三島由紀夫の文体による、イチゴのクリスマスケーキの描写
雪は、銀の刃のごとく、夜の空を切り裂いて降り注ぐ。
部屋の中央に据えられたクリスマスケーキは、白い生クリームの層を重ね、まるで冬の山嶺を思わせる厳かな姿で、そこに在った。
頂に散らばる苺は、鮮血を滴らせる傷口のごとく、赤く、艶めかしく輝いている。
スポンジは柔らかく、しかしその柔らかさの奥に、どこか抵抗するような弾力があり、フォークが沈むたびに、かすかな悲鳴を上げるかのようだった。
生クリームは純白で、冷たく、舌の上に溶けゆく瞬間、甘美な虚無を運んでくる。
だがその甘さは、決して安易なものではない。
底に潜む微かな塩味が、甘美を裏切り、人生の儚さを思い出させる。
苺は、ひと粒ひと粒が、まるで禁断の果実のように、挑発的にそこにあった。
噛みしめれば、酸味が鋭く牙を剥き、甘さと交わり、口中に一瞬の戦いを起こす。
赤い果汁が唇に残り、それはまるで、秘められた情欲の痕跡のごとく、拭い去ることのできないものとなる。
このケーキは、祝祭の象徴であるはずだった。だが、私の眼には、それはただの幻影にすぎない。
美しく、儚く、すぐに崩れゆくもの。
苺の赤は、血の色を思わせ、クリームの白は、死の衣を思わせる。
食べ終えたとき、皿に残るのは、ただ空虚のみ。
ああ、この甘き毒よ。
クリスマスの夜に、人の心を惑わす、妖しい誘惑よ。
メリークリスマス。イチゴ入のケーキは高いので、チョコレートケーキを食べました。




