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11.決別
覚悟していた筈だった。
いつかこういう時が来るのは解っていた筈だった。
何も言わない彼が、子供を望んでいない事。それを解っていてなお、生むと決めたのは、私。
お前が勝手に決めたんだろうと言われてしまえば、勿論そうだとしか言えない。確かに、傍から見ても、私の決断は身勝手なのだろうと思う。
それでも、頭では納得していても、込み上げる感情は抑える事が出来なかった。
真冬の暗い静寂に包まれた、ストーブの消えた冷えきったアパートの部屋で、ただ一人。
その日、その時、ただ一度だけ。
私は、布団の中で蹲り、お腹を両腕で抱き締めて号泣した。
ごめんね、ごめんね、今だけはママを許してね。もう、二度と泣かないから。
やがて訪れる出産への不安を抱え、私は新年を迎えようとしていた。