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第二話 回想! 突然の転移と、おっさん猫ナビ

 ハンバーガーにかぶりつくと、表示されていた体力ゲージがみるみるうちに回復していった。ご飯を食べるとHPが回復するというのは本当だったらしい。にゃんこ先生は所持アイテムの枠から降りて、私の視界をうろうろしている。


「おれ、ねこだからタマネギはちょっと……」

「そういうところは猫なんだ」


 私が食べるハンバーガーには、タマネギがはさまっている。火を入れていないタマネギなのに、あくが抜けていて美味しい。香ばしい焼き目のついたパティから肉汁がにじんで、それをバンズが吸い込んでいる。私はジュースを飲み、フライドポテトをつまみながら、この世界のことを考えた。


 ある日突然、近未来的なこの世界に転移していた。原因が何かはわからない。朝起きて、電車に乗って学校に行く。そんな普通の暮らしをしていたら、突然視界に、PCでよく見るようなダイヤログボックスが表示された。


 ──ナビゲーターを選択してください。


 ナビゲーター役の動物と、簡単な説明が表示されていた。なんだこれ、と思った私は、ダイヤログボックスを消そうとした。右上にある消去ボタンや、キャンセルボタンを探したけれど、そういうものは見つけられなかった。

 特殊詐欺みたい、とさえ思った。そういう場合は電源を落とすのがいいんだっけ? でも視界に強制的に表示されてる場合は、どうやって消せば?

 私は目を閉じて眠ってみたけれど、起きたところで表示は消えなかった。

 仕方なく、ダイヤログボックスの左右の矢印に手を伸ばす。何匹かいる動物から選べるらしかった。私は猫が好きだから、猫にした。

 ナビゲーター役の猫は大きなあくびを一つして、ぴょんとダイヤログボックスから飛び出した。


 ──ナビゲーターに名前をつけてください。


 表示が変わって、文字を入力する画面が出ている。どうやって入力するんだろうと戸惑いながら入力欄に手を伸ばすと、スマホのフリック入力みたいな画面が出てきた。

 入力を終えるとダイヤログボックスに「転移を実行します」という文字と、ステータスバーが表示される。

 転移? なんのこと? と呆然としているうちに、数字がだんだん100%に近づいていく。

 ステータスバーが100%になったとき、急に視界が真っ白になった。無重力になったように、身体が浮かんだ。トランポリンで飛び跳ねるのをスローモーションにしたら、こんな感じになるのかな? 無重力なんて体験したことはないけれど、SNSで見た宇宙飛行士の動画みたいだった。

 真っ白な世界にいくつかの線が走り、折れ曲がり、曲線を描いて、だんだんと輪郭がはっきりしていく。線ができ、面になり、立体になり、色があふれた。

 無重力状態から解放されたとき、目の前に近未来的な建物が現れたものだから、私はとても驚いた。これが、つい数日前のことだ。数日はモブのように、戦闘に巻き込まれることもなく過ごした。異世界に馴染むためのチュートリアル期間らしい。

 にゃんこ先生はおっさん猫くさいところはあるものの、ナビ役として優秀だった。異世界の説明について「なんかよくわからないけど」を連呼されたときは「わからないんかい」と思わずツッコミを入れてしまったけれど。


「で、私はいつ元の世界に戻れるわけ?」

「わかんないよ。でも敵が襲ってくるなら、戦わなきゃいけないニャーン」

「そりゃそうだ。この前のチェーンソー野郎みたいな奴に好き勝手されるのは、まっぴらごめんだし」


 にゃんこ先生はフライドポテトをちょいちょいとつついて、匂いをかいでいる。


「食べないなら、もらうよ」


 私はフライドポテトにさっと手を伸ばして、口に放り込んだ。にゃんこ先生は耳をぴこぴこと動かしている。

 氷ばかり残っていたジュースのカップとトレイを持って、私は席を立った。ダストボックスに食べ終えたハンバーガーの包み紙を入れる。手を洗って店の外に出たとき、ここ数日ですっかり見慣れた半透明のダイアログボックスが視界に表示された。


 ──敵が接近中です。戦闘準備をしてください。


「えぇ……食べたばっかりなのに」

「腹ごなしの運動ってことかニャー」

「食べた直後に運動したら、気持ち悪くならない?」


 通りの向こうから、釘バットをぶら下げた男がゆっくりと歩いてくる。道路に釘バットが引っかかる音が、やけに耳障りだった。

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