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アースエンド・リトライバー~仲間に「役立たずだ!」と捨てられましたが、文明崩壊後の世界で最強オッサンに拾われて凄腕【探索者】になりました!~  作者: 羽賀庵こうら
第三話 【探索者】のバザール

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9.村コロニー【ロクナナ村】1

 

 

 ツカサ達が【バイオスリープ】で眠った後、崩壊の危機が(せま)った日本では、どうも【コロニー】というものが各地に建設されていたようだ。


 コロニーとは「植民地」または「居留地」という意味……らしいのだが、だとしたら何だか(みょう)な名称だ。日本と言う土地は(すで)に開拓されており千年を超える昔から日本人が住みついているのに、そこを日本人が植民地にするなんてどういうことなのだろうか。

 この土地に住んでいる者が昔と変わらず同じ種族のままだったのなら、コロニーと言う施設など本来なら必要が無いはずなのだが。


 ……ツカサは説明されてその違和感にやっと気が付いたのだが、それはともかく。


 ブレックの話によると、コロニーの名称は実を言うと間違いではないらしい。元々【災害】や地殻変動によって大きく様変わりした世界を“開拓し直す”ために造られた人工実験施設のようなもので、真っ当に“コロニー”になるはずだったのだ。

 だから、そこは本来なら人が住むための場所では無かった。


 けれど結局世界は荒廃したまま戻る事は無く、【災害】の余波でモンスターや奇怪な植物が出現した事により、コロニーは“ノコサレ”達が脅威(きょうい)から(のが)れるためのシェルターと化した。そうして、そのまま集落になってしまったのだ。


 しかも、大多数のコロニーはお世辞にも完璧な施設とは言えなかった。

 急ごしらえだったためかコロニーの大多数は本来の設備を搭載できなかったものばかりで、規模も小さかったことから、空っぽの箱同然のシロモノになってしまったのだ。……だが、人が安心して住める場所である事には変わりがない。


 コロニーは本来の機能を全うできなかったが、しかし人々の居住区域として認識される事となり――――それらの「小さい空っぽのコロニー」は、人が増えるにつれ次第に「村コロニー」と呼ばれるようになった。

 そうして、今もノコサレ達が細々と暮らしているらしい。


 ……(ちな)みに「都市コロニー」は、各地方都市の人口密集地に建設された巨大なコロニーで、それらの巨大な施設に関しては完璧な設備が整っているそうだ。


 旧日光エリアに存在する大都市コロニー【トウショウ】も、そんな過去の遺産を使って作られた都市の一つだ。ツカサは実物を見ることはないだろうが、それでも目の前に見える村コロニーを見るだけで、大都市コロニーがどれだけの巨大さなのかを想像する事が出来た。


「村とか言うから小さいと思ってたのに……想像以上に、デッカい……」

「疑似的なビオトープを作る計画もあったらしいからね。どんなに外が荒廃しても、コロニーの中では植物が育てられるように村一つ分のシェルターにしてたのさ」

「シェルターかぁ……ホントSFな世界っぽいなぁ」


 ツカサがそう思ってしまうのも無理はない。

 バイクから降りて(なが)める前方の建物は、かつて東京に存在したドームよりも大きく、完璧な半円形を描いている。まるで、未来世界の建物のような出で立ちだったのだから。


 それでいて、コロニー上部は半透明になっているのがまた未来っぽい。

 恐らく、上部をガラスか何かにする事で太陽光を取り入れているのだろう。まあ、これだけの建築物なのだから、あの部分がただのガラスと言う事は絶対にないだろうが。


「さ、行こうか。村コロニーは基本的に門番は居ないんだ。人間の体組織に反応してドアが自動的に開くようになってるんだよ。……まあ、悪意がある物が入って来たかどうかは、人が見分けなきゃいけないんだけどね。しかも、太陽が完全に没したら特別な認証キーが無ければ外に出られなくなる」

「便利だか不便なんだかわかんないな」

「仕方ないよ。今となっては施設の使い方も分からない人間ばかりになっちゃったし、ノコサレ達がシェルターにしようとして色々壊しちゃったんだから」


 それが(いま)だに直されていないと言う事は、技術者がもういないのだろうか。

 数十年の間に喪失した記憶の中に、技術者の知識も含まれているのだとしたら、今後もしコロニーが壊れた時には取り返しがつかない事になるような気がするのだが。


(……こ……壊されたりしないよな……? あの大ムカデみたいなモンスターも、村コロニーの周辺には現れたりしないんだよな?)


 不安になったが、もうここまで来たら入るしかない。

 巨大なドーム型のシェルターに近付き、大型トラックすら二台横に並んで入れそうな入り口に立つと、壁に埋め込まれたカメラのような物がチカチカと光り――――音を立てながら、ゆっくりと開いた。


 思ったよりもスムーズで驚いてしまったが、中に入ればどうなるか分からない。

 バイクを押して入るブラックについてついにコロニーの中に入ると、思っても見ない光景が広がっている事に、ツカサは目を丸くしてしまった。


「えっ……ここが……村……?」


 思わずそう言ってしまうのも、仕方のない事だろう。


 なにせ、ツカサの目の前に広がる光景は――――


 綺麗な建物と、その周りの堀や花壇の跡のような場所に無造作に建てられた不格好な日干しレンガの質素な家屋が乱立する、異様な光景だったのだから。


「なん……え……これ、あのビルみたいな建物にも人が住んでるんだよな……?」


 ドーム状になったコロニーには、いくつかコンクリート製に見える建物が立っている。入って真正面の一番奥に見える横長の施設や、両端に建てられたドームの天井まで届く謎のビル。そして、一階建ての箱のような建物が点在していた。

 一階建ての建物は、恐らく堀や花壇を管理するための施設だったのだろう。


 だが、今はその建物が管理できるものなど何もない。

 堀は区切られ一部屋ずつの地下室のような家に作り替えられており、花壇の上には先程目の当たりにした家が平気で鎮座している。辛うじて「大通り」と言える真正面の施設までの通路を残して、レンガの家はそこらじゅうに無造作に放置されていた。


 これは、どういうことだろうか。

 綺麗な建物と粗悪な日干しレンガで作られた家は、別物なのか。それとも、建物にも人が住んでいるのだろうか。良く分からずに首を傾げるツカサに、ブレックが淡々と説明してくれた。


「コロニーの建物は、管理者権限を持つ者じゃないと入れない。だから、ここに逃げて来た奴らは、本来ならビオトープを作るはずだった土地を潰して、そこに無理矢理家を建ててるんだ。……まあ、彼らがその研究を尊重したとしても、技術者が居ないから結局はこうなってただろうけどね」

「じゃあ……みんな、入れない施設を見ながら暮らしてるのか」

「そういうコト。でも日干し煉瓦の家も見た目ほど悪くは無いよ。知識も木材も無いから、長屋みたいな簡単なものしか作れないみたいだけど……でも、雨風を防げるこの場所なら、それでもいいのさ」


 確かに、コロニーの中に居れば雨風をしのげるし土台のない建物でも十分に暮らせる。地震などの心配はあるが、簡単な建物で質素な暮らしをしているのならさほど不都合はないのだろう。

 とはいえ、質素な暮らしが当然になっているのは寂しい事ではあるが。


「あ、でも……雨が降らないなら水とかは大丈夫なの? なんか野草を栽培してるとは言ってたけど……」

「地下水脈と雨水を合わせた人工井戸があるから心配ないよ。水に関しての設備だけは、どこのコロニーでも間に合ってたみたいだからね。……さて、目的地はこっちだ」


 色々と質問している間に、家が密集しているところに入って来た。

 みすぼらしいローブで頭を隠しているとはいえ、やはり彼らは住民ではない者には警戒心があるのか、こちらをじろじろと眺めて来る。開け放たれた窓や家の陰から何人もの住人達が覗いて来るのは、結構なストレスだった。


(……今からこんな環境に慣れないといけないのか……)


 陰鬱な気持ちになっていると、ブレックは家の密集地から少し離れた場所にある長屋の敷地に足を踏み入れる。背の低い壁で囲われた家だが、他の家には囲いがなかった事を考えると特別な施設なのだろうか。そんな事を思っていると、長屋の窓の一つからオレンジ色の女性が顔を出した。


(うわっ!! おっ、おっ、おっぱ……っ)


 思わず口に出しそうになって堪えるが、しかし視線は外せない。

 何せ、長屋の窓の一つから身を乗り出したその女性は――胸が零れ落ちそうな露出度の高い質素な服を着て、けだるげに()()()をしていたのだから。


(えっ……こ、ここなに。アパートとかそういう場所……?)


 あんなお姉さんがいる場所で暮らせるのなら、楽しくやっていけるかもしれない。女性に弱いツカサにとって、仲良くして貰えるような女性がいるかどうかは激しく重要な問題だった。

 もしここに口利きをして貰えるのなら、厳しい生活もどうにかなるような気がする。


 先程(さきほど)まで気持ちが沈んでいたと言うのに、まったくもってゲンキンなツカサだった。


「……色々考えたんだけどね」

「うん。……えっ? な、なに?」


 女性に気を取られていて、反応が遅れてしまった。

 慌ててブレックの顔を見上げると、相手は無精髭だらけの顔を歪めて片眉を上げた。


「…………その調子なら、心配なんていらないかな」

「だ、だからなんだよ」

「ツカサ君は、そういう厄介な容姿をしてるだろ? だから、ローブを被ったままでも仕事が出来るような場所の方がいいだろう。そう思って、ここに連れて来たんだけど」

「えっ……そうだったの!?」

「……ま、君なら案外うまくやれるかもね。……ついて来て」


 ブレックがどんな仕事を考えてくれたのかは考えもつかないが、しかしツカサの容姿の事を考えて世話をしてくれた事は確かだろう。やはり、ブレックは面倒見がいい。

 そのことに改めて感謝しながら、長屋の中に入る。


(……あれ……受付……? なんか個人病院みたいな所だなぁ)


 日干しレンガで作られた長屋だというのに、入った場所は玄関ホールのように広くなっていて、真正面の壁にどこから持って来たのか分からないカウンターがあって、その手前には待合室の長椅子が置かれている。まさしく、どこぞの個人病院のようだった。


 もしかしてここは医務院か何かなのだろうか。

 考えて首を傾げるツカサをよそに、ブレックはカウンターの横にあった扉を開き、ずんずんと奥へ進んでいく。関係者以外立ち入り禁止の扉のようにも見えたのだが、勝手に入って良かったのだろうか。心配になりながらも進んでいくと、突きあたりから曲がった所に長い廊下が有って――――左側の壁には、いくつかカーテンをドア代わりにした部屋が並んでいた。


 その一番手前に、ブレックが入る。

 カーテンをのれんのように押し退けた相手に続くと、そこには――――薬品棚のようなものに囲まれた、診察室のような空間が有って。


「おや、君は【探索者】の“ニワトリ”じゃないか。もう目当ての物を持って来てくれたのかい? これはありがたい」


 その部屋にある珍しい木製の机で執筆していた相手が顔を上げる。


 ……妙に堅苦しい口調の、美しい老女。

 彼女は、ブレックとツカサが突然やってきたことに驚きもせず、ただ微笑みを浮かべていた。



 




 

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