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第一話 新たな生活

魔王軍と長い戦いが終わった。結果は僅差で我が連合軍の勝利。戦時中、沢山の種族の血が流れ命が奪われた。一緒に稽古をつけた奴や飲みに行った奴。一緒に馬鹿話した奴。そんな仲間にも嫁さんやお子さん等の大切な方々も沢山いただろう。そんな仲間が沢山帰らぬ人となってしまった。



「ごめん。ごめんよぉ。おめぇら…生きて帰らす事が出来なくて。」


勇者として召喚された川嶋慎一郎(しんいちろう)は戦後処理で遺体となって運ばれてきた仲間の前で泣き崩れた。数年の間だったがともに苦楽を共にしてきた仲間が、こんな無残な姿をして…



「俺が、もっと強ければこんな事には…クソ…クソぉ…」



「しん君…」



「ごめんな楓夏。こんな弱気になってちゃぁ駄目だよな。こいつらも俺がこんな風になってるの望んじゃいねぇよな。」



「しん君、辛い時は溜め込まないで私に話してねって言ったよね。私もしん君に辛い時があったら言うからって。ここ最近、しん君、最近…どんどんやつれてくから…私、心配で…」



と泣き出してしまった。彼女も同じく一緒に勇者として召喚された、谷口楓夏(ふうか)。彼女も真一郎と同じく戦後処理に追われていた。真一郎が食事もあまりせずに寝る暇も惜しんで昼夜を問わず戦後処理をしていた為、日に日にやつれ具合が酷くなっていった。



「ねぇ、もう駄目。しっかりご飯を食べて寝てちょうだい。仲間から助けてもらったその命、無駄にする気なの?あんたも死んだら意味ないじゃん!」



と楓夏が声を荒げながらフラフラして精気が感じられない真一郎に向かって放った。



「寝れないんだよ。寝ようとすれば戦時中に仲間がやられ、その断末魔が夢に出てくるんだ。そして俺に助けてくれって這いつくばりながら俺の所に来るんだ。それのせいで吐いてしまう。脳裏に焼き付いてしまってご飯も喉を通らないんだ。もう、何も失いたくないんだよ。特にあんただ。楓夏を失ってしまうと思ったら、、、もう…」



と真一郎が楓夏に言った途端、体が限界に達したのか気絶してしまった。



今までに起きた事を話そうと思う。2人は元々、日本で普通に暮らしていた高校生だった。慎一郎はどこにでもいる、いたって普通の高校生であった。武術を習っていた為、周りからは見た目がいかつてちょっと怖い高校生と言われていた。楓夏は世間で言う所の金髪ギャルだった。ギャルと言っても見た目だけで、所々ギャルさは出ているがとても優しく面倒見が良い人である。二人は帰る方向が同じだった為、一緒に下校するようになった。そのうち、一緒に下校していくうちに仲良くなり校内外で一緒にいるようになって遊びに行く事もあった。異世界に召喚されたあの日、高校の授業が午前中で終わった。いつものように下校をしていたのだが突然、強い白い光に包まれた。その光があまりにも強かったため目を閉じてしまった。そして目を開いたら今ここにいる異世界に来たのである。何故召喚れたのか。それは、魔王率いる『魔王軍』と呼ばれる者たちを倒すために召喚された。突然の事だったし、いきなり言われたので必死に元の世界に戻る事が出来ないのかと問いたのだが、勇者として魔王を倒さなければどうなるのか分からないと言われた。だから元の世界に戻るために、そして勇者として魔王を倒すべく異世界での生活が幕を開けたのである。



ここの世界は元いた世界と違って魔法が使える。基本的には【火•水•木•風•土•光•闇•無】の基本属性に加え【氷•雷•時間•空間•重力】等の応用属性。そして【精霊•付与•死霊•結界•幻惑•召喚•契約】の特殊魔法がつかえる。基本属性はよくある小説や漫画、アニメで、よく見るあれだ。基本属性はよく漫画やアニメで見るあれだ。無属性魔法は主に生活魔法が使えるが、戦闘で使える物もたくさんある。応用属性は基本的に基本属性の応用で、基本属性の派生魔法である。特殊属性は、基本属性と応用属性に属さない限られた人しか使えない独立した魔法である。そんな元いた世界には無かった魔法を使って魔王軍を倒していかなければならない。


決戦の時までに修練を重ね、剣術•武術•魔法術を完璧な状態に仕上げ、決戦の時を待った。そして決戦の時になり長い戦いの末、我らの軍が勝利することが出来た。魔王と戦っていた時に発覚したのだが、魔王軍にいた兵士たちは魔王自らの手で無理やり兵士の魔力を暴走させ自我を無くして操られていたのだと知った。戦ったのは無理やり暴走させられ、操られていた敵兵のみだったとの事。何故こんな事になったのかを聞き出す為、魔力暴走を起こさずに自我がある敵兵を捕虜にして真一郎の固有スキルの一つである【異空間•異界】に収容し決戦後にどうするかを決める事にした。



時は戻り、真一郎が戦後処理中に倒れてから暫くして経ってから目を覚ました。



「んっ…あれ?寝てた…?遺体とか運んでたんだけど…」



「おはよう、しん君。やっと起きてくれた。全く起きないから心配した。」



「しばらく寝てたの!?どのくらい時間たったの!?」



「1ヶ月近く起きなかったんだよ。体の機能が完全にスリープ状態になってるからしばらく起きないって治癒師の人に言われて…しかも(うな)されてたからホントに心配したんだよ?」



「まじか…だけどしっかり夢の中でも完全とは行けないけどケジメは付けてきたから。アイツラのためにもしっかり生きないとな。…にしても1ヶ月動いてないならリハビリしないとな…体の関節がバキバキだ…ってか戦後処理終わった?」



「終わったよ。後は戦場に浄化魔法を使った儀式をするだけ。しんくんにも立ち会ってもらいたいから少し見送らせてもらった。」



「分かった。。。」


そうして浄化魔法を使った儀式を終え戦後処理も終わり、魔王軍との決戦に完全に幕を下ろすこととなった。



勇者として召喚されその召喚の儀を行った国、【ファルスターガルズ王国】の王城、謁見の場に慎一郎と楓夏は招待されていた。真一郎は体が不自由な為、車椅子での参加となった。


「勇者シンイチローと勇者フーカ、此度の活躍見事であった。魔王軍の討伐、本当にありがとう。そして、こちらの都合でこちらの世界に急に呼び出して勇者と勝手に呼び魔王軍討伐を任せて済まなかった。誠に身勝手だと思ってる。許してもらえないだろうか?」


とファフスターガルズの国王、コルバート•ファルスターガルズ国王を始めとし、その場にいた全ての方々が深々と頭を下げた。



「ちょ、頭を上げてよ国王様。もう許したって言ったじゃん。もう過ぎたことなんだし、大変な時助け合うのは当たり前だし。ね?」



「感謝と謝罪はしっかり受け入れますから、ね?しんくんの言う通り、頭をお上げください。」



「本当に感謝する。いやぁ、本当に良かった良かった。もし受け入れて貰えんかったら首でも差し出そうと思ったわ。A★HA★HA…まぁ冗談だが。」



「国王様!?それは冗談でも言い過ぎ!心臓に悪い…」



とコルバート国王がとんでもない冗談をかまし、場がどよめきつつも和んだ。



「それで?これだけで呼んだんじゃ無さそうだけど?なんかあったん?じゃないとここに呼ばんだろ?」



「あぁ。2人に御願いがあってここに呼んだんだ。あのな、戦場となった【セレスティル王国】なんじゃがな、我々と戦い戦勝した報奨でこの土地を譲渡しようと思ってな。この話は全ての国々のトップと話し合った結果、こうなった。」



「いやいや待てよ!元の世界に帰れるって話だっただろ?なんでそうなるんだよ。」



「そうですよ。元の世界に帰れるんじゃなかったんですか!?こっちに召喚された時はそーゆー話だったじゃないですか!」



「そうだったんじゃがな、転移装置が貴方がたがいた世界からこちら側にしか来られない様に設計されてるみたいでな…私達にももうする事も出来ないのじゃよ…」



「元の世界に完全に帰れないって事か…まぁ何とかなるだろ。今すぐ元の世界に帰るって訳でもないし。」



「それもそうね。それでしん君、セレスティル王国があった土地どうするの?貰うか貰わないか。」



「まぁ各国の国王様達はどうすることも出来ないだろうし、俺等が貰うよ。未開拓の土地も隣にあるしね。ならいっその事国王やっちゃう?」



と真一郎は冗談交じりで言葉を放った。



「皆のもの!勝手ながら申し訳ないが、本日付けで私、コルバート•ファルスターガルズ、そして妻のセレスティーナは国王の座を引く事にし、真一郎と楓夏にこの国『ファルスターガルズ』を任せるとする。これは国王と王妃と話し合って決めた決定事項である。」




「はぁぁぁぁああああああああ!!!???」



その場にいた全員が一斉に驚いた。まさか、急に国王を辞めるとは誰もが思わなかっただろう。国王直属の部下たちはかなり困惑していた。



「なんでなんだよ!これからって時に。あんたが引っ張って行かないでどうするんだよ!いきなり言われても困るわ!」



「いきなりで申し訳ない。2人で話しておったんだがな、今まで以上に活気あふれる国にしようとしてるんだけども、なかなか出来なくてなぁ…そこで異世界からやってきたソナタたちならこの国をさらにより良い国にできると思ったんじゃ。やってくれんかのぉ…?」



「…あーもー!!!やりゃあいいんだろやりゃあ!」


「うむ。では後は頼んだぞ、真一郎。楓夏も良いかの?」



「えぇ良いですよ。言いたいことは沢山ありますけど、私たちに国を預けるってことは色々と理由があったんですね。これから精進していきます。」



「引き継ぎ等は全て済ませておる。後はどうしたいかは自分で決めておくれ。それでは俺達は片田舎でスローライフを満喫しておるから分からないことがあれば聞きに来ると良い。」


「了解!…あぁ国王様、未開拓の地も貰ってっても良い?誰の土地でもないし、あそこに入れないように結界が張らさってあるだろ?だから良ければ欲しいなって。」



「うむ…ワシの意見だけじゃ決められんからのぉ。…全ての国王に聞く。未開拓の地を譲り渡しても良かろうか?」



コルバート国王はその場にいた全ての国王に聞き、満場一致で譲り受けてもらうことが出来た。そうして国王であったコルバート国王、王妃のセレスティーナが盛大な拍手と共に宮殿を去った。



「真一郎殿と楓夏殿、ただいまより国王と王妃なられた為、あちらの壇上へお上がりください。」



とコルバート国王の側近であったコランが指示をした。



「え、もうあそこに行ったら俺が仕切る感じ…?では…新しく国王になりました真一郎です。よろしくお願いします!」



「真一郎国王の王妃となりました、楓夏です。お願い致します。」



と挨拶したら盛大な拍手が上がった。これから勇者だった2人。これからは国王と王妃として波乱万丈な生活が始まるのである。

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