男
男が立っていた。ここは日本。そのどこか。
男は70を過ぎた老人だった。交差点で、信号を待っていた。
老人は、黒いコートをきて、ただただそこに、存在した。
周りの人々は、皆スマートフォンを触っていた。
人々はまるで波のようにぶつかり合い、またそれが当たり前のように感じていた。
車に乗る時も、歩くときも、恋人とデートするときですら、スマートフォンを利用していた。
誰かの肩が、老人に、当たった。
老人の軽い体は、あっさりと車道に飛び出し、車に引かれた。
突飛ばした"誰かさん"は、
「遅れちまったな。」
苦笑いをして、急かす恋人のためにいそいだ。
誰かさんは肩があたったことすら気付いていなかった。
これは、偶然このときに国会で話し合われていたことである。
「総理! 貴方はなにもわかっていない! これからは、老人がスマートフォンをつかえるようにしなくてはならない! 日本国民全員がスマートフォンを持てば、孤独に苛まれることもなく、幸せでいられるんだ!」
調査報告 所長殿
今回死亡した老人はスマートフォンに殺された可能性が高い。
突き飛ばしたものは特定済みですが、車で引き殺したものは特定出来ず。
恐らく自覚あり、逃走した可能性も。
遺族に伝えるのはもう少しあとにしていただきたい。
別に、筆者はスマートフォンきらいじゃありません。
ちょっと気を付けてほしいです。
別の作品として、続編書くかもしれません。
調査報告はそのためのものなので、気にしなくて良いですよ。