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兄妹地震体験日誌  作者: いなり寿司
1/1

地震発生

今日は冬休み

父は会社へ、母は昼食の食材を買いにスーパーへ

この家には僕たち兄妹しかいない。

僕たち兄妹は仲のいい方で、

一緒にゲームをするほどだ。

その日も一緒にゲームをしていた。

一昨日の駿河湾の地震でテレビ台のガラスに、

物が当たってヒビが入っている。

僕は妹がテレビ台のガラスに、

触れないようにゲームをしていた。

そして、僕が立とうと体勢を変えた時

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという轟音と共に、

キシキシと家がきしむ音が聞こえる。

まずいと思いコタツの対岸にいる妹に

「机にもぐれ」と命令する。

妹はすぐに気付いてコタツに潜ってくれた。

ガタガタガタガタと揺れ始めてきた。

僕もすぐにコタツに潜る。

そして、潜った瞬間、ドンという音がした。

恐る恐るコタツの布団を開けると、

そこにはタンスがあった。

僕は、強い揺れが収まり始めた時ホッとして、

コタツから出ようとすると、また強い揺れが来た。

それからは、揺れが強まったり弱まったりの繰り返しだった。


揺れが収まった。


僕はすぐに出て、家の状況を見て絶句した。

固定されていない家具はほとんど倒れ、

地震の前に僕たちがいた場所は

どちらも家具が倒れてきていた。

逃げ遅れていたら死んでいたなと思いながら、

ふと、この言葉を思い出した。

[地震が来たらすぐ避難]

この家の海抜は8m家は二階建て、

大きい津波なら飲み込まれてしまう。

すぐに近くにあった新聞紙で2人分の草履を作る。

地震について調べていたときに、ついでにこの草履の

作り方を覚えといてよかと思いながら。

僕「花、出てきても良いよ」と言った。

花はこの声を聞いて安心したのか、

泣き始めてしまった。

僕「今から避難するから、早く準備して」

花はここで安心してはいけたいことに気づいたのか、

すぐに新聞紙の草履を履いて避難準備を始めた。

しかし、その手はふるえつづけている。

僕も避難準備を始める。

まずは、トイレットペーパー

これは、トイレ以外にも、

汚れを拭き取るために便利で、色々使える。

次に、ラップ

これは、体に巻けば防寒具になって、

強く巻けば、止血もできる。

さらには、容器に巻けば、容器を汚さず食事ができるという優れものだ。

そして、アルミホイル

これは、ラップと同じく防寒具で、

容器を汚さずに食べれるという点も、

ラップと変わらないが、アルミホイルを固めると、

ちょっと脆いところがあるところが欠点だが便利だ。

あとは、避難バッグを持って避難しよう。

「花〜準備できたか?」

そう言うと花は

「もうできてるよ」

と言う。

避難は時間が命なので、もうここに帰ってこれないかもしれないという悲しみはあるが、

今は避難しなければいけない。

靴箱は空いていて靴が散乱している。

その中からすぐに自分たちの靴を見つけて避難する。

ここから避難場所は約600m先のこども園だ。

走ればすぐに着くと思っていたが、

民家の塀は倒れ、

液状化現象で道路が壊れ、

いつものあの街はそこに無かった。

そのような悪路を通り避難場所へ向かう途中、

大津波警報が発令された。

絶望しかない。頭が真っ黒か真っ白かもわからない。

心臓が重い。足がガクガクする。体が震えている。

そんな時だった

「お兄ちゃん、急いで!津波が来るよ。」

意識が一気に現実に引き返させられたと同時に、

走り出した。

避難場所に着くまでの間、何人も泣いている人や

早く歩けない年寄りを見た。

何度良心が痛んだことが、

しかし、助けることはできない

[津波てんでんこ]

この言葉は東北の津波の標語であって、意味は

『自分の命は自分で守れ、肉親でも構わず逃げろ』

である。

つまり、あの人達を助けようとしたら、

助かるかもしれない自分もその人もどちらも

死ぬかもしれないという事だ。


やっと避難場所に着いたが、

こども園はもう人がごった返していた。

その中にテレビがあるらしいが、

人が邪魔で見ることはできない。

妹を肩車することで、妹にテレビを見てもらった。

妹は興奮気味に

「この地震のマグニチュードは9.1で、

静岡県中部の震度は7、

他にもたくさんのところで震度7で、大体の太平洋側は

大津波警報だって!」

と言った。

そういえば人間は死が近づくと

興奮すると聞いたことがある。

つまり、妹は本能的に

死んでしまうかもと思っているという事だ。

震源は駿河湾の南方とのことだ。

津波の第一波はもう来ているらしい。

ここから見えるこの街の範囲内では

崖崩れは起きていないみたい。

すでに死者が出ているそうで、

避難場所内で家族の安全確認をする人もいる。


あれ、そういえば、お父さんとお母さんは

どこにいるの?生きている?

お母さんは家より海側のスーパーに行っているから

この避難場所に来ているはずだが、見当たらない。

しかしここで嫌な予想をしてしまった。

それは、母が家に寄って、避難が遅れているのかも

しれないという事だ。

そして、このタイミングで津波の第二波が

来てしまったそうだ。そのことが大声で知らされた頃

お母さんが避難場所の

一個手前の曲がり角から見えてきた。

しかし、津波はもう上陸している。

お母さんが避難場所に着く頃には、津波はお母さんの

後方100m程の距離まで来ていた。

案の定お母さんは避難するときに家に寄ったらしい。

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