23.明日へ、未来へ
光陰矢の如しとはよく言ったもので、モコと過ごす日々はあっという間に過ぎて行った。
モコは小学六年生になった。
ついこの間入学式をやったばかりのような気がするが、それだけ駆け足で生きて来たという事だろう。
その間には、辛い事、苦しい事もあったが、それよりも楽しい事がずっと多かった気がする。
彼女は私の前では顔に出さないが、普通の子よりもずっと我慢や苦労をさせて来たと思う。
一日中外で仕事をしている為、行ってらっしゃいと送り出すことも出来ず、お帰りなさいと迎えることも出来ない。
手の込んだ夕食を作ることも出来ず、普通の母親らしい事は何も出来ずに来た。
そんな駄目な母親でも、彼女は笑って言ってくれる。
『ママ、大好き!』――――と。
後ろ指をさされ、陰口をたたかれた事は数知れない。
けれども、私は彼女を生んだ事を一度も後悔したことはない。
モコが小学校低学年の頃に、言ってくれた言葉がある。
人の死について徐々に分かりはじめた頃、親しい人が亡くなり、その事について会話していた時だった。
『いつか死んでも、私、また、ママから産まれたい』
涙が止まらなかった。
この言葉だけで、生きていける。そう思った。
これからも、私たちの生活は続いていく。
また思いがけない出来事が沢山起き、思い出も積み重なっていくだろう。
二人で笑いあって生きていけたらいいと、ただ思う。
まだ真っ白な未来へのノートを前に、今はこの辺でペンを置こうと思う。
長い間お付き合い頂きまして、ありがとうございました。
何か皆様の心の片隅に残すことが出来ましたら、嬉しいです。




