ある少女の過去の話
「・・・・。」
「どうしたの?そんな硬い表情をして。ほら、お母さんに話を聞かせて。」
「悪くない・・もん・・。」
いつも、いつも、私・・お母さんに迷惑をかけていた。ごめんなさい・・ごめんなさい・・。いつも、いつも・・。
ごめんなさい、お母さん。
心の中でそう思い、心で、ただ謝ることしかできなかった。だって、私は、一つだけお母さんに、嘘をついてしまったのだから。
『嘘つきは泥棒の始まり』そんな言葉をよく聞く。で、思う。『やっぱり、嘘は悪いことなんだ』と。でも、大人は、簡単に嘘をついてしまう。そして、笑う。私にとって『嘘』とは何だろう・・?悪いことなのかな・・。でも、嘘の中には本当の言葉があるのでは・・?少しそう思ってしまう時があった。『嘘』に興味を持ってしまった小さい頃の私は、別の道へと進んでしまうことになるなんて・・
誰も、思わなかっただろう・・
自分自身も・・・。
ある日。
お母さんから、話があるといわれて、私は、お母さんがいるところへ向かった。何だろうと思った。その日は、私の誕生日だった。私が、お母さんのおなかの中から、生まれてきた日。もしかして、プレゼント?少しそう思ってしまい、舞い上がる。そして・・。
お父さんとお母さんが椅子に座っていた。表情は、なんだか悲しい表情だった。誰かが死んだのだろうか?それとも・・
「ごめんね、朱莉。お母さんたちね、『離婚』するの。」
り・・・こん・・?最初は、頭の中が真っ白になった。でも・・
『離婚』とは、結婚していた夫婦が分かれること。
「ごめんな、朱莉。でも、お父さんとお母さんは、自分を見直すためにするんだ。」
「ねぇ?朱莉、わかって・・」
そんなの・・わかるわけない・・。だって、お父さんとお母さんが離れたら・・私・・。
「そんなの、嫌だぁよ・・。」
涙があふれて、お父さんとお母さんの表情が見えなくなった。涙を拭いても拭いてもまだ・・流れる・・。
止まれ、止まれっ!そんなことを言っても、止まらない・・涙は・・。
そっか・・嘘とは・・。
「ねぇ、朱莉最後に記念写真撮ろう?」
「お、それいいな。」
人をだますものであり、悪いことなんだ・・。
「朱莉?」「朱莉、どうした?」
お母さんたち、笑ってる。こんなことでも、笑ってる。私は、本当に、泣いているのに・・
「さぁ、早く写真撮りましょ。」
一番大きな『嘘』をついているのは、お母さんたちの方だった。
「ううん、必要ない・・。」
「えっ?あか・・」
私は、写真を撮らずに、一人、階段をのぼり、自分の部屋へ戻った。『嘘』なんか、嫌い・・。
高校生の時。初めての転入!そして、友達作り・・頑張るしかないよね・・。そんな中、『嘘をつく人間』を見つけてしまったのだ。
名前は、『早瀬透』。