エピックツルハシ観光案内所
やっと街に着きますた。
俺です。ぶるあああっ!!
異世界で絶賛SMプレイ中です。ぶるあああっ!!
俺人生で初めてロープで縛られたよ。しかも本格的にぶるあああっ!!
絶対に許さんぞっ!ぶるあああっ!!
絶対に復讐してやぶるあああっ!!
ビープめ!何がステキな世界だぶるあああっ!?
そんなステキ世界の住人が、裸で無抵抗の俺にこんな仕打ちをぶるあああっ!!
…ハァハァ。
よし、なんか知らんが叫んでたらすっきりしてきた!
話を戻そう。
「…あ~やっと見えてきた~。アレが私達の街!鉱石都市エピックツルハシよ」
「へえ~結構大きいな。…ネズミーランド3個分くらいかな? 何人くらい人がいるの?」
「…………」
「ん~私も住んで2年くらいなんだけど。確か人口は5千人を超えているはずよ」
「へえ。都市って割に人口はそんなもんか。まあこの世界の基準なんて知らないしなぁ」
俺は街の衛兵と名乗るコイツらにドナドナされて、その都市が見える距離まで街道を進んでいた。
エピックツルハシとかいう街は想像以上に大きい。街を囲うのは天然の岩肌だ。
「なんだか山をくり抜いて作られたみたいだな」
「実際、鉱山の中に街を造ったていう歴史があるからね」
マジか。すげーなドワーフ。白アリかなんかの親戚じゃあねーだろうな?
「さて、どちらか先達に出てくれないか? 審査官を要請しなきゃあならないだろう」
「では某が。テップ、捕縛スキルを使用しておる故に離れられぬのだろう?」
「うん。精々数メートル以内にいないと捕縛が解除されちゃうからね」
「じゃあ、トキゾウ君に頼むよ」
「承知!」
赤い髪に変なメイクをした奴が街へと駆けていった。俺を乗せた荷車を曳いている男に尋ねる。
「はあ。俺どうなっちゃうの?」
「前科が無ければ大丈夫だよ。君が何か身分を証明できるものを所持してくれてれば良かったんだけどね?」
「たぶん全部燃えた」
「だろうね。ところで君はどうしてあんなことに?」
「空から落っこちてきたんだ」
「やっぱり!彼は天空人なんですよ!ピアン副長!」
「はあ。ホラ、もうすぐ門に着くからね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
大きな門だな。高さはビル3階分かもっと高い。それに横にも広い。なんでだろ? ああ、車道みたいに出入りで左右に分かれてんのか…。
「「お疲れ様ですっ!」」
「ご苦労様。トキゾウ君から聞いているかい?」
「ええ。トキゾウなら審査官を呼びに神殿へ向かいました!」
「もうこんな時間だし、詰め所まで行くと悪目立ちするね。悪いが観光案内所を使わせて貰うよ!今日の当番は?」
「はっ!新人のナッスとキュリウです!」
「よし。テップさん行くよ」
「はい!」
「…観光案内所?」
「そ。ピックの街は大きいからね!新人の衛兵の最初の仕事なんだ」
「へ~ホント、この世界のお巡りさんって感じだな」
俺は門を潜り抜けて街へと入る。そこは大きな広場だった。街の中は想像以上に広くて綺麗だ。へえ、大したもんだな。まるでどっかのテーマパークの一角みたいだ。広場には屋台や夜店のようなものが並んでいて人もそれなりにいた。どこからともなく食い物のいい匂いがした。…そういや腹減ったなぁ↓(ションボリ)
「テップさん、ちょっと待っててくれるかい? 僕は先に中に入ってふたりに説明してくるから」
「わかりました」
そう言って俺をずっと引っ張ってくれた衛兵、ピアンが縛られたままの俺とやたらと背が高いパツキン女を残してドアを閉める。
「ね~ママ~!あの人どうして裸で縛られてるの~?」
「え? ああ、見ちゃダメよ!きっと悪い事をして捕まったんだわ」
「でも可哀相だよ~? だって裸だよ~?」
「確かに…なんで裸なのかしらね」
広場に居た子供連れがどうやら俺を見つけてしまったようだな。まあ、仕方ないだろう。この圧倒的存在感の前では何人たりとも俺を無視することなどできんだろうさ。
あ。そうだ!
「…ううっ!ええ~ん!ええ~ん!痛いよぉ~!痛いよぉ~!」
「ええっ?! 急になんで泣き出してんのっ!?」
「酷いよ~!酷いよぅ~!この衛兵さんが、何も悪い事をしてない俺を裸にしてロープで縛りあげるんだよ~!? ええ~ん!痛いよぉ~!きっと欲求不満なんだよぅ~!」
「チョット人前で何言ってるの?! み、皆さん違いますよ!違いますからねっ!? それに君は最初から素っ裸でしょ!?」
「ええ~ん!縛ってるのはホントじゃあないか~!ええ~ん!離してよぉ~!」
俺の名演技に魅せられたのはその母子だけではなく、いつの間にか集まって来た広場の面々がテップに非難めいた視線を向ける。テップは真っ赤になって腕を振り回す。ふふん!いい気味だぜっ!
「…なんだか随分騒がしいけど? ちょっと君達!何してるの!?」
「副長っ!? 助けたくださいよぅ!(泣いちゃった)」
「とにかく、彼を中に入れよう!さあ、君も荷車から降りてくれ!」
「ちょっと待った」
「なっ?! これ以上騒ぎにしたくないんだ!さぁ、早くっ」
「違うんだ…落ち着いて、俺の話を聞いてくれ」
「どうしたんだい?」
俺の真剣な表情にふたりは怪訝な表情をする。
「…動けないんだ」
「は? イヤ、脚までは縛っていない。立てるだろ?」
「実は道中、ロープが食い込んだり、振動でズレたりして結構ガチで痛くてさ? スキルを連発してたら平気になりはしたんだが、このポーズから動けなくなっちまったんだ」
「ええ~?! じゃあ、痛い痛いって騒いでたの嘘なのっ!?」
「からかってゴメンね(テヘペロ)」
「仕方ないっ!テップさん手伝ってくれ」
「はい!…やだっ!? 副長が脚の方持って下さいよ!ま、丸見えなんですからっ!」
「あ、ああごめんね(…道中ずっと見てたんだろう? 知ってるんだぞ?)」
「苦労かけてスマンね!」
「「せーのっ!!」」
スキルの連発にこんな弊害があるとは…気をつけねばなぁ。
そして住民らが、どうしたどうした?と騒ぐ中、エピックツルハシ観光案内所のドアは閉められた。