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私の思うこと、感じること

炎を見つめる少年

作者: 黒井 陽斗

 今日は早めに仕事を切り上げ、車に乗って人通りの少ない裏道を走っている時のことでした。


 家の近所の明かりもない公園で、スマホのライトで小さな焚き火を照らして、じっと見つめている高校生くらいの子が居ました。


 時刻は夜の八時過ぎ、そこまで遅いという時間でもないので高校生が出歩いても可怪しいという時間ではありません。


 ですが、彼が行っている焚き火は直火で、場所が枯れ草がある公園の端だったので延焼が気になり、危ないなと感じたのが最初の印象でした。


 更に暖かくなって来たのでバイクの子たちが増えたから、警察の巡回が多くなってきた事もあり、その子が補導されるのも可哀想なので車に積んであった水を片手に、少しだけお話をしに行きました。


 まずはこんばんは、と声を掛け、少しお話してもいいかな?と問いかけました。


 私の言葉を聞いて彼はしきりに炎を気にしながらも、私の方へ酷く気まずそうに向きました。


 学ランに身を包み、黒縁メガネを掛けた黒髪の少年、私の彼への第一印象は大人しそうだけど凄く真面目そうな子で、でも何か少し思いつめた顔をしているなと、いうモノでした。


 その時の私は、彼はきっと怒られると思っているのだろうなと思いましたので、怒るのでは無く、危ないから気になったんだよ、と出来るだけ刺激しないよう、優しい言葉使いと声色で話すように心がけて彼の返事を待ちました。


 ですが彼はやはり焚き火が気になるのか、下を向いたまま、何か言いたそうにモジモジしていました。


 まぁ高校生くらいの子が一人で火遊びしてて、いきなり知らないおっさんから声を掛けられれば警戒するか、と諦めて安全のために水だけ渡そうと思った所、彼の足元に視線を向けると何かが入っていたであろう、空のクリアファイルが有りました。


 きっと、何か、どうしても燃やしてしまいたい物があるのかもしれない。


 彼の態度と照らし合わせ、そう感じた私は、今は彼のやりたいようにさせてやろうと思い、きちんと消火するんだよ、補導される前に早く帰るようにしてねと言い残し、その場を離れました。


 そうして彼が何かを燃やして帰った後で、きちんと消火が出来るか確認しようと考え、しばらく離れた場所で待つことにしました。


 そうして彼と別れて10分ほど経った後、誰も居なくなった火の消えた公園に戻りました。


 彼が何か燃やしてしまいたいと思ったであろう、なにかの燃えカスには、私が渡した水がきちんと掛けられていました。


 その消えてしまった燃えカスに、私は大人として彼への接し方は本当にこれでよかったのか、それとも何か他に声を掛けるべきだったのか、それとももう少し彼の話を聞くべきだったのではないかと、言い様の無いなにかが胸に残りました。


 ただ、自分が渡した水が掛けられた直火の跡を見つめ、彼はきっと素直な子だったのだろうと、心に残ったなにかと共に思考を巡らせるだけでした。


 もし彼ともう一度会う事があったら、何が出来るかは分からないけどもう少しだけゆっくり話してみよう、今の私はそんな風に思いながら、一人暗がりで炎を見つめていた少年との邂逅を書いています。


 これを読んで下さった貴方なら、大人として少年にどのように接するのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 適切な対応だったと思います。 他人の事情に踏み込むことは難しい。 傍から見守る程度で十分だと思います。
[一言] 私ならスルーですね。声をかけるという選択肢がありません。非力で、取れる自衛手段が少ないので何もせず家に帰ります。 逆に声をかけられるのはすごいと思いました。多分それでよかったのではないです…
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