表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

旅立ちの街と、へっぽこ商人のビジネス論


ザックと名乗ったセピア色の少し天パ風の髪をした青年は俺の方をじっと見つめている。俺にも自己紹介をしろってことだろう。


「よろしく、ザック。俺の名前はサトウメグル。改めてさっきはありがとな。」


ザックは俺を訝しげに見つめ、なにか閃いたかのような表情になり、


「ははーん、やっぱり自分異世界人やろ」


俺はびっくりして目を見開いた。そんな俺の顔を見て確信したのか


「図星みたいやなー、いやーわかるんよ。長年商人って仕事をすると…痛たッ!自分なんで叩くねん!!」

「わ、悪い。なんか殴りたくなった」


ザックのドヤ顔がムカついて反射的に手が出てしまった。俺ってこんなに暴力的だったっけ。


「まあいいわ、それで?やっぱり異世界人やろ。」

「なんでわかったんだ?」

「そんなん簡単やわ。ここらじゃ見ない服に物、知らない言語、おまけに金も持ってないときた。こんなんわからん方がおかしいやろ」


やっぱりドヤ顔でザックは自分の見解を気持ちよく語る。心なしか鼻も伸びてるように見える。やっぱこいつ殴りたくなるな。俺は悪くないはずだ。


「それで?なんで俺を助けてくれたんだ?」


俺が異世界人って分かる時点でこの世界には人数はわからないが異世界人が一般の人々に普及しているのだろう。だから物珍しい人がいたって理由でわざわざ自分のお金を払ってまで助けるとは思えない。まさか人が困ってあるのを見過ごせない善人てまはないだろうし。


「それは困っている人がいたら助けるやろ。」


ほんとだった。ザックは善人だった。勝手に善人の可能性を捨ててたよ。わるかった。


「って、いうのは建前で…痛たッ!なんでまた叩くねん。」

「俺の謝罪返せよ!この詐欺師!」

「ええ?そんな無茶な」


ザックは理解できないみたいな顔をしてズレた帽子を直しながら啖呵を切った。


「自分を助けた本当の理由はビジネスチャンスだからやねんッ!!」


ザックの大きな声に周りの人たちは驚き訝しげな目で見られた。特に俺を見ている人が多い気がする。俺がこのあたりで着ない服を着ているからか?忘れていたが俺たちは街の門を入ったすぐのところで話していたのだ。怪しい人だと思われたら一発でアウトだ。そもそも俺はこの国の住人じゃないしバレたらもうガイドブックをつくることはできずに牢屋に入ることだろう。それだけはダメだ。


「おい、ザック。もう少し人がいない静かなところで話そう。」


ザックも周りの視線に気付き、声を小さくした。


「せやな。ならええとこ知っとるからついてきな。」


そう言ってザックはそそくさと歩き始めた。俺もザックの後に続き歩き始めたが目の前に広がる異国の景色に息をするのを忘れた。ザックとの会話に夢中になっていて気づかなかったが俺は異世界の街にいるのだ。ザックの歩く向かう方向に広がる異国情緒あふれるマーケット、そこに歩けば必ずぶつかるほど人で溢れかえっていて活気に溢れている。よく見れば魔法使いのようなローブを着ている人や剣を腰につけている人がいて見ていて飽きない。


「俺、ほんとに異世界に来たんだ…」


俺の呟きが聞こえたのかザックがこっちを見てニヤニヤしてくる。


「せやで、異世界へようこそ。ここはアインズライン王国でもそれなりに賑わっている街、ヨークシアやで」


ザックの顔はウザいが異世界の街に来たという興奮であまりに気にならない。石畳の舗装された大通りを通ってザックと俺は歩いて行く。周りの建物は石やレンガなどが積み立てて作った家でまんまヨーロッパの街の風景に似ている。高い家でも3階までで日本のビルばっかの景色に比べて空が広く感じる。俺が周りをキョロキョロ見ながら歩いているとザックが少し暗くなっている路地から手招きしていた。俺はザックについていった。そして少しボロけた一軒の家の前で止まった。


「ここや。ここにある酒場は人も少くて隠れ家っぽいから商談するにはぴったりなんや」

「へえー、物知りなんだな」

「商人は情報が命やからな」


ザックはボロ屋に入って行くのでついて行く。入ると外の印象とは違うシックなバーみたいな感じのお店だった。スキンヘッドのイカついおっさんがが顎でカウンターに指示してくる。ここに座れと言うことなんだろう。


「いらっしゃい…注文は…」

「エールを二つや」


ザックが飲み物を注文する。周りを見ると俺ら以外に客はいないみたいだった。


「ここならしゃべってもええやろ。ここのオーナーは無愛想だが口が固いで有名やで」

「有名なら客がもう少しいるだろ…」


まあ見る限りイカついが悪い人間ではなさそうだ。座って落ち着いているうちに注文したエールが届いた。


「ほんならさっきの話の続きをしましょか」


注文したエールを一口飲む。結構うまい。麦の味が広がって濃厚でうまいな。だが冷えてないのが惜しいな。まあ異世界だから冷蔵庫なんかないんだろうが。


「ビジネスチャンスだっけ?なんで異世界人がビジネスチャンスになるんだ?」


ザックはエールを勢いよく飲み、机にガツンと置き俺に力説してくる。


「わかっとらんな、メグル。異世界人やで。ワシらが知らん知識がいっぱいあるはずや。実際今までこっちにきた異世界人によって様々な知識が持ち込まれてきたんや。例えばそうやな…ポテトや!」

「ポ、ポテトがあるのか!!」


俺は驚いて机を叩く。ジャンクフード代表のポテトが異世界にあるのか。


「せやで。そや、オーナーつくってやってくれ」

「あいよ…」


オーナーは無駄のない動きでポテトを作り俺らの前におく。


「召し上がれ…」

「まじか、ポテトだ」


一つ摘み口に入れるが割とアメリカの某会社のポテトに似ている味がする。異世界にきたらしばらく食べれないと思っていた俺からしたら嬉しすぎる。


「このポテトはある異世界人が持ち込んですぐに世の中に広がったんや。まだ世に出て3年だったはずや。これをいち早く売り出した商人は今じゃ世界でもトップクラスのお金持ちや。どうや夢があるやろ」


流石にこれには夢しかない。俺が出したアイデアを再現してお金持ちになりたいザックに日本のものをもう一度手に入る俺。正直いいことずくめしかないし、お互いWin Winだ。ザックは案外やる商人なのかもしれない。


「そうだな、俺にもいいことがあるしお前にもいいことがある。正直反対する理由はない。だが2個だけある」


ザックは俺の言葉に少し焦る。正直こんな好条件で渋られるとは思わなかったんだろう。ザックはテーブルから身を乗り出して俺に意見する。


「な、なんやお金なら少しだけワシより多く渡すぞ。なんか不満でもあるか?」

「それは俺の夢の実現に手伝ってもらうことだ。」

「ゆ。ゆめ?なにを叶えたいん?」


ザックは目をキョトンとさせ俺の言葉に耳を傾ける。


「それは…この世界のガイドブックを作ることだッ!!」


俺の言葉に首を傾げるザック。


「が、がいどぶっくってなんや?」


ああ、そうかガイドブックって言葉はこの世界には存在しないのか。翻訳っていうのも不自由なところがあるんだなと思ったが説明を続ける。


「ガイドブックっていうのはその国や地域の地図はもちろん、名物や料理やイベントなんかがまとまっている本のことだ。これは俺がこの世界に来る前の夢であったんだが色々あってこの世界についてのガイドブックを作ることにした!あ、もしかしてそういうのあるか?」


ザックを見ると俺の力説に若干狼狽えていた。だが俺の言葉の意味を理解すると興奮して俺に聞いてきた。


「そ、そんなもんあらへんッ!!天才や自分ッ!!それを作ればその場所に行くってなったら絶対欲しくなる。超でかいビジネスチャンスやで!」


ガイドブックという物を作ったのは俺ではないが褒められるのは悪くないので本当のことを教えるのはやめよう。だがザックの話が本当だとすると俺が世界で一番最初にガイドブックをつくった人物として歴史に名を刻むな。ちょっとマジでワクワクしてきたぞ。しばらくお互いの興奮が冷め切らなかったがザックが急に落ち着き俺に話しかけてきた。


「それはもちろん協力するで。世界中を回ってそのガイドブックとやらを完成させよや。それで…もう一つの納得できひんところはどこや?ガイドブックでも女でもなんでも手伝うで?」


ザックは不安げな表情で俺の様子を疑ってくる。それはそうだよな。ガイドブックを作るにしてもザックにとって都合が良すぎて怖いんだよな。あと女を作ってくれるのか?それは聞きづてならないが一旦放置し、真剣な表情でザックに向き合った。一瞬の静寂が酒場を埋め尽くした後、俺は口を開いた。


「いや、そんなじゃない。それは…お前のその自信満々の顔がムカつくんだッ!」

「なんやねんッ!!自分最初から思ったけどワイに対して当たりつよないか」


ザックは安心したのか体に入っていた力を抜いて椅子に倒れ込み、息を吐いた。


「とにかく!これで契約成立でええか?もしかしてワイはハズレの異世界人を引いたか…」

「よくわかったなザック。これからお前は俺に振り回されるぜ!これからよろしくな」


俺は右手を出してザックと握手する。ザックは若干文句を言いたそうだったが、口を閉じて俺の手を取る。ザックと手を取り握手したのち俺も肩の力を抜いた。俺も内心ビクビクしていたから安心した。異世界っていう右も左も縦もわからない環境に一人で放たれ俺は生きていけるのか心配でしょうがなかった。いくら地図が見えたり言語が通じたりする能力を与えられたからって自分の知ってる日本とは全く違う場所だ。そんなときにこのへっぽこ商人に救ってもらったのはほんとに感謝しかない。だが、そんなことこいつに伝えたらまたむかつく顔になるだろうから言わない。


「おい、ザック!契約祝いに酒をもっと飲ませろ!酔いが足りないぞ!」

「契約者って対等ちゃうん⁈自分…いやメグル傲慢すぎや!」


そうして俺は小さな酒場で俺の異世界旅行の夢が始まった。


ブックマークお願いします!してくれたら嬉しいです。感想も笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ