六話
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
静かな空気、誰も、声なんか出していない。僕の目の前には、知らない人が病室のベットで目を閉じたまま寝ていた。この人は、月島さんのお母さんだと分かった。息はしているが目を開けない・・。
「おかあ・・さん・・。」いつも冷静で落ち着いている表情を見せている月島さんが、今日は・・違った。震えた声で、「お母さん」と呼び、表情が少しだけ、焦っている。
月島さんにも、こんな表情があるんだ・・とわかった。
「・・・・。あ・・かり・・?」月島さんのお母さんが目を覚ました。小声で名前を呼ぶ。「お母さん・・!」月島さんは、震えずにはっきりと言った。「あれ・・?朱莉・・どうして・・。」「どうしてって・・。心配だからだよ。」月島さんは、少し涙が出そうになったが・・決して涙を流さなかった。
「朱莉の隣の人・・・か・・彼氏?」「違いますよ。」「そう、違うよ。お母さん、この人はね。早瀬透。実はね、この人ただのクラスメイトであり、それから・・嘘が・・。」
「さっきまでの、月島さんは、どこ行った・・」
「・・・。この人は、嘘が・・」
「もう、やめてくれ・・!」
やっぱり、今日の月島さんは、いつも通りだ・・!少し、月島さんの表情が、読めた・・。
「あの時は、ごめんね・・朱莉・・。」
「・・・・・・。別に、いいよ。もう、そんなこと。」
月島さんの過去に何があったかは、しらない。けど、僕と同じで悲しい過去だったのでは・・?少しだけそう思ってしまう。
「朱莉、少しだけ2人にさせて。お母さんからのお願い。」
「・・・いいよ。でも、早瀬君は、嘘が・・」
「何回も、同じこと言わなくていいよっ・・!」
静かな病室にいるのは、僕と月島さんのお母さんだけだった。聞こえてくる音は、人が話す声ではない。ただ自然が静かに音を出していた。
「早瀬透君だっけ・・?」
何を言われるんだろうと・・少し緊張感が出てきた。
「朱莉のお母さんの話聞いてくれるかな?」
僕は、うなずいた。