可愛げがないと言われた女騎士団長は、無自覚わんこ副団長に溺愛される
王国騎士団団長、ナターシャ・ヴァレンティア。
長い銀髪を後ろで束ね、鋭い紅玉色の瞳を持つ彼女は、騎士達の憧れだった。
剣の腕は超一流。
訓練では誰よりも厳しく、自分自身にも一切の妥協を許さない。
そんな彼女はいつしか『鉄血の女団長』と呼ばれるようになった。
――だが。
「うぅ……っ」
そんな彼女が、泣いていた。
しかも騎士団の裏庭で。
号泣である。
「団長!?」
慌てて駆け寄った俺――副団長のレオンは目を丸くした。
ナターシャ団長は慌てて涙を拭う。
「み、見るな……」
「いや無理ですよ! 何があったんですか!?」
しばらく沈黙したあと。
彼女は消え入りそうな声で言った。
「婚約者に……浮気された……」
「は?」
「可愛げのない女は嫌なんだそうだ」
思考が止まった。
いや、意味が分からない。
「私のような女より、守ってあげたくなる女性の方が良いらしい」
肩を震わせながらそう言う。
その姿は普段の凛々しい団長とは別人だった。
そして俺は思った。
可愛いじゃないですか。
めちゃくちゃ。
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それからというもの。
俺は何かと団長に声を掛けるようになった。
「団長、今日も綺麗ですね」
「なっ!?」
「その髪飾り似合ってます」
「……そ、そうか」
「笑うと可愛いですよ」
「やめろ!」
顔を真っ赤にして怒る。
でも耳まで赤い。
可愛い。
ものすごく可愛い。
本人だけが気付いていない。
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「レオン」
ある夜。
執務室で二人きりになった時だった。
「なんです?」
「お前は……本当に私を可愛いと思っているのか」
真剣な顔だった。
だから俺も真面目に答える。
「もちろんです」
「お世辞ではなく?」
「本気です」
即答した。
ナターシャは目を見開く。
「団長は強いし格好いいです。でも、頑張り屋で不器用で、実は優しいでしょう?」
「……」
「泣き虫ですし」
「それは忘れろ」
「無理です」
そう言うと、彼女は少しだけ笑った。
いつもの騎士団長ではない。
一人の女性としての笑顔だった。
その瞬間。
俺は自覚した。
ああ。
俺、この人のことが好きなんだ。
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数か月後。
王都の夜景が見えるテラスで。
「団長」
「なんだ」
「俺、団長のことが好きです」
ナターシャが固まった。
「ずっと好きでした」
「……私は可愛くないぞ」
「可愛いですよ」
「強いぞ」
「知ってます」
「年上だ」
「それが?」
しばらく沈黙。
そして。
彼女は観念したように笑った。
「……卑怯者め」
「はい」
「そんなことを言われたら」
ナターシャは少しだけ頬を染める。
「私も、お前を好きだと言うしかないではないか」
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恋人になった後。
騎士団では相変わらず厳格な団長だった。
しかし二人きりになると違う。
「レオン」
「はい?」
「少しだけ……こちらへ来い」
遠慮がちに袖を引く。
「どうしました?」
「……甘えたい」
消えそうな声。
騎士達が見たら卒倒するだろう。
俺は彼女の肩を抱き寄せる。
ナターシャは安心したように目を閉じた。
「お前の隣は落ち着く」
「光栄です」
「それと」
「はい」
「……可愛いと言われるのは、悪くないな」
そう言って照れながら笑う彼女は。
誰よりも格好良くて。
誰よりも可愛かった。




