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#5 しかも三年連続で表彰された

「新人研修と言ったら、やっぱり掃除だよね」


「任せろ」



 マドカの指導を受け、研修が進められていく。今は、掃除の時間だ。掃除用具を巧みに操り、俺はまずトイレを綺麗にした。次に商品棚の目立った埃を落とし、最後に床へモップを掛ける。その他にも、俺が気になった場所の細かい汚れを丁寧に落としていった。


 ふっ、床が輝いているな。この眩しさが俺には辛い。所詮、俺は表舞台の住人ではないということか。そう考えると、なんだか悲しくなってきた。この話は終わり、終わり。



「ジューイチに掃除の特技があったなんて、知らなかったよ」


「元々俺は掃除が好きで、な。中学時代には人間掃除機の称号を得たこともある」


「えー、何、その称号。褒められている気がしないけど」


「しかも三年連続で表彰された。スゴイだろう」


「あー、はい。ソウダネー」



 ふふん。もっと褒めてくれても、良いぞ――だが、そんな俺の期待とは裏腹にマドカは次の研修について説明を始めた。自慢ではないが、俺は褒めて伸びるタイプの人間だ。だからマドカに褒められず、放置されたことは正直言って、誠にショックであった。


 そうだ。この悲しきエモーションをメモ帳に記しておこう。小説のネタになるかもしれない俺はポケットからボールペンとメモ帳を取り出し、乱雑に文字を記していく。


 うへぇ、なんて汚い字なのだろう。しかし、仕方がないことだ。真剣に丁寧に書けば綺麗な文字を書くことができるが、急いで書くとどうしても汚い字になってしまう。まあ、自分が読めるので、こんなシラスみたいな文字でも良し、とする。


 そうだ。今度生シラスを食べに、鎌倉でも行こうかな。おっと、涎が――



「ねえ、ジューイチ。話を聞いているの?」


「あ、お前も行くか? 鎌倉」


「さては、またワケのわからないモノローグを展開していたね。つまり、研修の内容をちっとも聞いていないわけだ」


「そんなことはないぞ。次はレジ操作の研修だろう」


「何故そんなにも堂々としているのか疑問だけど、違うからね。次はバックヤードで挨拶の練習だから。作家の性なのか知らないけど、モノローグは程々にね」


「はぁい」


「それにしても――エミリー、遅いな。今日のシフトは同じ時間帯のはずなのに」


「遅刻か?」


「何かあったのかもしれない。店長に確認してくるよ」


「あのぉ、俺は何をしていれば?」


「とりあえずバックヤードに着いたら、先に挨拶の練習しておいて。僕はエミリーが何時に来るのか確認してくるから。サボっても無駄だからね。防犯カメラで見張っているから」


「わかった」


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