登れ1%の登竜門
ここは、S県のとある高校…
その学校の吹奏楽部には素晴らしい成績がある。
それは、『開校五年目で三年連続で全日本吹奏楽コンクール金賞』まさしくこれは奇跡以外何者でもないが実は奇跡ではなく、実績なのだ。
僕が通うS県立中津川高校通称『中高』(なかこう)公立校ではまずお目にかかることのない全寮制の学校だ。
この学校に通い始めて早三ヶ月…
今いる部屋には三年生・六十人。二年生・零人。一年生・三人。計六十三人プラス教員一人
ここは公立校ではまずない吹奏楽部専用の棟にある合奏室だ。
この学校はつくづく異常だと思う。そして、五年前の十月の最後の日曜日…
この日、僕は東京都S区にあるホールにやって来た。
今日、これから全日本吹奏楽コンクール高校の部があるのだ。
まだ小学生だが親につられて見に来たのだ。
この日、始めて吹奏楽の楽しさを知った。
このとき見た中で一番感動したのが『中高』だった。
その後聞いたら当時創部五年目だったらしい。
なぜそんな強いか理解できなかった。
それから五年…
今僕は、『中高』の中で一番有名になってしまった。
なぜなら、吹奏楽部に入ったその日にAグループに入れられてしまった。
Aグループとは、コンクールのA部門の代表つまり、全日本吹奏楽コンクールに出るグループに入部初日に入れられてしまったということなのだ。
「暑っち〜〜」
「ほら、結弦しっかりしな さい」
僕は、伊奈 結弦。この中津川高校の一年生なんだけど…
「何やってんの、早くあわ せるよ。───さてはあ の子でしょう。」
こいつは柏 菜穂子、幼なじみで、同い年の十五歳。金管楽器が得意で、中学も吹奏楽を一緒にやっていた仲。
あの子とは、埼栄 沙羅パーカッション担当の一年生の女の子で、必要最低限の事しか話さない。
この三人の一年生は全員Aグループに入っている。