表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

VSワイルドボア

馬車を飛び出した俺たちの目に飛び込んできたのは、想像を絶する光景だった。馬車の荷台に積んであった保存食の塊肉に、体長二メートルを超える巨大な猪型の魔獣が食らいついている。その牙は鋭く、見るからに危険な存在だ。ザックは、その魔獣を前に、腰を抜かしたように座り込んでいた。


「ザックッ!大丈夫か!?」


俺は、とっさにザックに駆け寄ろうとするが、アリアの腕に掴まれた。


「メグルさん!危ない!あれは『ワイルドボア』です!その全身は、まるで岩石のように硬い黒い毛で覆われており、並大抵の剣では傷一つつけられそうにありません」


アリアは、俺を庇うように前に出る。彼女の瞳には、すでに戦う者の光が宿っていた。


「そんな危険な魔獣なのか...悪い、ザック、せめて楽に死んでくれ...」

「諦めの早いてッ!まだ助かるやろッ!」

「マダガスカルってことか...」

「意味わからんこと言わんではよ助けろッ!」


俺は一旦落ち着き、魔獣をよく見る。ワイルドボアと呼ばれた猪型の魔獣は全身が真っ黒の毛で覆われていて、頭部には鋭く湾曲した2本の牙が生えており、その牙は、まるで短剣のように危険な輝きを放っている。そしてザックを見つめ、鼻息を荒くしており、いつ襲われてもおかしくなかった。魔獣ぱねえな。その姿自体は地球の猪と存外変わりないが、ただの猪と違うポイントがある。それはそのでかい巨体と溢れ出る闘気だ。この世界の魔獣は全部こんな奴らなのか?だとしたらやっぱ恐ろしい所だろ、異世界。


「メグルさん。先程話したスキル、”高貴なる剣舞”をお見せしましょう」


そうアリアが言った瞬間ーーアリアの纏う空気が重くなった。そして、腰に付けていた鞘から鋭く細いレイピアを抜き、腕を上げ、突きの姿勢になり、ワイルドボアに構えた。俺はほんの少しだが、アリアの体から魔力が漏れていることに気付いた。おそらくスキルを発動させたのだろう。その瞬間ーー


「はああぁぁッ!!」


アリアが目にも止まらぬ速さでワイルドボアに向かって走った。ワイルドボアがアリアの接近に気づき、ザックから標的をアリアに変え、突進してくる。ワイルドボアの動きは、その巨体に似合わず、驚くほどの俊敏性を持っていて、そのままぶつかったら例えアリアと言えど無事では済みそうにない。だが、アリアは走る足を止めるどころか加速する。そして、ワイルドボアの突進がアリアにぶつかる瞬間ーー


「”流麗なるステップ”」


ワイルドボアの突進を見切り、まるで水が流れるように滑らかなステップでかわした。しかも、単に避けるだけでなく、相手の背後にに一瞬で回り込み決定的なチャンスが生まれた。


「”流麗なる一太刀”(フロー・スラッシュ)」


ワイルドボアは目の前から消えたアリアを探そうと、巨体を動かす。しかし、もう遅い。アリアの剣は、風に乗るかのように滑らかな動きから繰り出された。その一太刀は、まるで氷上を滑るかのように静かで、そして、致命的だった。レイピアの切っ先が、ワイルドボアの分厚い毛皮を切り裂き、首筋に深々と突き刺さる。その繊細で美しい太刀筋に、俺は一瞬、心を奪われた。アリアは、ワイルドボアに一撃を与えた後、すぐに後方へとステップで下がる。まるで、何事もなかったかのように優雅に。ワイルドボアは、その丁寧で静かな一太刀に気づいていないのか、ただ呆然と立ち尽くしていた。しかし、次の瞬間、その巨体は、まるで糸が切れた人形のように、ゆっくりと地面に崩れ落ちた。


「す、すごい」

「ふふ、ありがとうございます」


アリアはレイピアについた血をハンカチで拭き取り、丁寧に鞘に納めた。そして、柄の部分を相手に向け、丁寧に一礼する。俺はその所作に戦士としての誇りや敬意を感じ、感動した。


「よーやってくれたでッ!アリア。ワイの考えが的中した!これでしばらくは耐えれるで」


ザックは自分の考えた作戦がうまく行ったことに嬉しいのかドヤ顔で俺達に自慢してきてうざい。


「ザック。これはアリアが討伐したのだからアリアの手柄だろ」

「なに言うとんねんッ!これはワイの作戦とワイの根気よく餌を見張ったおかげやろ」


ザックが俺の言葉に強く反発し、顔をムスーっとしてる。こいつの怒った顔には可愛さなんてものは一片もないな。むしろイライラして殴りたくなる。しかし、まさかザックの作戦が成功するとは。俺は結局捕まえられなくってしょんぼりした顔で帰ってくると思ったから正直驚いているが、それは言わない。


「ほな、解体するか」

「「へ?」」


ザックの言葉に俺とアリアは同時に反応した。かいたい、カイタイ、飼いたいか!


「なに言ってんだよ、ザック。そいつはもう死んでるから飼えません!元に戻してきなさい!」

「なんか現実逃避してるやつがいるが解体は必須やで」


ザックは俺のボケを全く拾わず無情なことを言い放ってくる。


「ぜ、絶対ですか?」


アリアが嫌そうにザックに聞くが、ザックは首をよこに振る。


「「そ、そんなぁ」」


俺とアリアの抵抗虚しく、ワイルドボアの解体が始まった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふぅ、こんなもんか?」


俺は、行き絶え絶えになりながらもワイルドボアの解体を終わらせた。時間がかかりすぎたせいでもう夕日が沈みだしている。目の前にあるワイルドボアの死体だったものは、その巨体から、血と肉を地面に散らし、息絶えていた。

俺は、まずザックが持っていた短剣を借り、ワイルドボアの解体を始めた。初めての作業で、どこにナイフを入れたらいいのか分からず、俺は戸惑ったが、ザックはそんな俺を見て、慣れた手つきでワイルドボアの解体方法を教えてくれた。ザックが言うには、まず、硬い毛皮を剥ぐ。これは、後で売るか、防具に加工するために、できるだけ傷をつけないようにする必要があった。次に、肉と骨を分離する。ワイルドボアの肉は硬く、ナイフを入れるのに苦労したが、ザックは肉の繊維に沿って切り分ければいいと教えてくれた。そして、内臓を取り出し、食用になるものと、薬の材料になるものを分ける。最後に、残った血を抜く。血抜きをすることで、肉の鮮度を保ち、臭みを減らすことができるとザックは言っていた。俺はなんでそんなことを知っているのかザックに聞くと、「そんなん旅の基本やろ?旅に出るなら、獲物を自分で解体できなきゃ、食料に困るからな」とザックらしからぬ意見が飛び出し、俺は目を丸くした。そうか、例えいつも頼りないザックでも異世界の旅においては俺より先輩で知識も経験も豊富なんだ。なんだか、釈然としないが、意地を張る必要性も感じない。俺はしっかりとザックから解体の心得を学んだ。解体を進めると途中からコツを掴んだのか効率が上がり、ザックを驚かせる速度で最後は解体した。ザックに「メグルは解体の才能があるみたいやな」と褒められたが解体自体は汚く大変な作業だからうれしくなかった。


「メグルさん、お疲れ様でした。」


アリアはねぎらいの言葉をかけながら、俺とザックに水筒をくれた。俺は受け取り、ゴクゴクといい音を鳴らしながら飲み込む。


「ふぅ、ありがとう」

「いえ、私は解体作業をしていませんでしたのでこれくらい当然です」

「まさかアリアが解体したことないとは思わなかったよ」


なんと戦闘好きで狩りなどに何度も参加していたと思ったアリアは実は解体をしたことがないらしく俺とザックは驚いた。


「私も狩りまでなら参加したことは何度もあるのですが、解体は全部兵士の方々にお任せしていたのでやったことはなかったのですよ」

「案外世間知らずなんやな」


ザックの一言に恥ずかしそうに照れるアリア。


「うぅ。そう言われると言い返せません。」

「まあそういうアリアも解体ができない代わりに現在俺の中で問題になってるザックによる食料枯渇問題解決のために木の実集めてくれてたぞ」

「それを言われると言い返せませんやん...」


ザックは俺の嫌味にげんなりした顔をして解体の終わったワイルドボアを集めていた。


「ザック、解体終わったけど今日はこのあとなにする?」

「さすがに日も落ちてきとるし昨日みたいに夜寝ないで走る必要もないから今日はここで野営やな」

「おお!!野営かッ!ワクワクしてきた」


俺は野営と聞いて胸が高鳴った。地球にいたときも家族に連れられキャンプ自体は行ってはいたが、こんな大自然のど真ん中でキャンプとなると初めての経験だ。


「野営の醍醐味はなんて言ったって狩ったばかりの肉を食えるとこやで」

「やばッ!あつすぎだろ」

「ふふ、私はじゃあ火起こししますね」


こうして各々野営の準備を始めた。


ブックマークお願いします!してくれたら嬉しいです。感想も笑



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ