではあります。しかしながらこの魔法、厳密には『膨大な魔力を溜めて』『一気に解放する』魔法なんですよ」
「たくさん溜めて、思いっきり解放するってこと?」
「そうですね。それ故、まず、溜めにどうしても時間がかかってしまう。故に直ぐに使えないというのが弱点ですね」
「なるほど~。でもその分、効果は凄いんじゃないんですか?」
「そう、確かに効果は凄い。この魔法の効果は読んだ通り、『一気に解放し、自身の身体及び魔法能力を一時的に強化する』というものです。しかしここで、もう一つ弱点があります」
「もう一つの弱点?」
「そう、もう一つの弱点。それは『一気に解放し強化する効果に、術者自身が耐えられない』というものです」
「耐えなれない?」
「そう。つまり溜めた魔力も多い分、能力強化に充てる魔力も多い。しかもそれが一気に強化される。そのため、殆どの者が強化に耐えかね、結局のところ、解放した魔力相応の効果を得られなかったわけですね」
「へぇ~」
「しかも更に、強化効果が切れた際、身体の反動や一時的な魔力低下、まぁ魔力低下は単純に一時的に魔力が空に近い状態になっただけですが、そうしたデメリットもある。故にオーバードライブは使用する者がいなくなった、という経緯ですね」
「そうなんですね」
「まぁ結局相応の効果が得られないなら、似たような魔法として魔拳法とかの方が使い勝手もよいですからね」
「ルービィの、ですね」
「そうですね。……まぁしかしながら、貴女くらいの高い身体能力の持ち主であれば、あるいは使いこなせるかもしれませんね」
「私なら?」
アルディアは自分を指差し、シュトレンに尋ねる。
「まぁあくまで可能性の話ですよ。気になるなら練習して試してみるのもよいと思いますよ。そういう試行錯誤が自分に合う魔法、スタイルを見つけるのには必要ですからね。おっと、時間ですね。では講義の続きを始めましょうか」
シュトレンがそういうと、アルディアへの講義を始めたのであった。
―――半年後
四柱帝ガブリエルの襲撃から半年後。
その間は特に大きな襲撃もなく、各員は打倒四柱帝に向けて修練を積んでいた。
アルディアもこの半年で、座学だけではなく、実戦的な修練もはじめており、戦闘技術についても着々と身につけていた。
そんなある日……。
―――カスティード宮殿・玉座の間
「エクレール様、失礼します」
そう言いながら玉座の間に入室し、跪くカスティードの兵士。
「どうしましたか?」
玉座に座っているエクレールは兵士にそう尋ねる。
「はっ。北の海岸にて、未確認の生物が一匹、現れました」
「未確認の生物ですか……。ガトー」
兵士の報告を受けると、同じく玉座の間に居たガトーに声をかけるエクレール。
ガトーは
「畏まりました。早速確認に向かいます」
と、エクレールが全て指示をする前にエクレールの指示を酌み取りそう言うと、ボウアンドスクレープをし、玉座の間を後にした。
―――カスティード国・北の海岸
兵士の報告を受け、兵士達と共に北の海岸へと足を運んだガトー。
アルディア達も、ガトーに同行し、北の海岸へとやって来たのであった。
北の海岸についた一同は、兵士から報告のあった未確認の生物を探し、海岸の捜索をはじめた。
すると、捜し始めて早速、海沿いに一匹の生物を発見した。
その生物を見つけると、一同は早速その場所へ駆け寄った。
その生物は、上半身こそ女性的な人型をしているものの、耳は魔族のように尖っており、また、下半身は魚のような尾びれをしていた。
「まさか、ガブリエルの!?」
サイズ感こそ異なるものの、明らかにガブリエルに似た容姿に反応するルービィ。
ルービィとアルディア、そして兵士達は戦闘態勢に入り、相手の出方を伺っていた。
一方、ザフィーア、エスメラルダ、そしてガトーはというと、ガブリエルのような容姿をした生物の様子を少し見ていた。
そして、しばらくすると、エスメラルダは、
「もしかして……水魔?」
と呟いたのであった。
「水……魔……?」




