B級冒険者
はい。やっちゃいました。反省はして、ないね多分!
個人的にストレス発散で書いている作品です。
俺の名はタカハシ・メイジ。
よく名人とかってゲーム界の某レジェンドみたいに呼ばれるけど、漢字の読みはメイジが正しい。
訳あって現在は異世界で冒険者をしている。
…なんでかって?
それには聞くも涙。語るも涙の悲劇のエピソードがあるんだ。
聞く?
聞いちゃう?
まあ、聞きたくなくても勝手に俺が喋っちゃうんだけどね。
…そう。あれは、ある晴れた木漏れ日が優しく俺の頬を撫で
「おいっ!セル! 貴様、さっきから俺様の話を無視してんじゃあねぇ!?」
「うっさいぞ。俺の回想シーンを邪魔すんなっ」
ゴスリッ。俺は空気の読めない眼前のリーゼントにチョップをお見舞いする。
なに、ほんの厚めの瓦が5、6枚叩き割れるほどの強さだ、心配ない。
「づあっ?! 重ェ?! お前またあのスキルを使いやがったな!殺す気かっ!」
「セルの野郎!ウェインさんになんて事を!」
「お前ホント恩知らずにもほどがあるぞ?!」
「イヤー照れるなぁー」
「褒めてんじゃあねぇ!?」
まったくむさくるしい連中だこと。この俺に話を聞いて欲しいんなら、とっておきのロリ巨乳美少女でも用意することだな。そこまでやって初めて俺も話を聞く構えをとれるというものだ。コレ、俺のオフィシャル・ルールね?
「…クソっ!あれだけ世話を焼いてやったのに、この仕打ちとはっ」
「俺だって、その恩を感じればこそお前らみたいなチンピラ冒険者の話を聞いてやってるだろ?」
「このっ…!ベテラン準A級冒険者であるウェインさんに向かってそれはないだろっ」
「おいおい。A級だっつても評価落ちの実質B級でしょ? 俺だって一昨日にB級になったもん。アレ? グレグレお前、確かまだC級だったよな。…僕、びーきゅうだよお~? お前こそ俺に向かって口の訊き方を改めるべきじゃあないのぉ~?」
「コイツ!本当に腹立つな!?」
「それだっておかしな話だぜ!たった3ヶ月かそこらでD級からB級まで昇級しやがってよぉ」
「実力だよ?」
ウェインの取り巻きが今日もやたら煩い。それも仕方ないか。俺が一昨日B級冒険者として昇級したからだ。まあ、これは正直言って運が良かっただけだな。何故に昇級できたのかの話は別の機会とする。
この世界の冒険者にはお約束通り、等級がある。
世界に10人いるかいないかの伝説のS級冒険者。引退後は王様になってみたり、英雄劇の主人公になっちゃったりするモノホンの化け物共だ。俺はまだ遭ったことはない。
そしてA級冒険者。大概の冒険者達は伝説となるよりもこの等級を日夜目指して活動している。なぜならA級冒険者はギルドの公務員相当の地位と高給が約束されているからだ。もはやギルドからの要請がない限り、自主的に依頼を行わなくても良い。皆の憧れの的である。
んで俺の現在の等級でもあるB級。この世界の冒険者の中核をなす等級だ。ぶっちゃけ壁だな。ほとんどの冒険者がA級冒険者になることなくこの等級で死ぬか、涙を呑んで引退していく。そういえば、俺が冒険者になる前にバイトしてた防具屋によく来てたホッセさんという人がいるんだが。彼もまたB級で定年を迎えてギルドの用務員をしていると言ってたな。少し話が逸れてしまったが、B級冒険者にはギルドから2ヶ月に一度、給与が渡されるがコレが雀の涙ほど。こればかりはピンキリらしいが、基本は依頼をこなして報酬を得なければ生活していくことすら難しい者も少なくない。
さらに下位冒険者にはC級とD級がある。ギルドに冒険者登録すると特例が無い限りはD級冒険者からスタートし、その後問題がなければC級となる。まあ、C級になれない輩は、10歳以下の子供かギルドから冒険者としての素質を問題視される者である。他の仕事探したら?って奴だな。
「っても俺スキルはたったひとつしか使えないんだよ? だのにこんな短期間でB級冒険者まで上り詰めた俺を讃えるべきでしょ? こちとら努力の賜物だよ。妬まれる筋合いすらないよ?」
「だから、なんであんなスキルしか使えないお前がだなぁ…」
「何もおかしくなんてないでしょ」
そこにスラリと長い手足を揺らしながら話に入ってきたのは弓使いのB級女冒険者、デイル。ウェインと愉快な仲間達の紅一点だ。たしかトールマンとドワーフ人との混血だとか聞いたけど。
「B級冒険者の昇級資格はレベル40以上と難度B相当の依頼の達成経験がある者。セルはそのどちらも満たしているんだもの」
「デイル、だけどよう…」
「ケッ。どうせ背長女はひょろ長い野郎の味方なんだろ…」
「あ? グレグレなんか言った?」
「ひぃ!ス、スマンかった」
「え? もう一回言ってくれる?」
「大変もうしわけありませんでしたぁぁ~?!」
ちなみにさっきからドワーフだのトールマンだの言ってるが、この世界には種族っていうステータスがあってな? いわゆる職業名みたいなものも含めるんだろーがかなりの種類がある。それこそファイターとかウィザードとか。俺がヒューマン。リーゼントを弄ってるウェインは確かホークマン。壁ドンしてるデイルがロングアーチャー。壁ドンされてるオレンジモヒカンのグレグレ君がソードマンだったはずだ。これは生まれつきのものであり、より上位の種族へとクラスチェンジする以外に変化することはまずないんだそうな。この種族の違いは修得できるスキルにかなりの違いがある。
そしてドワーフ人、トールマンは見た目の俗称で種族とはまた違う。ドワーフは人間種で、トールマンもそれに属する。一般的なドワーフ人は平均身長が150くらいから160センチくらいの黒髪黒目茶色い肌を持つ。かの有名な種族の様にヒゲモジャじゃあないし普通に女の子は可愛い。よかったね!ただ、180前後ある俺は割と大男扱いされてしまう。ただ、ドワーフ人にもデカイ奴がいないわけじゃあないからそこまで目立たない。トールマンは北方の地に住む金髪碧眼の高身長の人種。ヨーロピアンな美しい容姿が特徴だ。
他にもエルフや亜人種といった者がこの世界にはいるらしいが、このドワーフ人の街では珍しくなかなかお目にかかる事が無い。あ。亜人種なら目の前にいたな。ウェインだ。このリーゼントは俺よりもさらに頭一つデカイから恐らく2メートル近い。それよりもコイツは入れ墨の上半身裸にズボンだけの変態であり、背中には大きな翼があり飛べる。ウイングと呼ばれる亜人種で昔はこの辺りを支配していたほど力を有していたそうな。このリーゼントが?
「? なんでぇその顔は? また腹の立つ事をどーせ考えてやがるんだろう…はぁ。いいか、セル!お前は自分がB級冒険者になったって自覚が足りてねぇ!」
「え? 俺、自分がB級だって知ってるよ?」
「このバカ!そうじゃあねえ。新しい昇級者は質の悪い冒険者に何かと目を付けられるんだよ。このギルド"シロライオン"じゃあ俺様が目を光らせているから問題は起きねぇだろうがな!」
「ウェインは俺を守ってくれないの?(キラキラ)」
「気持ち悪ィことを真顔で言うなっ?! お前分け前が減るから嫌だって早々に俺のパーティを抜けてフリーになった癖してっ!」
「そーいえばー(棒読み)」
「あのなぁ~? セル、お前は悪目立ちが過ぎる!他のギルドの奴らが…」
「ちょっと!ウェインさん!セルの奴、どっかいっちまいましたよ?」
「お前にチョッカイを、って何?」
ウェイン達が集まっていたギルドの酒場のテーブルから離れて俺はギルドの受付に避難していた。
「クスクス…また兄さん達に絡まれたんですか?スイマセン、兄さんたらホント心配性で」
「ホントそうだよアディーちゃん。ウェイン達が皆して俺をイジメるんだよ? B級に昇級したから祝ってくれるものかと思ってホイホイ来てみればさ~? 俺、すっごい落ち込んじゃった。もう依頼できないかも…だからまたアディーちゃんのあの綺麗な声が聞きたいなぁ。また俺に歌って聴かせてくれないか?」
冒険者ギルド、シロライオンの看板受付嬢のアディーちゃんがいたからだけどな。柔らかそうな銀髪と羽根、それに目の覚めるような赤いルビーの瞳。…こんな美少女が、あのウェインと兄妹とは神様も酷い事をしやがる。
「フフフ、今はひとが多いので…仕事が終わった後でなら、いいですよ?」
「マジで?!いやぁ~今日はウェイン達に絡まれてブルーだったけど、俺頑張って明日からも生きていけそう。あ!そうだついでにどっかにディナーでも…」
「くぅオラァっ!? セルぅ!貴様、俺の大事な妹を口説くなっ!?」
うわっ、ウェインの奴こっちに来ちゃった。なんと煩いシスコンか。これではアディーちゃんの幸せは遠いだろうが、そこは俺が尽力すべきであろう。
とまあ、こんな感じで忙しい日々を何故、俺が過ごすハメになったのか。
改めて、そこから話すとしようか…。
あ。次の話からね?




