バグ技
イヤー懐かしす!この裏技に心当たりがあるそこの君!
さてはけっこういい歳の少年の心を忘れない大人かレディーだな!
やあ!諸君、僕はタカハシ・メイジだよ。前回の話の続きだよ!
俺はメンバーの先頭にしているコケモンをジッっと見る。
ふとん マゾタイプ あと5ふんコケモン
スキル:ねんちゃくぶつ
う~ん。マゾタイプか…数は多いんだが、序盤は厳しいんだよね。マゾタイプは低いレベルで進化するコケモンが多い。この、おきたくないって表情がなんともナイスなコケモンのふとんもそうだ。とても弱いコケモンなのだが少しレベルをあげると、布団にくるまったような姿のへんしんがんぼうコケモン、ねぶくろに進化する。ただ覚えるのは進化時に覚える「かったくなる」だけ。弱い。だがもう少し頑張ってレベルを上げると、最終進化形態のふっとんだになる。なぜか蝶のような神々しいグラになっている謎多きコケモンだ。しかし、そこまで育てるのが辛い。攻撃手段をほとんど持たないので他のコケモンに交代しながら戦闘で経験値を稼がねばならず、それが輪を掛けてしんどい。経験者談。
そこで俺が思い出したのはとあるバグ技で一気にコケモンのレベルを100にしてしまうものだ。えーと、確かアイテムが必要な数だけ持ってないと…ああ、なんとか足りるな。んで確か~段目にあるアイテムをセレクトで~して入れ替えーの、でよかったか? 後は戦闘してスキルを選んで~すれば、よし!コレでレベルがあがれば…!
ふとん は 18 の けいけんち を てにいれた!
ふとん の レベルが 100 にあがった!
「お!成功したぞ。いや~コレやったなあ~。ただやり過ぎるとROMが駄目になっちゃう可能性があるし、レベルが100になってもほとんど能力値も上がらないうえに選んだスキル消えちゃうからまるで褒められたもんでもないけど…」
おや? ふとん の きょどう が?
「残念ながらBボタンを連打したりはせんぞ?」
デ・デ・デ・デ・デ・デ・デ・デ・デ… (謎の鳴き声もとい電子音)
おめでとう! ふとん は ねぶくろ に しんかした!
「まーかったくなるしか使えないレベル100のねぶくろですけどねーw あー面白かった!さて部屋の片付けに戻るとしますかね」
よっこらせと俺が立ち上がってGBの電源を切る。
ん?
GBの画面が消えてない。進化したねぶくろが画面からずっと俺を見ている。
って、んな訳ないか!しっかし電源スイッチを何度切り替えても画面に変化がない。
「あちゃ~完全に故障かぁ? まあ古いから無理も無いか…」
俺は今しがた腰を下ろしていたベッドにGBをポンとほうり投げた。
はずだった。
「え?」
GBは未だ俺の手の中だ、いや、俺の右手に張り付いている!
…進化したねぶくろが画面からずっと俺を見ている。…嘘だろ?
すると一瞬で部屋の気配が変わる。
「ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワゼアザワザワザワザワザワザワザワザワ…!!!!」
「ひっ!なんだなんだぁ?!」
部屋中にザワザワと無数の声が響き段々と強くなって俺に覆いかぶさる。
「ザワザワザワザワザワゼアザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワゼアザワザワ…!!!!」
「おいっ!誰かひとりだけ、ゼアゼア言ってるぞ? やるならちゃんとやれよ!?」
俺の苦し紛れのツッコミになんと手元のGBから声が上がる。
「うるさイッ!よくもボクをこんな目に遭わしてくれたナッ?!」
「って、ええっ?! お前が喋ったの?! 嘘だろ、こんな機能なんて…」
しかし、俺は最後までセリフを言えなかった。
無数の声はついに形となって俺に襲い掛かってきたからだ。
…「「「「よくもやってくれたナァ!? 地獄に落ちロッ!!」」」」…
ゲーム機の画面から凄まじい青白い閃光と電撃が俺を包む。
「痛ってええええ!?マジヤバ!?うぎゃあああああああああぁぁあぁアぁぁぁ…」
こうしてタカハシ・メイジは世界から消滅した。
あまりの衝撃に雷が家に落ちたものかとタカハシ家の住人が家に異変がないか見回ったところ。次男の私室で床に大きな焦げ跡と大破した家庭用携帯ゲーム機を発見したという。
しかし、次男であるタカハシ・メイジは家の中から完全に姿を消し去り、警察に捜索届が出されているが進展はない。この事件はかの〇ックス〇ァイルとしても取り扱われた…という都市伝説があるとかないとか。