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街を楽しむにはまず飯から

大通りに出ることに成功した俺は早速近くの屋台ゾーンに足を運んだ。そこには地球では見たことがない料理が並んでいて俺は目を奪われた。すると、俺の肩に何かぶつかった。よく見ると衛兵らしき人とぶつかったらしい。俺の不注意だから謝罪しなきゃなと体の向きを変え頭を下げた。


「すみません、俺の不注意で…」

「邪魔だッ!こちらは急いでいるッ!」


なんだこいつは。俺が頭を下げて謝っていると言うのに悪態をついてきやがった。


「おいおい、市民に対して威圧しすぎだ。確かにまだあの方の身柄を確保できてないけどさ」

「うるさい!もし見つけられなかったら俺たちは首が飛ぶぞ!」


衛兵二人は俺に対して気にも止めずそそくさと人混みに入っていった。


「ムカつくが無視だ無視」


あんなクソ野郎どものことは忘れよう。今はただ異世界の料理とやらを堪能しようじゃないか。俺は早速そばにあった屋台で魔獣のスープやら魔獣のステーキやらをむさぶり尽くした。

色々と異世界の料理を食べた感想としてはとにかく味が薄い。塩が高価なのかあまりかかってなく肉の臭みがもろに口に広がる。まあだが異国の料理を食べているみたいで新鮮ではあった。スープもよく味わってみたら奥に野菜の旨みらしきものもあったし魔獣のステーキもその肉本来の味が楽しめたから結果オーライだ。しかし、まだほんとにうまい料理に出会ってない。すると奥の屋台からプンプン香ばしい匂いが俺の嗅覚を刺激していた。俺は気になり屋台に近づいた。そこには何かの尻尾を串で焼いた料理が置いてあった。


「おい、おっちゃん。この串焼きは何の肉なんだ?」

「なんだにいちゃん気になんのかい?こいつはドラゴンの尻尾肉だぁ」

「ど、ドラゴンのッ!?」


俺が知ってるファンタジー物の代表がいきなりでてきて目を見開いた。俺の反応を見ておっちゃんは気分が良くなったのか俺に話しかけてきた。


「にいちゃんここらじゃ見ない格好じゃないか。この街に来たのは初めてかい?」

「よくわかったな。この街以前にこの地域に来たのも初めてだ」


俺の言葉を聞き、おっちゃんは目を細め、ちょっと気持ち悪いくらい口角が上がった。何か面白いことでもあったのか。


「にいちゃん、このドラゴンの尻尾肉食っていくかい?この地方に来てくれたお礼に本来なら銀貨三枚のところ銀貨一枚でまけてやる。どうだ?俺からの軽い選別みたいなもんだ」

「この串焼きってそんな高いのか」

「ドラゴンの肉なんだから当たり前だろ?にいちゃんドラゴンの相場も知らないのかい?」


確かにドラゴンといえばファンタジー小説でも高位の存在で珍しい生物の印象がある。それにおっちゃんが半分以下にまけてくれるって言ってるのだからここは素直に従おう。


「わかったよ、おっちゃん。その串焼きを買わせてく...」

「待ってくださいッ!」


澄んでいて美しく、それでいて聞き取りやすい声が俺の背後から聞こえた。

俺は声の主が気になり振り返るとそこには見窄らしい布のフードを被った少女が立っていた。フードで顔は見えないが綺麗な栗色の茶髪が風に煽られ揺れていた。


「そちらのご主人、そのドラゴンの肉は"本物"ですか?」

「ぐ、も、もちろんそうだぜ?嘘つく必要なんてないぜ?嬢ちゃん」


おっちゃんは額に汗を浮かべながら少女の言葉を否定する。しかし、少女は一切怯まず、冷ややかな視線を突き刺した。


「……残念ながら、それは“ワイバーン”の肉ですね。竜種ではありますが、真のドラゴンとは格が違う」


彼女は一歩近づき、肉の表面を指先でなぞる。その仕草は優雅で、それでいて容赦がない。


「じょ、嬢ちゃんに何がわかる」

「血管の走り方、肉の繊維の太さ……そして、この独特の臭気。私の家では本物の"ドラゴン"をみていますので、見間違えることはありえません」


店主の顔が引きつり、焦りが顔に出ている。少女の声音は澄み渡り、否応なく真実を告げる鐘のように響いていた。


「"ワイバーン"の肉は精々銅貨三枚程度。高い部位でも銀貨まではいかない。ご主人、これは立派な詐欺ではないですか?」


おっちゃんは舌打ちを噛み殺し、机の下で拳を握りしめていた。


「な、何を根拠に……!」


その声は震え、先ほどまでの横柄さは微塵もない。おれは、ただ唖然とするばかりだった。自分が完全に騙されていたと悟り、顔が赤くなる。だが、少女の横顔はどこまでも冷静で、揺るぎなかった。


「根拠もなにも、市場に出ている値を調べればわかることです。そちらに並んでいる他の肉も保存状態が悪く商品として販売できる物ではないじゃないですか。この件を衛兵に伝えればあなたはもう二度とこの街で販売していけませんよ」


淡々とした口調だが、逃げ場を与えぬ刃のようだった。店主の頬に冷や汗が伝う。


「……っ。わ、悪かった。俺は詐欺をしようとしたよ。謝る。だからこの件は衛兵には」

「いえ、報告はさせてもらいます。今の私の立場で聞いてくれるかわかりませんが」


少女はなにがなんでもこのおっちゃんを裁くつもりみたいだ。おっちゃんは顔から生気が抜けてて少しかわいそうだ。俺としては衛兵に報告してもらって一向に構わないのだが、この件でザックに怒られるのは嫌だ。そこで俺は、


「タダでならどうだ?」


俺がそう言うと、少女は眉をひそめてこちらを見た。


「……え?」

「こいつが詐欺を働こうとしたのは確かだ。だが、それは“金を巻き上げる”ためだったんだろ? なら金を取らなきゃ被害は出ない。……タダで済ませるなら、この件はなかったことにできるんじゃねぇか?」


おっちゃんは目を丸くして俺を見た。顔色が少し戻っている。

少女は腕を組み、しばし黙り込んだ。瞳の奥は鋭く、簡単に折れる様子はない。


「……甘いと思います。でも、確かに被害は出ていない。私が報告すれば罰は下るでしょうけど、その前に更生の機会を与えるのも――立場的に、間違いじゃないかもしれません」

「そ、そうだ! 俺は反省してる! 二度とこんなことはしねぇ! だから、な?」


おっちゃんは必死に手を合わせて頭を下げる。後頭部が若干はげているな。こんなおっちゃんにだって人生がある。もしかしたら、家庭を持っていて子供もいるかもしれない。確かにあくどい事をしようとした悪人だがこの行いだけで人生を捨てさせるのは可愛そうだ。もうしないと言っているのだから許してあげよう。俺はおっちゃんの肩に手をおき、優しく話しかけた。


「おし、おっちゃん。もうこんなことするなよ。じゃあ串焼きもらってくぜ」

「おぉ、もちろんだ。…ありがとう。こんなおれに更生の機会をくれて」


おっちゃんがしみじみと言う。


「へへ、いいってことよ。じゃあ串焼きもらってくぜ…ありったけ」

「おいまて!それじゃ俺破産するだろッ!」


結局串焼きは5本だけもらっていった。



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