表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

可愛げがないと言われた女騎士団長は、無自覚わんこ副団長に溺愛される

掲載日:2026/06/29

王国騎士団団長、ナターシャ・ヴァレンティア。


 長い銀髪を後ろで束ね、鋭い紅玉色の瞳を持つ彼女は、騎士達の憧れだった。


 剣の腕は超一流。


 訓練では誰よりも厳しく、自分自身にも一切の妥協を許さない。


 そんな彼女はいつしか『鉄血の女団長』と呼ばれるようになった。


 ――だが。


「うぅ……っ」


 そんな彼女が、泣いていた。


 しかも騎士団の裏庭で。


 号泣である。


「団長!?」


 慌てて駆け寄った俺――副団長のレオンは目を丸くした。


 ナターシャ団長は慌てて涙を拭う。


「み、見るな……」


「いや無理ですよ! 何があったんですか!?」


 しばらく沈黙したあと。


 彼女は消え入りそうな声で言った。


「婚約者に……浮気された……」


「は?」


「可愛げのない女は嫌なんだそうだ」


 思考が止まった。


 いや、意味が分からない。


「私のような女より、守ってあげたくなる女性の方が良いらしい」


 肩を震わせながらそう言う。


 その姿は普段の凛々しい団長とは別人だった。


 そして俺は思った。


 可愛いじゃないですか。


 めちゃくちゃ。


---


 それからというもの。


 俺は何かと団長に声を掛けるようになった。


「団長、今日も綺麗ですね」


「なっ!?」


「その髪飾り似合ってます」


「……そ、そうか」


「笑うと可愛いですよ」


「やめろ!」


 顔を真っ赤にして怒る。


 でも耳まで赤い。


 可愛い。


 ものすごく可愛い。


 本人だけが気付いていない。


---


「レオン」


 ある夜。


 執務室で二人きりになった時だった。


「なんです?」


「お前は……本当に私を可愛いと思っているのか」


 真剣な顔だった。


 だから俺も真面目に答える。


「もちろんです」


「お世辞ではなく?」


「本気です」


 即答した。


 ナターシャは目を見開く。


「団長は強いし格好いいです。でも、頑張り屋で不器用で、実は優しいでしょう?」


「……」


「泣き虫ですし」


「それは忘れろ」


「無理です」


 そう言うと、彼女は少しだけ笑った。


 いつもの騎士団長ではない。


 一人の女性としての笑顔だった。


 その瞬間。


 俺は自覚した。


 ああ。


 俺、この人のことが好きなんだ。


---


 数か月後。


 王都の夜景が見えるテラスで。


「団長」


「なんだ」


「俺、団長のことが好きです」


 ナターシャが固まった。


「ずっと好きでした」


「……私は可愛くないぞ」


「可愛いですよ」


「強いぞ」


「知ってます」


「年上だ」


「それが?」


 しばらく沈黙。


 そして。


 彼女は観念したように笑った。


「……卑怯者め」


「はい」


「そんなことを言われたら」


 ナターシャは少しだけ頬を染める。


「私も、お前を好きだと言うしかないではないか」


---


 恋人になった後。


 騎士団では相変わらず厳格な団長だった。


 しかし二人きりになると違う。


「レオン」


「はい?」


「少しだけ……こちらへ来い」


 遠慮がちに袖を引く。


「どうしました?」


「……甘えたい」


 消えそうな声。


 騎士達が見たら卒倒するだろう。


 俺は彼女の肩を抱き寄せる。


 ナターシャは安心したように目を閉じた。


「お前の隣は落ち着く」


「光栄です」


「それと」


「はい」


「……可愛いと言われるのは、悪くないな」


 そう言って照れながら笑う彼女は。


 誰よりも格好良くて。


 誰よりも可愛かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ