作戦会議件お食事
俺がしばらくクリーンヒットの腹パンに悶えた後、俺たちはスミレの家に向かっていた。解決すると言ったはいいがもう夕暮れで今からするのは難しく一旦今日は解散となったのだが、
「えッ!?この村って宿ないんか?」
「ええ、ないわよ」
とスミレがバッサリ切った。宿がないことに絶望する俺らにスミレがため息を吐きながら提案してくれた。
「じゃあ私の家にくる?」
「お!まじ?やったー」
「変なことしないでよッ!」
そうして俺らはなんとか今晩の宿にたどり着くことができたのだ。村を歩いていると時折、誰かからの視線を感じるが、どうせ弱弱村人たちだろうから無視だ。そうして、家が立ち並ぶ村の中心から離れた森の中に一軒家が立っていた。
「もしかしてあの家?」
「そうよ、なにか文句でもある?」
「いや、心だけでなく距離的にも離れてたんだなぁって」
「殴るわよッ!」
「さーて、お邪魔します」
なにやら物騒なことを言っていたスミレを放置し、そそくさとスミレの家にお邪魔する。入ってみるといかにも木造建築ですと言わんばかりに木の匂いがしてきた。ちょっと女の子の匂いを期待していたためちょっと残念。部屋の形としては大きく分けて二つでリビングとキッチンの部屋と寝室で一人で暮らすには十分だが、家族で暮らすなら心許ない部屋だった。この家で四人はギリギリだな。
「ここで一人暮らしているんですか?」
「ええ、この村に来た時に村長に貸してもらったのよ」
貸家だったのか。確かにところどころ年月による劣化が見られたから新築ではないと思ったが。
「なによ?さっきから黙って?」
「いや、部屋から女の子の匂いを感じないなって」
「悪かったわね、変態ッ!」
スミレは振り向きざまに先ほど同様の溝打ち殴りを完全再現するかのように俺の腹ど真ん中に綺麗にクリーンヒットした。
「がッ!今時暴力系ヒロインは流行らないぞ…」
俺は捨て台詞を吐き、廊下に突っ伏した。溝うちの痛みが全身に周り、感覚だけがゆっくりになる。スミレのボクシングは本物だ。
「こんなの放っておいていきましょ、アリア」
「は、はい」
ゴミを見るような目で俺を睨んだスミレは俺を心配するアリアを連れてリビングに行ってしまった。この場に残ったのは俺とザックのみ。
「だ、大丈夫か?メグル。あれはやばいわ、笑えんよ」
「ああ、お前も気をつけろ」
俺はザックに肩を貸してもらい立ち上がる。共通の敵を見つけて俺とザックの信頼と友情が深まった気がする。
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俺が溝打ちでまだダメージが残っている現在、俺たちはリビングで情報共有をしていた。
「結局このアシス村で起きている災害はなんなんや?」
ズバリザックが本題に入った。俺たちが一番気になっている内容で解決しなきゃいけないこと。スミレは重い沈黙を破るように口を開いた。
「この村で起きている飢饉の原因はおそらく…魔物よ」
「ま、魔物ですか」
アリアは何か気づいたように納得し始めた。けど俺はなんも理解できない。だって魔物知らないんだもん。俺はその疑問を解消するため、ザックに聞いた。
「なあ、魔獣と魔物の違いってなに?」
「そか、説明してなかったな。魔物を説明するよりもわかりやすいのは魔獣の説明やな。」
ザックは俺にわかりやすいようにジェスチャーを交えながら魔獣と魔物の違いを説明しはじめた。
「まずな、魔獣っていうのは普通の動物とは別でな、魔力を持っている獣のことを呼ぶんや。その中には魔法を撃ったりスキルが使えたりするやつもおる。つまり、獣の形をした魔力を帯びてる生物を総じて魔獣と呼ぶんや」
「ほうほう、じゃあ魔物は?」
「獣の形をしていない魔力を帯びた生物を指すんや。メグルが知っとるかわからんがゴブリンとかオークとかそのあたりやな。魔物は割と知性を持っている印象があるな。あと前も言った気がするが噂では魔物と魔獣は魔王が作り出したとされとるんやで」
俺はザックの説明に納得した。
「ほうほう。それで、この村の飢饉にはなんで魔物が関わっているってわかったんだ?」
「それは私が優秀な魔法使いだからよ」
スミレが得意げに胸を張った。
「私が使ったのは、魔力探知魔法よ。この魔法は、魔力が集まっている場所や、魔物の居場所を特定することができるのよ。それでこの魔法によると、この村の周りには、魔物が集まっている場所がひとつあってそこから強大な魔力を感じるのよ。これは明らかに怪しいわ。きっとそのせいで、村の野菜や魚が取れなくなったのよ」
スミレは自慢げに原因を説明してくれた。
「確かにその場所は怪しいな。直接の原因じゃないにしろ見に行く価値はありそうだな」
俺がそう言って、アリアにもどう思うか聞こうと顔を向ける。すると、グゥゥゥゥ、と間の抜けた音が響いた。音の出所は、アリアのお腹だ。
「す、すみません...」
アリアは、真っ赤な顔で恥ずかしそうに謝った。その姿は、先ほどの凛とした貴族の娘とはまるで別人だ。
スミレは、そんなアリアの様子を見て、大きくため息をついた。
「もう!こんな時に食欲なんか…!」
そう言いながらも、スミレは渋々といった様子で、持っていたカゴから食材を取り出し、料理を始めた。その手際は、まるで長年料理をしてきたかのように見事だった。俺は料理の技術についてはあまり詳しくないがスピードだけでなく技術もとても一流で料理人といっても違和感がないほどだった。俺達が持ってきたワイルドボアの肉と、村人から分けてもらったらしい野菜を細かく切り、鍋の中へ。鍋の中からは、とてもいい香りが漂ってきた。
「ほら!さっさと食べなさい!」
スミレは、そう言ってアリアに料理を差し出した。アリアは、申し訳なさそうにしながらも、料理を一口食べると、その表情は、まるで夢を見ているかのようにとろけ出した。
「んんぅ……!」
アリアは、言葉にならない甘い声を漏らし、スミレの方を向いた。
「すごい!こんなに美味しい料理、初めてですわ!」
アリアの言葉に、スミレは照れたように頬をかいた。
「そ、そんなに喜ばなくてもいいわよ!」
そう言いながらも、スミレの顔は、どこか嬉しそうだった。俺も、スミレに差し出された料理を一口食べた。口の中に広がるのは、ワイルドボアの肉汁と、野菜の優しい甘みが溶け出した、濃厚なスープだ。今まで食べた高級レストランの料理よりも、温かくて優しい味がした。ワイルドボアに関しては一週間も食べて感動飽きていたのにも関わらず、新しい食材かのように生かされていてこの料理ならまた何度でも食べれる。
「う、うまい……!」
俺は、思わず声をあげた。こんなにも美味しい料理、地球でも食べたことがない。
スミレは、俺の顔を見て、さらに嬉しそうに微笑んだ。
「そ、そう……でしょ!私が作ったんだから、当然よ!」
スミレの言葉に、俺は納得した。ほんとにスミレが作ったから美味しくなったのだろう。そこは疑いようのない事実だった。
「スミレは料理人なのか?」
「いいえ、...料理はただの趣味よ」
スミレは一瞬暗い顔をしたがすぐに笑顔に戻った。
「趣味なら尚更すげーよ。店出せるって。そのレベルの料理はもう料理人だぜ?」
俺がそう言うとスミレは目を見開いてみるみるうちに顔が真っ赤になった。
「どうかしたか?スミレ」
「...なんでもないわ!!黙って食べなさい」
「え、今俺悪いことしたか?」
彼女は、俺の質問を遮るように叫んだ。その声は、どこか上ずっていた。
「黙ってたべなさい、はい!」
スミレは、俺の口に熱いスープをスプーンで押し込んだ。
「うぐ、あっつッ!」
口の中に熱々のスープが広がる。めちゃくちゃ美味しいが熱さが上回って味わえない。俺は口をハフハフしているとそれを見てみんなが笑う。めっちゃ文句言いたかったがみんなが笑顔ならそれでいいか。
そうしてアシス村の夜が温かい雰囲気で過ぎていった。
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