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魔法少女ユウカちゃんの秘密  作者: 一二三五六
第一章 魔法少女ユウカちゃんの災難
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第一章9 『俺、みんなの嫁になる』

「そういえば今日二時間目始まる前に来たけど何かあったの?」

「えーと、昨日積みゲー消費してたら夜が明けてて、そのまま寝落ちしたら一時間目終わってたんだよ」

「ふーん、ちなみに何?エロゲー?」

「いやまず持ってないから、まだ俺一五だし」

「はぁ、これだから童貞ムッツリは」

「か、関係ないだろうそれは!」


 扇風機バクとの戦闘を終え、学校まで逃げて来てから数時間。俺はいつものように教室の隅で買って来たパンを食べていた。昨日の昼飯は馬場が勿体ないからということで食べていた。律儀に弁当箱も洗ってくれていたのは少し感動だった。


「それはそれとして、安西は見たか?」

「何を?」

「昨日ウチに来たっていう魔法少女だよ!俺急いで逃げてたから見てないんだよな~」


 馬場の話に俺は食事の手を止めた。そういえば昨日、俺はここで魔法少女になったんだよな。誰かに見られていたかもしれないっていうのに、昨日はそんなことすら考えてなかったな。これからは気を付けよう。


「しかも怪物に校舎壊されたはずなのに、全て元通りになってるしさ!これも魔法なのかもな!」


 確かマーチの話じゃ昨夜の内に魔法で直したらしい、そこだけは流石聖獣だ。やっぱり魔法って便利なんだな――俺のはどうだかイマイチわからないけど。


「で?安西は見たのか?」

「見てないよ、俺もすぐに逃げたし」

「チッ、使えない男だな」

「お前が言うな」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」


 俺と馬場が話している傍らで、オタク仲間たちが歓声を上げ始めた。それに加えて何やら他の声も聞こえてくる。何かアニメでも見てるのか?


「どうしたんだ?」

「ほらほら二人も、これを見てみ!」


 こっちを見ずに手招きをする仲間の元に俺と馬場は近づいた。机の上にスマートフォンを置いて何かを見ているようだったので、俺も一緒になって覗き込んでみた。そこには――、


『――宜しければ名前を教えていただけませんか?』

『ゆ、ゆう、か――ユウカです!』

『ユウカちゃんか、とても可愛らしい名前ですね』

『あ、ありがとうございます――』


 インタビューを受けている俺の姿が映っていた。


「ふおおお!?」

「ちょ、何その叫び声」

「どうかした?」

「えっ、あっいや別に、この子ってもしかして……」

「そう!昨日この学校で怪物と戦ってた魔法少女ちゃんだよ!」


 今朝戦った後に色々取材されていた時の映像が、もうニュースになっているとは、恐るべしジャーナリズム……それにしても、俺が魔法少女になった時の姿を自分で見るのは初めてかもしれない。髪の毛の色はオレンジで、髪型はツーサイドアップ。身長は俺が思っていたよりも小さくて、子供の癖に少し胸がある。そして――か、可愛い。自分でいうのもなんだが、俺ってこんな可愛いのか……


「はぁ~、マジ可愛いユウカたん」

「たん!?」

「それな。こんな天使が現実世界にいるとは思わなかった」

「天使!?」

「こんな可愛い子が妹だったらな~」


 きっと今の俺は顔を青くして引きつっているだろう。これがオタクから可愛いとか結婚してくれとか言われているアイドルの気持ちなのか?いや、そうじゃないことを信じよう。それよりも、普段見知っている連中にそういう対象として見られていることがここまで気分が悪いとは、気持ち悪いなんてレベルじゃない!


「そ、そんなに、いい……?」

「は?何言ってん安西?死にたいの?」


 すっげぇ睨まれた。なんなのこいつら超怖いんだけど。


「だ、だってほら、アイドルとかじゃないんだし――」

「そんなことはどうでもいいんだよ可愛ければ!」

「そうだそうだ!それに見ろこれ!」


 オタク仲間の一人が突き出してきたスマートフォンを受け取り見てみる。そこにはネット掲示板が開かれており、そのタイトルは……


「『三次元に魔法少女爆誕!こんな可愛いくていいんですか?』『昨日現れた魔法少女ちゃんが美幼女だったんだけどwwww』『ユウカちゃんとかいう魔法少女www』……」


 ネットでもめちゃくちゃ人気じゃねぇか俺。この話題だけで一体いくつスレッドがあるんだよ、昨日今日の出来事のはずなんだけど。やっぱりインターネットは恐ろしい。だけどそれ以上に――この中身を見るのが恐ろしい!鳥肌が止まらないことが目に見えている!


「わ、悪い、俺が間違ってた……」

「分かればいいんだよ」

「確か妹に嫌われてるって前言ってたよな?多分それの所為なんだよ、ほらお前も、ユウカちゃんを見て癒されなさい」


 これ自分自身だから癒すも何もないんだよ。


「えーと、みんなはこのユ、ユウカちゃんのどこが好きなんだ?」

「やっぱ顔でしょ!頬っぺたぷにぷにしたい!」

「子供なのにおっぱいが大きいところ!」

「素直で一生懸命なところも好感が持てる!マジ妹にしたい、そして毎日パンツ覗きたい!」

「恥ずかしそうに見せパンだって答えてたのにゾクゾクした」


 ヤバイ、眩暈がしてきた、あと吐き気も。こういう感想はネットとかでよく見るけど、実際に目の前で言われると倒れそうになる。ていうか本当に体調悪くなってきた。


「そ、そっかなるほど……俺ちょっとトイレ行ってくるわ」


 ゲッソリした顔でその場を離れ、覚束ない足取りで教室の外を目指した。それにしても、まさかここまで人気が出るなんて、やっぱり魔法少女だからオタク受けがいいのか?だとしたら一般的な人たちからはどう捉えられてるんだろう……別に人気がなかったらどうしようとか思ってないけど、ただ気になるだけで――、


「わっ」

「おっ」


 考え事をしながら歩いていた所為か、教室の出入口で誰かとぶつかってしまった。昨日もこんなことがあった気がする。


「ごめんよそ見――」

「あっ、ううん!気にしなくていいよ、私もよそ見してたから」


 ああああ愛華ちゃん!?ていうことは俺、愛華ちゃんと一瞬だけど接触して――ってそうじゃない!ちゃんと謝らないと!


「ごごごごめんなさい!ど、どこか、怪我とかは……」

「大丈夫だって、もしかして安西君って心配性?」

「そそそそういうわけじゃないけど、ごめん」

「ふふっ、謝り過ぎだよ」


 か、可愛い……クスクス笑うところなんて天使じゃないか!そうだよ、俺なんかじゃなくてこういうのを天使っていうんだよ!はぁ~、癒しだわマジで。


「あっそうだ!安西君はこの子知ってる?」


 愛華ちゃんは持っていたスマートフォンを俺に見せてきた。そこに映っていたのは、あろうことか俺だった……えっ、ちょっと待って!なんで愛華ちゃんが俺の画像を!?いや俺って言ってもユウカだけど!


「う、うんまぁ一応――今ネットじゃすごい話題になってるみたい」

「そうなんだ!いいよねユウカちゃん、私この子好きなんだ~」

「えっ」


 すすすすすすすす好き!?好きって言った今!?愛華ちゃんが?俺のことを?うおおおおおおおおおおおお!!嬉しいいいいいいいいいいいいいい!!けど超複雑だあああああああああ!!


「そそそそそうなんだ!でも、なんで?」

「いやー実は昨日朝顔の怪物に襲われちゃってね?そこをあの子が助けてくれたの!颯爽と現れて私たちを怪物から解放して、怪我しないようにクッションまで作ってくれて、すっごくかっこよかったんだよ!」


 た、耐えろ、耐えるんだ俺……今ここでニヤニヤしたらただの気持ち悪い奴だ。


「へ、へぇー、小さいのにすごいね」

「だよねー……あっ、ごめんね!どこか行こうとしてたんだよね?」

「だ、大丈夫大丈夫!そんな急ぐことじゃないから!」

「そっか、それじゃあね」

「う、うん……」


 明るくにこやかに手を振ってくれた愛華ちゃんは教室に入って自分の席へ。俺はその様子を見ることなく廊下に出た。そして、男子トイレまで全力で走った。歩く生徒や注意してくる先生を掻い潜り、トイレのドアを開けて個室のカギを閉めた。

 そして――


「あああああああああああああああああああああああああああ!!!嬉しいいいいいいいいいいいいいけど複雑だああああああああああああああああああ!!!でもやっぱり嬉しいぜヒャッホオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 俺は腹の底から歓喜の声を上げた。

 何が嬉しいって――愛華ちゃんに褒められたのが何より嬉しい!しかも愛華ちゃんとあんなに長く喋ったのも初めてだ!まあ約二、三分だったけど、今までの挨拶程度よりは断然マシだ!

 ふう、一先ず落ち着こう。誰もいなかったとはいえ流石に個室で絶叫はやり過ぎた。ここは少し時間を置いてからトイレを出よう、もしかしたら外に誰かいたかもしれないしな。そんなことを考えていた矢先、トイレに誰かが入ってきた。よかった、本当に誰かいたみたいだ。


「あっ、そういえば聞いたかあの話?」

「魔法少女の話?可愛いよなあの子」

「いや、まあそれも確かなんだけど、バスケ部のマネージャーの話だよ」

「あー、なんか変質者に襲われたってやつか」


 変質者?そんなのがこの学校の近くにいるのか?俺は個室のドアに貼り付いて耳を澄ませる。


「そうそう、なんでも体中を粘液まみれにされたとか」

「うわ、何それエロい」

「しかも顔がカエルみたいだったらしい」

「流石にそれは見間違いだろ」

「いやマジなんだって、襲われたバレー部の先輩が言ってたんだよ」


 カエルみたいな顔……?まさかバクの仕業か?でもそんな話マーチから聞いてないし――家に帰ったら聞いてみるか。俺は今聞いた話を頭の片隅に追いやりながら、トイレの個室を出た。

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