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魔法少女ユウカちゃんの秘密  作者: 一二三五六
第四章 ドキドキ!?魔法少女密着取材!
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第四章4 『このトキメキは誰のせい?』

 片瀬江ノ島駅を出て数分、俺たちは今回泊まる宿に辿り着いた。南国風の外観のホテルに俺は修学旅行に来たようなドキドキを感じていた。


「いやーとてもいい感じの宿ですね。明るいオレンジ色のユウカちゃんに似合っている感じがしますねー」

「そ、そうですか?あはは・・・」


 そう、これは江ノ島という見知らぬ地に来たワクワクとドキドキであって、決して片山さんのセリフの一つ一つにドキドキしているわけではない。なんかすごい褒めてくれるし風でスカートが捲れても目を背けたりと紳士的だったりするけど、絶対違う。


「身構えてないで行くよー」

「わ、わかってる!」


 若干笑いながら促してくるマーチを片山さんの見えない角度でど突きながら中に入る。

 明るい雰囲気のロビーに入ると、年配の男性がこちらに向けて会釈をする。


「ようこそお越しくださいました。当ホテルで館長を務めております小泉と申します」

「代表のマーチです、今日から3日間ですがよろしくお願いします」

「いえいえこちらこそ、今世間で話題になっている魔法少女様がお越しくださってくれるなんて夢にも思いませんでした」

「そう言ってくださって嬉しいです、ねぇユウカ」

「うん、今日からよろしくお願いします!」


 いつもの営業スマイルを見せると館長さんもにっこりと笑顔を返してくれた。こういうところはこの仕事の嬉しいところだ。


「・・・カメラ仕掛けておけば良かった」

「へ?」

「いえいえなんでもごさいません、ではお部屋の方にご案内致します」


 そう言って館長さんは俺たちを背に案内を始めた。あーうん、こういうのだよ、こういう反応がいつものなんだよ。不覚にもちょっと安心しちゃったよ。


「大丈夫ユウカちゃん?」

「え?」

「いや、何か館長さんから不穏なワードが聞こえてきたから」

「あー大丈夫ですよ、いつものことですから」

「・・・そうだね。でも例えそうだとしても、私は君が少し心配です」


 ちょ、だからなんでこの人は普通とは違う反応するんだよ!あとなんでそれでまたドキドキしてるんだ俺は!


「だ、大丈夫!大丈夫ですから!早く部屋に向かいましょう!」


 俺は片山さんから離れようと急いで館長さんの後ろについて行く。たまたまマーチの隣に並んだこともあり、俺の様子を見て体を屈めて耳打ちをしてくる。


「どうしたの夕斗?もしかしてそっち系に目覚めちゃった?」

「んなわけあるか!いつもと違う反応してくるから動揺してるだけだ!」

「ほんとにぃ?誰がどう見ても恋する乙女みたいな反応してるよぉ?」


 俺はマーチの横腹を掴んで捻る。自分の体で隠しているので後ろにいる片山さんには見えていないだろう。


「ッ!!!!?!?」

「次似たようなこと言ったら人のいないところでお仕置きしてやるからな?」

「い、イエスマム・・・!」


 溜息一つと共に手を離した俺は館長さんについて行きながら思考する。

 なんで俺は片山さんの言葉にドキドキしているんだ?普通ならあんなの愛華ちゃん以外通用しないはずだ。それがこの有様・・・認めたくはないが片山さんに特別な何かを感じている。

 そう考えただけでも寒気がするのに、そうなったら乙女のような反応をしてしまう。愛華ちゃんからSNSでメールが来ただけでベッドを転げ回る俺が言うのもなんだが、こんな反応を愛華ちゃん以外に対してすることになるとは考えもしなかった。まさかバクの仕業か?

 そんな思考をしていると、俺たちが宿泊する部屋に辿り着いた。館長さんが襖を開くと、中は畳張りの和室が広がっており、よくアニメなどで観る和室が目に飛び込んできた。


「それではごゆっくり。お客様たちは別室をご用意しております」

「そんなわけだから、荷物とか置いたらまた来るねー」


 館長さんと共に聖獣トリオと片山さんは別室に向けて歩き出した。

 姿が見えなくなったと同時に、俺は深い息を吐いた。


「疲れた、いろんな意味で疲れた」

「お疲れ様、ふふっ」

「先輩も変なフリしないでくださいよぉ!」

「いつものお返しよ!」

「あらあら、でも夕斗くん満更でもなさそうだったように見えますよ?」

「そんなわけないでしょ!俺男ですからね!」

「うふふっ、わかってますよ〜」


 本当にわかっているのだろうか。そんな疑問はさて置いて、俺たちはマーチたちが来るまで荷物を整理することにした。この3日間の服装はマーチに選んで買ってもらった。流石に以前みたいに蜜柑の服をお借りするわけにもいかないからな。


「先輩たちって服とかどうしてるんですか?」


 ふと疑問に思った俺は、同じく整理しているクレアたちに聞いた。


「私は通販で買ってるわ」

「あっ、専門のところで買いに行ってるとかじゃないんですね」

「自分用ならともかく、クレアのとなると話は別よ」

「まあそうですよね、モエナの服は若葉ちゃんの使ってるんですか?」

「そうですね〜、サイズもぴったりですし、両方用に買えちゃいますから〜」

「そういう時小学生の子がいる人はいいですよね」

「あら、夕斗くんは蜜柑ちゃんのをお借りしてないんですか?」

「蜜柑ちゃん?」

「俺の妹です。俺はあいつに嫌われてますからね、使ったらどうなるか・・・あとサイズも少し合いませんし」

「なるほど〜、確かに蜜柑ちゃんに比べたらバストサイズが大きいですからね〜」


 モエナの言葉にクレアは俺の胸を睨みつける。そんなに睨まれたら穴が開きそうです。


「うふふっ、牡丹ちゃんも大人になれば成長しますよ〜」

「なっ、別に気にしてません!」

「なら忌まわしそうに見ないでください」


 顔を赤くして反論するクレアに呆れていると、部屋の扉をコンコンと叩く音が聞こえた。軽く返事をしながら扉を開けると、案内を終えたマーチたちが待っていた。


「入るよー」

「お邪魔する」

「どうぞ、片山さんは?」

「まだ部屋じゃないか?俺たちが出てきた時は廊下にいなかったし」


 適当に返事をしてから扉を閉めて、鍵をかける。これからのことについて打ち合わせをするからな、片山さんに聞かれたらマズイ。


「さてと、江ノ島まで来たわけだけど。この後すぐに緑地広場へ向かうよ」

「そこでここの魔法少女たちと合流、訓練が始まる」

「もちろんこの訓練中もあのディレクターさんがいるから、気を抜いて正体がバレないように」

「まあ、向かうの魔法少女がいるって時点で気は抜けないけどね」

「あの〜、こちらの魔法少女さんたちはどんな子たちなんですか〜?」


 モエナの質問に対してペルソナが口を開いた。


「クレデリアスたちと同じくチームで活動している。確か“江ノ島クリオネア”だったか、ここ一週間の間に人気が上がり、江ノ島では有名なようだ」

「へぇ〜、なんだか私たちみたいですね〜」

「その割にはここら辺でそれっぽいのは見かけなかったけど」

「それっぽいの?」

「ほら、ユウカは商店街に等身大パネルとかポスターとかがあるじゃん?でもあの子たちは駅にもこのホテルにもなかったから、然程有名じゃないのかなーって」


 マーチの言う通り、片瀬江ノ島駅からここまでの道中で彼女たちの名前を見ることも聞くこともなかった。俺たちと同じく人気が出たというが、比べるほどでもないということだろうか?


「ここら辺がそうでも江ノ島に入れば見つかるんじゃない?どっちかというとホームはあそこなんだし」

「ルーチェの言う通りかもな、そこは向こうで確かめるしかない」

「あっ、そうだ。マーチ、ちょっと確かめたいことがあるんだけど」

「何?」

「今ここら辺にバクの反応があったりする?」

「バクの反応?」


 俺の頼みにマーチは懐から機械を取り出して操作を始めた。

 しばらくして、マーチは首を傾げた。


「いや、ないけど」

「じゃあ時間を遡って確認したりとかできる?」

「センサーはバクが出現した瞬間に反応するから、もし前に反応があるなら僕やペルソナたちが気づいてるよ」

「どこかでバクでも見たのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」


 言葉を濁す俺の反応を見て、マーチはニヤリと笑った。


「はっはぁーん?もしかして、自分が片山さんにときめいてるのはバクの仕業なんじゃないかって思ってる?」

「ッ!」

「ぷふぅ!残念でしたぁーバクの所為じゃありませんー!ただの女体化BL展開ですぅ!」

「ガァアアアアアア!!」

「ちょっと待って変身してアイアンクローは死んにぎゃああああああああああ!!!」


 羞恥心と屈辱諸々に駆られて勢いのままマーチの頭を砕きに行った。人間態のため手に収まっていないがそんなこと関係なく締め上げる。


「何をしているのだこやつらは」

「ていうか起動コード無しでどうやって変身したのよ」

「あらあら、本当に仲良しさんですね〜」

「これで仲良しとか本気で言ってる?」

「それより誰かバイ乙女止めてぇええええええええいやああああああああああ!!」

「誰がバイ乙女だぁああああああああ!!」


 もう少しで顔面の骨を砕けそうというところで扉からノックの音が聞こえた。俺は急いで変身を解いて変装状態に戻し、何事もなかったように座った。


「どうぞー」

「失礼します。すみません、少し局の方に電話していて・・・ってマーチさん?どうしたんですかその顔!」

「いえ、なんでもないですよ」

「え、いやしかし、顔に手の跡が・・・」

「マーチはよくこうなるんです、気にしないでください♪」

「そ、そうですか・・・その、どこまでお話しをしていましたでしょうか?」

「この後のことについて少しお話ししてました。ルーチェ、そろそろ行かないだよね?」

「えっ、あーそうだな、もうそろそろ行かないと遅れそうだな、うん」

「ということなので、さぁ行きましょう行きましょう!」

「あっ、は、はい」


 俺は片山さんの背中をグイグイ押して部屋を出て行った。

 そんな様子を見てなのか、クレアたちも困惑しながらも後を追った。

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