22.高き壁
退職する前に、新しい職場を探さなければならない私の前に、思いもかけない壁が立ちはだかった。
税金の『寡婦控除』制度である。
年末調整の時に書く用紙を見ていただくと分かるのだが、次に当てはまる人は、税金の控除が受けられるのである。
(1) 夫と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や控除対象扶養親族となっていない人に限られます。
(2) 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などのは要件はありません。
要するに、夫と離婚や死別、もしくは生死不明な場合は、税金の控除が受けられるが、未婚の母の場合は当てはまらないのである。
それがどういう事かというと、サラリーマンである限り、この寡婦控除制度がある為に、自分が未婚で子供を生んだ事を会社に申告しなければならないのだ。
寡婦控除を受けられない私は、その旨を面接の時に告げた。
すると、面接官の視線が見る見る変わった。蔑みの眼差しに。
結婚もせずに子供を生んだ、ふしだらな女―――と。
ある面接官からは、あからさまに尋ねられた。
『父親はどうしたのですか、不倫ですか?』
仕事の能力とは全く関係の無い事で、なぜこんな屈辱を受けなければならないのか。
ただでさえ、小さな子供のいる母親は、採用されにくい。
なのに……。
未婚の母親は、国民を守るべき法によって差別されているのだ……。
とても、仕事を選べる状態などではなかった。
何社も何社も面接を受け、やっと決まった職場は、主要交通機関の無い、自転車で片道四十分の職場だった。