「この写真、撮ったの誰?」の元ネタ
「この写真、撮ったの誰?」の後書きを分けて欲しいと要望があり、こちらに分けました。
基本的な内容は同じです。
向こうが長いと思った方はこちらだけでも。
歳とったなって・・・思う
ファミレスで学生が楽しそうに時間を潰しているのを見ると何となくそんな風に考えてしまう。そしてあの頃のことを思い出してしまう。
青春だったんだよ。みんなで青春してたんだよ。ってね
記憶が蘇る時のきっかけって色々あると思うけど、最近はアニメかな。
まぁたまたま舞台になっている街が生まれ故郷だからなんだけど、そのアニメは背景を現物のまま描くという最近ありがちな表現方法を取っていて、私としては懐かしさが半端ない。もちろんそこで暮らしていた頃からするとかなり景色に変化があるのだけれど、基本的なところは昔のまんま。地名・駅名、その他のランドマーク。出てくる学校名は少し変えてあるけど、何となく何処を指しているかは想像できる。ある登場人物の一人が住んでいるとされる辺りから考えると、この子は私と同じ小学校に通っていただろうから後輩だな、とか。そこに母校であろう校名が出てきた時には今まで気がつかなかった自分の中にあるノスタルジーが露呈する。寂しいのかな。いろいろと。
心が病んでいると嫌な思い出ばかりが思い出される。病んでなかったとしても自然と思い出してしまうほど楽しかったことなんてないけど。
このアニメを観たからこそ思い出したというわけじゃないけど。もっと直接的に思い出すこともあるんだけど。そんなこんなで蘇ってしまった誰にでもあるどこにでもある青春の物語を一つ
高校三年の秋。文化祭が終わった後。打ち上げだと言って部のみんなで京都の市内へと繰り出した。部のみんななんて言っているけど私はそこの部員ではない。実際は帰宅部の一員で、今となっては自分が所属していた部がどこだったかなんて、とうの昔に記憶の佳奈タ。
今もそうだがその頃もまた「手伝って」って言われるとどこにでも顔を出す、「何でも屋」のようなことをしていた。この打ち上げと称するものは文化祭の準備を手伝ったある部の集まりというわけ。
打ち上げなんて言っても高校生の戯言で、ファミレスで昼ご飯を食べて、新京極辺りをうろうろして、お茶しておしまい。その頃お洒落なカフェバーなんて言われていた「平野屋」に行って、ちょっと背伸びのお茶しておしまい。下級生はお昼だけで帰って行った子が殆どだったかな。その後徐々に人数が減って、最後まで残ったメンバーは以下7人で全員3年生。
男子:宮川・菅原・岡山・私
女子:知香・佳奈・ナオ
実は岡山と佳奈の2名も部外だったりする。
私は幼い頃から人付き合いが苦手で、特に異性とは口もきけず、友達も少なかった。この時もその部に関わったからといっても、特に友達を増やしたいとも思っていなかったので、今までの友人以外とは無理に仲良くすることはなかった(単なる手伝いだったし)。もともとそこにあった人間関係にも立ち入りたくはなく、関わらないように、巻き込まれないように振舞っていた。
そもそもこの手伝いも全くやるつもりはなかったけれど、岡山が、私がやるのならやると、迷惑な返事をしたことから始まったことだった。
人間関係といっても高校生にありがちな誰が誰を好きだとか何だとかいうやつで、そういうのが途轍もなく面倒に感じていた私は、深入りは避けていた。話を聞くことも避けていた。それでも近づいて来るやつがいるもの。女子高校生、今でいうところのJK。そいつらとの会話は気を許すと友達同士の恋愛話になることが多く、聞きたくもない話が否が応でも耳に入り情報として蓄積されていく。
そこでこの日に残った奴らの青春的超面倒恋愛相関を説明すると、宮川のことを知香と佳奈が好き。菅原は知香のことが好きだけど隠そうとしている。でもそのことを知らない奴がいないほどバレバレ。岡山は佳奈のことが気になっているがそれほどアピールはしていない。こちらもバレバレ。ナオはいつも聞き役で特に誰かが好きだとか肩入れするとかはなかったと思う。宮川自身はどっち着かずで、いつも知香と佳奈のどちらかが泣いている。ね、面倒な集まりでしょ。ここに登場しない部内の奴らも含めると、文章力のある奴なら面白い小説でも書けそうなくらい入り乱れていた。青春ってこんなもんかとも思う。
そういう奴らの中には入りたくなかったし、入る余地も入れる余地もない。この打ち上げとやらも正直言って行きたくなかった。誰かは忘れたけど女子から「打ち上げ一緒にいこうよ」なんて生まれてこのかた言われたことのない誘いに、いい気になって参加してしまった。
そんな中、やっぱりというか必然というか面倒ごとが起こった。起こるべくして起こった。
「平野屋」を出て三条大橋へ。夕暮れ時からカップルが等間隔に並んで寄り添い座る鴨川土手の光景は今も昔も変わらない。三条からその土手に降りて等間隔に並ぶカップルを左に見ながら四条に向け7人でくだらない話をしながら下った。みんなで他愛ないことを話しながらブラブラと歩いていた。しばらくすると宮川と佳奈がこの集団から遅れだし、みんなとなんとなく距離を取り二人だけの世界を作っているように見える。みんなでいるんだし、わきまえて欲しいと思っていたのは私だけではないと思うんだけど。
四条大橋の下をくぐったころ、離れて付いて来ているはずだったその二人は向きを変え三条の方へ引き返し歩き始めた。戻ってくるように大声で叫んだのは菅原。少し悪ぶってはいるが一番真面目な彼が二人に戻ってくるよう叫ぶ。しかし二人には届かなかったのか聞こえないふりをしたのか、こちらに振り向くこともなく離れていく。これをよく思わないのは、そう、知香だ。この状況で取れる行動はいくつか考えられる。選択肢は複数ある。菅原のするように戻るように声をかけるも一つ。実際に二人を追いかけて連れ戻すということも考えられる。放っておくというのもあったが彼女にしてみればそれはできないだろう。その中で彼女が選んだのは、二人が向かった三条とは反対方向、つまり五条へ向けて駆け出すという行動だった。三条の方へと消えていく二人に背を向け、その姿を見ないように見なくてすむように五条方面に掛けて行った。おそらく泣きながら。
それを見た菅原は岡山に宮川と佳奈を連れ戻すように指示を出し、自分は知香を追いかけ五条方面へと走り出した。岡山はあからさまに嫌な顔をして「エーーー、あんな二人ほっといたらええやん」と不満を口にしたが、ナオの「一緒に行ってあげるから行こ」という言葉に負けたようで、渋々三条方面へナオと二人して歩き出した。二人を連れ戻すために。
さてここで簡単な計算を、
7(鴨川土手を歩いていた人数) − 2(三条へ引き返したペア) − 2(五條へ駆けて行ったペア) − 2(三条へ連れ戻しに行くことになったペア) = わたし
しばらくはみんなが戻ってくるものと信じ橋の下で待っていた。四条大橋の下で一人で待っていた。しかしどのペアも誰一人として戻ってくるようなそんな気配は微塵もなく無く、気がつけば階段を登り四条大橋の上で欄干に身体を預け、土手に等間隔で並ぶ影を見下ろしていた。どれくらいの時間をそこで過ごしたのか覚えていない。橋の上からだと戻ってきた奴らを見つけることができるはずだったのに。
その後の記憶はなく四条大橋を渡りこの頃はまだ地上を走っていた緑色の京阪電車に乗り自宅へと帰ったんだと思う。もちろん一人で。
仕組まれた人払いかそれとも偶然か。
確かに聞いていない。誰からも。言われていない。誰一人からも。
「待ってろ」「待ってて」「戻るから」「戻ってくるから」
そんな言葉は誰からも。
この日の一件は私に大きなトラウマになり、それ以来複数人で集まる飲み会などは男女比に関係なく偶数人でないと不安に苛まれ、楽しむことができなくなってしまった。それよりも誘われることが怖くなった。それともう一つ。
鴨川が嫌いになった。
時間は流れてまた学校が始まる。その部の連中とは文化祭の手伝いということだけの付き合い。文化祭が終わった後は特に部室に行くこともなくクラスも違うので、あの時のメンバーとはほとんど顔を合わす機会もないまま高校生活は終わった。仲の良かった岡山とはちょくちょく遊んでいたけれど、それ以外の奴とは挨拶程度でほとんど会話もないままに卒業した。
真相はどうなんだろう。聞いても真実を知ることができるとは思えないし、知ったところで何も変わらない。変えられない。
邪魔だったんだとは思っている。もっと早くに気がついて自ら帰宅することにしていれば、こんな思いすることはなかった。行きたくないと思った時に断っておくべきだった。女の子に誘われたことに舞い上がったんだ。バカだよね。今考えれば京都独特の社交辞令だったんだ。真に受けてついて行ったのが悪かったんだ。部外者だったんだ。手伝いを頼まれたのは岡山。彼が必要であって私はおまけ。手伝いのおまけが打ち上げの最後まで居ることが変だったんだ。なんで気がつかなかったんだろう。
つまんない思い出
アニメに出てきた景色、懐かしいなぁ。今度、聖地巡礼という名の帰省をしよう。楽しめると思う。なぜならそのアニメには京都市内がほとんど出てこない。だから聖地には鴨川が含まれていないから。
こんな感じの高校生活でした。
思い出話におつきあいいただき、有り難うございました。