表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ユウカちゃんの秘密  作者: 一二三五六
第一章 魔法少女ユウカちゃんの災難
6/75

第一章5 『こんな魔法で大丈夫か?』

 光から解放された俺は、自分に起きている異変にすぐ気が付いた。なんていうか、こう――目線がいつもより低い。それに、下半身がスーっとする。自分の体を見てみると、俺はオレンジ色と白を基調にした可愛らしい服を着ていた。それも結構短いフリフリしたスカートを履いている。おまけに魔法の杖まで持ってるし。


「な、なんじゃこりゃあああああああああああああ!」

「おー、なかなか可愛らしくなったじゃないか」

「えっ、嘘だろ?マジで女の子になったの!?」


 いつもより声が高いし、まさか本当に……?いや、でもまだそうと決まったってわけじゃない。声は高いしこんな恰好してるけど、身長が縮んだだけで変わってない可能性もある。そして、それを確かめる方法はいくつかある、けど……


「少年、普段いくらまじまじと見れないからって自分の、それも子供のおっぱいを見つめるのはちょっと……」

「違うわ!変な誤解するな!」


 とはいえ、これからすることはそれより酷いんだけど。

 俺は恐る恐る自分の胸に手を置いた――なんというか柔らかい。揉めるくらいの大きさがあるのも驚きだ。そして次に、スカートをそっと捲った。純白の布ともちもちしてそうな太ももが顔を出している。俺は震える手をゆっくり股の下へと持っていく、正直変身してから股間に違和感があるのだが、それでも慎重に太ももの間に手を入れた…………

 触った感触に俺は思わず膝を突き、両手を地につけた。


「今の行動、とても卑猥に見えたよ少年」

「うるさい、ちょっと落ち込んでるから黙ってろ……」


 なんてことだ、本当に女の子になってる。なってしまっている。信じられないし信じたくないけど――触っちまった感触が忘れられない!女の子のアソコってああなってるのな、初めて知ったよ!


「さぁ!魔法少女になったことだし、バクを倒そう!」

「倒すってお前、どうやって……」

「そんなの魔法に決まってるじゃないか!君は魔法少女だよ魔・法・少・女!」

 

 うぜぇ、今にもこの杖でゴルフみたいに殴り飛ばしてやりたい。だが、今は愛華ちゃんを助けるのが先決だ。ここは我慢しよう。


「で?その魔法はどうやったら使えるんですか?」

「アフターグローが君と契約した時に、君の性格や深層心理などにアクセスして、それに因んだ魔法を、自身の使い方と一緒に君の脳内にインプットしている。だから何をどうすれば魔法を使えるかは、もうすでにわかっているんだ」


 そんな漫画のご都合主義みたいなことを今朝ぶっ倒れた時にされていたのか。でも、言われてみれば確かに、俺はこいつの使い方を何故だか知っている。まるで小さい頃に教わったことみたいに、頭が知っている。でもついさっきまでは知らなかったよな?でも――あれ、知ってたよな?でもこいつと会ったのは今朝が初めてで……アフターグローのことや魔法のことは昔から……


「うっ」

「ちょっ、何吐きそうになってるの!?」

「悪い、知識と記憶の矛盾に気持ち悪くなって……」

「植え付けられた知識で吐きそうになる魔法少女なんて初めてだよ」


 ダメだ、余計なこと考えない方がいい。記憶は記憶、知識は知識、変に結びつけたりしちゃいけない。吐き気をなんとか抑え込み、改めてバクを見据える。やっぱりデカい、こんなのと今から戦うのか……でも、戦えるのは俺だけだ。それに愛華ちゃんも助けないと。


「よし、じゃあ行ってくる!」

「ガンバレー!」


 俺は中庭に飛び出して力強く地面を蹴った。それだけで、俺の体は五〇メートルもあるバクを軽く超えるほど飛んだ。これもアフターグローに備わっている飛行機能のおかげだ。上空から見下ろすバクもやはり迫力がある、下からではわからなかったが、朝顔の花は三つあり、それぞれ色や向いている方向が違う。きっとこれが顔の役割をしているのだろう。校舎も所々破壊されていて、近くに瓦礫の山が見える。奴に捕まった女子はざっと二〇人ほど、そのほとんどが直視できないような姿になっている。もちろん愛華ちゃんも。


「待ってて立花さん、今助けるから」


 杖に姿を変えたアフターグローを両手に持ち替えて、狙いを定める。


「いくぞ、アフターグロー!」

「リョウカイシマシタ」

「お前喋れるんだな、まあ知ってるけど」

 

 一応ツッコミ入れておかないとな、それが当たり前だと思ってしまう。

 さて、気を取り直して俺は意識を杖と頭に集中させる。魔法は言ってしまえば想像の具現化、自分の頭でこうしようと考えたことを現実にする力だ。だから俺は想像する、こいつを倒して愛華ちゃんを助けるイメージを!

 俺を中心にオレンジ色の光で描かれた記号やマークが浮かび上がっていく。そして、よくアニメなどで見るような魔法陣となっていく。準備はできた、俺は発動のトリガーとなる魔法の名前を唱えた。


「プラントマター・フュージョニウム!」


 それと同時にバクと校舎の瓦礫の下に魔法陣が現れ、上に向かって回転しながら二つに分裂した。上下に魔法陣で挟まれた瓦礫は内側に吸い込まれるようになくなり、バクの体が光を放ち始めた。朝顔のシルエットが徐々に角張っていく、そして光が弾けように消えると、そこには植物とコンクリートや鉄の中間のような朝顔に姿を変えていた。


「…………あれ?」


 どういうことだ?魔法は成功したみたいだけど、なんかダメージを受けているようには見えない。むしろパワーアップしている気がするんだけど。


『これはまた、珍しい魔法を使うね君は』


 離れているはずのマーチの声が耳元で聞こえてくる。アフターグローには持っているだけで無線として機能するシステムがあるみたいだけど、これはそれの影響か。


「どういうことだよ」

『君が使ったのは融合魔法と言って複数のものを一つにする魔法で、習得している人がほとんどいないとても珍しい魔法なんだ』

「そんなマイナーな魔法なのか、ていうかアフターグローは俺の性格とかを読み取って魔法をインプットしたんだろ?俺に融合要素なんてあったか……」

『僕も気になって調べてみたんだけど、どうやら君が昨夜見た愛華ちゃんの夢に反応したようだ。どうせあの子と一つになりたいとか思ってたんだろう?』

「違うから!昨日は立花さんとデートする夢を見ただけだから!」


 確かに恋人同士になればそういうこともするだろうけど、昨日は純粋にデートするだけの夢だったから!アフターグローも変なとこから魔法に繋げてくるな!


「いやそれよりも、何かと何かを融合させる魔法とか、なんて使いにくい魔法だ。こんなので勝てるのか?」

『むしろ自分で難易度上げてる件について』

「わかってるよそんなこ――うわぁ!」


 俺は会話の途中で襲い掛かってきたコンクリートのツタを紙一重で回避する。だが攻撃は一度だけじゃない、続けざまに何本ものツタが俺に向かって飛んでくる。


「なんで突然襲ってきたんだ!?」

『それはほら、君が美少女だからだよ。このバクは触手攻めにされている女の子を見ることが目的だし、的が目の前で浮いてたらそりゃ捕まえようとするに決まってる』


 マーチの言葉に俺は悪寒が走った。もし、このままこのツタに捕まったら、俺もあんな目に合うのか!嫌だ、それだけは絶対に嫌だ!何が悲しくて怪物にいやらしいことをされなくちゃならないんだ!


「とにかくこいつを倒さないと。融合、融合……何を融合させればアイツを倒せる!?」


 止まらないツタの攻撃を飛行しながら回避し、自分の周りを見渡す。考えろ俺、アイツは今植物であって植物じゃない。きっと燃やそうとしてもコンクリートや鉄で出来ているから引火はしない。それに愛華ちゃんたちも捕まってる、それも考慮して戦わないと。でも、どこを見てもロクなものがない。校舎にプールに体育館に、校庭の砂とか木や草は使いようがない。この中にあるものじゃアイツを倒すことなんて……


「待てよ、今のアイツを倒せないなら、もう一度変えればいいだ!」


 俺はツタが届かない高さまで浮上し、そこでもう一度魔法陣を展開する。俺の融合魔法は二つの性質や形を一つにする、それをどう融合させるかは俺自身で決めることもできる。さっきは何もしなかった所為で全部ランダムになったけど、今度は違う。それにもう一つわかったのは、対象となったものには融合素材と融合元が存在するということ。


「ウォータープラント・フュージョニウム!」


 魔法名を唱えてバクと屋上にあるプールの緑色になっている水を選択する。上下に分離した魔法陣に挟まれたバクは、内側に吸い込まれるようにして姿を消した。融合素材となったものは吸い込まれるように消えてなくなり、融合元となったものがある場所で融合する。それによって、対象外である捕まっていた女子たちはバクから解放される。だが、ツタに捕まっていた人たちは空中で拘束されていた。よって空中で解放されてしまう。

 それももちろん見越している。


「ダブルプラント・フュージョニウム!」


 次に融合させるのは、中庭の芝生と木々。魔法によって素材にした木の葉をそのままに、芝生程の大きさの木に変える。それによって中庭は葉っぱのクッションとなった。融合に成功した時には地面に激突するまで一メートルなかったから正直ヒヤッとしたけど、なんとか成功した。後はアイツを倒すだけだ!

 俺は屋上のプールサイドに降り立つと、バクはプールの中から現れた。俺の魔法でプールの水と融合し、その結果全身が水分で出来た巨大な朝顔になっていた。こうなれば、もうこっちのものだ。


「さて、これでトドメだ!」


 杖を構えて魔法を準備する俺に向けて、バクは水となったツタの束を一斉に振り下ろした。だが残念、俺の方が速かった。


「サンダーロッド・フュージョニウム!」


 プールを照らすライトと自分の持っている杖に魔法陣が現れる。素材にする魔法陣をライトに選んだが、俺がほしいのはライトじゃない。そのエネルギーとなる電力だ。俺は迫ってくる水の塊に向かって、電撃の杖となったアフターグローを叩きつける。


「くらえ、ライトニングアタック!」


 杖がバクに接触した瞬間、爆発するかのように放電が起きた。あんなにも巨大だった水の朝顔は、一瞬にして弾け飛び、蒸発した。電撃を全て発散して煙を上げている杖を軽く振り――ちょっとカッコつけてみる。まさかあんなに上手くいくとは思わなかったから、今すごい満足感に浸っている。これで幼女の姿じゃなければなおいいんだけど。


「オツカレサマデス、マスター」

「アフターグローもお疲れ、助かったよ」

「ドウイタシマシテ」

「さて、愛華ちゃんは無事だろうか、あの時すごいギリギリだったから心配なんだよね」


 俺が中庭に戻ろうとした時、プールの方でキラリと光る何かを見つけた。


「ん、なんだあれ?」

 

 水がなくなったプールの底には、ウチの制服を着た男子生徒と金平糖のようなものが落ちていた。この男がバクを生んだ奴だってことはなんとなくわかるけど、これはなんだ?発光してるし、これもバクに関係しているのか?


「ってそうだ、愛華ちゃんだ愛華ちゃん!」


 光る金平糖のような何かをとりあえず懐に入れて、屋上から中庭へと降りた。魔法の効果が切れたのか、芝生に戻っている中庭には捕まっていた女子生徒たちが助かった喜びを分かち合いながら乱れた服を直していた。その中にも愛華ちゃんがいた。良かった、どこも怪我してないみたいだ。俺が安心して見ていると、それに気づいた愛華ちゃんがこっちに向かって走ってきて――


「ありがとう!魔法少女さん!」

「!!?」


 な、何が起きてるんだ!?あの愛華ちゃんが、俺に「ありがとう!」って言いながら抱き着いてきた、だと!?しかも中途半端に身長小さいから胸が顔に……!う、嬉しい、すごい嬉しい!――でも、全身が熱くなって頭クラクラしてきた、俺には刺激が強すぎる!

 愛華ちゃんの声で他の女子生徒たちも俺のことに気がついた。そして、同じようにお礼を言いながら俺に触れてくる。


「ありがとう、助かったわ!」

「なんで宙に浮いてるのあの子?」

「しかも超可愛いんですけど!」

「やだー、赤くなってるー可愛い!」

「ねぇ、名前なんていうのー?」

「えと、あの、その……!」


 あ、あの皆さん?確かに嬉しいのはわかりますし色々聞きたいことがあるのはわかるんですけど――せ、せめて、ボタン留めたりスカート履いたりしてからお願いします!さっきから下着がチラホラ見えたり触れたりして………!うわああああダメだ!ここに居ては俺の精神が持たない!行こう、もうどこでもいいから行こう!


「そそそそそれじゃあ皆さん、お元気でええええええええ!」


 俺は女体の群れから抜け出して、無我夢中で学校から離れた。途中でマーチの声が無線で聞こえてきたが、それすら耳に入っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ