4.突き付けられた現実
私と彼は、つかず離れずの関係を保ちながら、季節は夏へと移って行った。
体も少し体重が増え、満員電車での通勤も徐々にきつくなっていく。
駅までバスで20分、更に電車で30分の立ちっぱなしでの通勤に加え、夏の暑さは、気が付かない内に、私の体を蝕んでいった。
その頃になると、会社の同僚の視線のなかに、物言いたげなものが混じるようになった。
鋭い人は、どうやら気が付きはじめたらしく、徐々に私の耳にも噂が届くようになっていた。
そして、7月も終わりになる頃、親友の同僚からもたらされた決定的な言葉。
「相川ちゃん、妊娠してるんじゃないかって、噂になってるよ…どうするの?」
ついに来たかと思った。
そろそろ、上司に報告しなければならないかも知れない。
それは、いずれ通らなければならない、決して避けられない道。
この子を育てる為には、仕事を無くすわけにはいかなかったから。
お腹の中の子は、分かっていたのだろう。そんな私の不安定な感情を。
その日、明日は報告しなければと思いながら、シャワーを浴びるために服を脱いだ私の目に飛び込んだのは。
下着に着いた、多量の出血の跡だった…。