第1章 アローン・オン・ア・プラネット "Alone on a Planet" 2
「な、なんてことだ……」
乗組員の全員が唖然としていた。
何が起きたのか、まったく理解できない。
衝撃に耐え、機体を安定させながら、暁は叫んだ。
「GWM! GWM! どうなってるんだ!」
応答はない。
「ゼヒュロス! ゼヒュロス! 応答してくれ!」
応答はない。
「フェル! 応えてくれ!」
次の瞬間、上陸シャトル自体も強い衝撃を受けた。
気がついた時には、暁の体は生身のまま、シャトルの残骸に囲まれて……宙に浮いていた。
浜辺に打ち寄せる、波の音が聞こえた。
目を開くと、自分は楽園にいるのかと思った。
青い空と心地よい潮風。
そうだ、自分はキューバにリゾートに来たのだったな。
トロピカルフルーツジュースのカクテルを飲んで、肌の焼けた女の子たちとクラブで踊るんだ。
女の子が俺の頬にキスをして……。
ぶごごご……。
そう、ぶごごご、と唸って……。
ぶごごご……?
「ぎゃあああ!」
何物かの巨大な舌が顔を舐め回し、涎だらけになったところで、暁は目を覚ました。
同時に飛び起きて、とにかく逃げる。
逃げる?
どこへ?
暁はなぜか浜辺の木の、3mは高さのある枝にしがみついていた。
恐る恐る下を見下ろすと、そこには二足歩行の不思議な形の生き物が彼を見上げていた。
緑と茶色のごつごつした皮膚を持った生き物。
暁は古代の地球に生息していた恐竜を想起した。
形は確かに恐竜だが、決定的に異なるのはその大きさだった。
比較するとすれば、馬……だろうか。
馬……となれば、その背には……やはり人が騎乗していた。
人。
確かに人だ。
姿形は若い人間の女性である。
それもかなりの美女だ。
小麦色の肌に金髪のポニーテール。
南国らしい肌の露出はあるものの、上等な貴族風の衣服をまとっていた。
腰には小振りな剣を履いている。
人間?
ここは……まさか地球なのか?
暁は、昔見た、地球の古い映画を思い出した。
宇宙飛行士たちがたどり着いた、猿が支配する惑星は実は……。
「大丈夫……ですか?」
大丈夫……だと?
言葉が理解できる?
その時、暁は身体に激痛が走るのを感じた。
彼の目の片隅が、何かを投げつけたあとの、屈強な若者の姿を捉えた。
手が枝から離れ……。
彼の体は再び宙を舞った。