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17.告白

怒濤の出産の翌朝、三人部屋の病室から少し離れた場所にある新生児室へと向かった。まだ早朝だったせいか、他に人影はなかった。新生児室横にある看護士さんの部屋に声をかけ入室した。

横に細長い新生児用ベッドには、十人程の産まれたばかりの赤ちゃん達が等間隔に寝かされていた。

その中でも、頭一つ分は大きな赤ちゃんが、私の娘だった。

五体満足で産んであげられた事にほっとしたものの、胸中は不安でいっぱいだった。

本当なら、喜びに満ちあふれている筈なのに…。

温かく柔らかい我が子を抱き上げて、そっと頬を合わせた。

不甲斐ない自分に、思わず涙が出た。



午後になって、彼が姉に付き添われてやってきた。

昨夜のうちに、産まれた事を連絡しておいたからだ。本当は、連絡するつもりはなかったのだが、彼にも知る権利があるだろうと思い直したのだ。

顔も見たくなかった。出来れば、二度と会いたくなかった。

出産の前、最後に会った時に言われた言葉が、彼の全てを物語っていたから。



『シングルマザーのサイトとかもあるし、そこで仲間を見つければいいよ。相談にも乗ってくれるしさ』



案の定、彼は私の腕の中にいる自分の子を見ても、何の感慨も沸かないようだった。

彼のお姉さんと話し、認知はしてもらう事を約束した。

彼のご両親は、遺伝子検査をすると騒いでいたらしいが、お姉さんが止めてくれたらしい。

帰りぎわに、お姉さんが謝ってくれた事が救いだった。



やがて夜になり、私は真っ暗な受付のそばにあるピンク色の公衆電話の前で、十円玉を握り締めていた。

ゆっくりと受話器を取り上げ、ダイヤルを回した。

ワンコール、ツーコール…


『もしもし?』



『…お母さん、私、赤ちゃんを産んだの』


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