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アースエンド・リトライバー~仲間に「役立たずだ!」と捨てられましたが、文明崩壊後の世界で最強オッサンに拾われて凄腕【探索者】になりました!~  作者: 羽賀庵こうら
第三話 【探索者】のバザール

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2.いざ【探索者】の世界へ1

 

 

「ツカサ君、はいこれ」

「これって……」


 硬い地面とは言えいつもより眠れた翌朝。

 野宿した場所を片付けていたツカサにブレックが渡してきたのは、みすぼらしい布に紐を付けた謎の道具だった。これを渡されて何をするのかと思ったら、どうやら頭から(かぶ)るらしい。


 ちょうど首のところにヒモがあって、これを結べば簡易マントの完成と言う訳だ。


「……すごい物乞(ものご)い感がある」

「今のツカサ君は似たようなモンだから丁度(ちょうど)いいじゃない」

「そうだな~! 今の俺はアンタに食料を頼……ってなんの嫌がらせだ!」


 思わずマントを剥ごうとしたが、ブレックに止められる。

 そもそも持ちつ持たれつの関係なのだから、物乞い呼ばわりはやめてほしいと睨むと、ブレックは先程のニヤついた言動を収め、妙に真面目な顔をしながら語りかけて来た。


「冗談はともかく、ソレは今から絶対にはずさないで」

「え……えぇ?」


 見上げる菫色の目は、とても真剣だ。

 どういうことだろうかと顔を歪めるツカサに、ブレックは続けた。


「言うかどうか迷ってたけど……今のこの世界はね、ツカサ君みたいな子の方が少ないんだ」

「ってぇと……みんなムキムキになってるとか?」

「それもあるけど」

「あるんかい」

「問題は、ツカサ君の容姿なんだよ」

 

 ようし。用紙……ではなくこの場合は姿形の事だろう。

 一瞬何がどういう事なのか解らず停止してしまったが、何が問題なのだろうかとツカサはブレックの顔を見上げた。……恐らくは外国人なのであろう、彫りが深く鼻がしっかりとした顔立ち。太く雄々しい眉とがっしりした(あご)は昭和の時代の俳優のようでも有り、汚らしい無精髭(ぶしょうひげ)さえなければ女にさぞ持てるだろうという男としての魅力に満ち溢れた美形だ。


 そんな顔に夕日にも似た真っ赤なうねり髪と不可思議な菫色(すみれいろ)の瞳があれば、どこに行ったってまずは邪険にされないだろう。魅力的と言う意味でも、強そうという意味でも。

 何故こんな胡散臭いオッサンを()めねばならないのだとツカサは内心イラッとしたが、そこは事実なのだから仕方がない。どれほど殺意が湧いてもこれが事実なのだ。


 ……そんなブレックと比べれば、確かにツカサは平凡すぎるかも知れない。


 童顔でたまに年齢を間違えられる情けなさではあるが、しかしツカサは美形と言う訳でも特別特徴のある顔と言うわけでもない。自分で言うのもなんだが、中の上くらいにはイケてるんじゃないかと思う顔立ちではあるが、しかし現実には女子からモテるということもなかった。むなしい。いやそれはともかく。


 良くも悪くも人に相手にされない自分の、どこが問題だと言うのだろうか。

 特殊な容姿のオッサンがよくいう、と眉間に皺を寄せると、こちらが何を思っているのか理解したのか、ブレックは片眉を上げて「あのねえ」と言葉を零した。


「……この世界にいる【ノコサレ】達は、もう君みたいな純日本人じゃないんだよ。【災害】の余波で変質して、ずいぶん変わってしまってる。たぶん、君が想像してない方向に」


 そう言われると、なんだか恐ろしくなってしまう。

 ブレックは、どうも「バイオスリープ装置」に入らずこの土地で生き続けてきた“日本人”を総じて【ノコサレ】と言っているようだが、たかだか数十年でそれほど変わる物なのだろうか。


 しかし、自分達が休眠措置で眠らされた理由である“あの災害”の事を考えると……懸命(けんめい)に生きて来た人々に、何らかの変化が起こっていた可能性も否定できない。

 地殻変動で大地は大きく変化し、(つら)(きび)しい世界で生きて来て、過去の事を忘れかけている。そんな【ノコサレ】達が「変化していない」と言うのは逆に無理があるだろう。ならば、変化している事はツカサでもなんとなく飲み込めたが……ツカサのような平凡な存在とはかけ離れた存在になったのなら、どういう変化をしているのだろう。


 考えて――――ツカサは、一番考えたくないものから問いかけた。


「も……モンスター……とか……?」

「……大多数はそうじゃないかな」

「少数モンスター化したの!?」

「そこは今置いておこうね。そうじゃなくて、平たく言えば容姿がもう全然変わってるんだよ。たぶん、ツカサ君みたいな童顔の子なんてもう同世代にはいないんじゃないかなあ」

「え……ええ?」


 言っている事が良く分からなくて首を傾げるツカサに、ブレックはハァと息を吐く。

 そうして、大型バイクに最後の荷物を載せた。


「とりあえず行ってみよう。百聞は一見にしかずっていうだろう?」

「アンタがそういうなら……」


 ずた袋のマントが剥がれないようにしっかりと紐を結んで、目深にフードを被る。慎重に身なりを整えバイクに乗るツカサを見て、ブレックはバイクを発進させた。


「…………」


 崖から降りる途中に見える眼下の大地には、確かに集落がある。

 旧日光周辺の【バスターズ・キャンプ】は廃墟の建物だけでなく、周囲に掘立(ほったて)小屋のようなものが(いびつ)な放射状に広がっている。(わら)のような素材の屋根とボロい木板の壁は、どう見ても現代的ではない。たまにレンガのような物で造っている頑丈そうな建物も有るが、そこには黒い服の何者かが常に立っていた。


(…………警備員的なモンなのかな……?)


 レンガの建物は比較的新しいように見えるが、あの中には何か重要な物があるのだろうか。あまり人が近寄っていない感じだから、ツカサはも近寄らない方が良いかも知れない。

 そんなことを思っている内にどんどん高度が下がり、キャンプは見えなくなってしまった。


 市場なども確認しておきたいと思っていたのだが、結局目立つ建物に気を取られてどんな人がいるのかキチンと見られなかった。少々悔しくなりつつも、荒野に戻りキャンプへと進んでいくと――――前方に再び高い木製の柵で囲まれた一帯が見えてきた。


 あれが、この周辺のコロニーから【探索者】が集まる【バスターズ・キャンプ】だ。


 徐々に高くなっていく柵は、思っていた以上に大きい。5メートルは確実に超えていて、どこにこんな太く大きな樹木が群生していたのかと驚くばかりだった。

 先程見た木製の家屋もそうだが、これだけの木材をどこで調達したのだろう。


 ブレックは「各所にポツポツと森が残っているエリアがある」と言っていたが、もしかしてそこから切り出してきたのだろうか。それにしても、これほど持って来たら森が消えてしまうような気もするのだが。不思議に思うツカサを余所に、ブレックは門の前まで来るとバイクを止めた。

 ……門だけは、金属製だ。どこかのサファリパークから持って来たような感じがするが、気にしても仕方がないのかも知れない。


 眉を歪めるツカサの前に、門番らしき男が近付いてきた。


「おい、お前ら【探索者】か。なら証を見せろ」


 そう言いに来たのは、ヒゲが顔の下半分を(おお)った大男だ。かなりの高身長であるブレックより更に少し身長が高く、ボロボロの上着から露出させた素肌の腕は筋骨隆々である。

 顔立ちはどことなく日本人っぽさもあるが、なんともいえない。外国人とは言い(がた)く、かといって純粋な日本人とも言えない曖昧な彫りの深さだった。そんな相手を見て――――ツカサは目を見開く。


(群青みたいな色の、髪の毛……!?)


 そう。その門番の男は、なんとも不可解な髪色をしていた。

 しかもそれだけではない。その男の目は、抹茶のような暗い緑色に染まっているのだ。


(なっ……ぇ……? この人、ブラックみたいに外国の……?)


 相手をジッと見やるツカサの視界を(さえぎ)るように、ブレックが間に割って入る。

 そうして、何やら取り出して相手に見せた。


「これでいいか?」


 問いかけるブレックに、相手は(いぶか)しげな顔をしてツカサをじろじろと見る。


「コイツは何なんだ? 売んのか?」


 売る、と言われてツカサは体をビクりと動かす。

 ブレックとは持ちつ持たれつという事になっているが、力関係ではツカサの方が圧倒的に不利だ。もしブレックが心変わりをしても、ツカサにはどうにも出来ない。なすすべもなくされるがままになってしまうだろう。信用していないワケではないが、ブレックが「人を信用出来ない世界」と言っていたのだから、そういう最悪の事態を考えるのは仕方のない事だった。


 しかしブレックは、相手に平然とした態度で返す。


「雇ってんだよ。ロクなポーターもいなかったから、適当に見繕(みつくろ)って貰ったんだ」

「ハァ? どこだよそのコロニー。こんなチビ寄越されてもどうしようもねえだろ。それとも……コイツはアッチの方が得意なのか?」


 門番はそう言って、下卑た笑みを浮かべながら親指を特定の指の間から出す。

 あまりにも失礼なジェスチャーの意味が解ってツカサは思わず赤面したが、ブレックは心を乱す事も無く返した。


「まあね。道に転がってる売女よりマシだろ? ……だから、コイツが(そば)にいないと困るんだよ。許可証はないんだが……これでなんとかしてくれ」


 そう言いながら、ブレックは相手に何かを渡す。

 すると、相手は目を輝かせて頷くと、門を開くように他の門番に命じた。


「さ、いこうかツカサ君」

「う……うん……」


 大型のバイクを軽々と押して門へ進んでいくブレックに、慌てて付いて行く。

 やけに簡単に入れてしまったが、それほどの物を相手は貰ったと言うのだろうか。というか、アレは本当に正規の入門方法だったのだろうか。


(ま、まさか……ワイロとかじゃないよな……)


 知りたくないが、しかし知っておかねば寝られない気がする。

 どうしようかと思ったが、門をくぐると同時にツカサはブレックの顔を見上げた。


「あの……さっき、何を渡したんだ?」


 恐る恐るそう聞くと、ブレックはツカサを見て答えた。


「え? クスリだけど?」

「くす……え? く、クスリ? 薬ってアンタ、まさか……」


 ヤッてんのかと青ざめると、ブレックは笑う。

 いや笑い事ではないのだが。


「あはは、やだなあ。使ってる顔にみえる? まあ僕はああいうバカみたいな物は使わないけど、そういうのがスキな奴も大勢いるからね。それに……金代わりに流通していて、他の物資よりレートが高いってコロニーもあるから。持っててソンはないんだ」

「レートって……思った以上に汚染されてんだなこの世界……」

「今更なこと言うなあ。ま、否定はしないけどね。さあ、ここが第二の【バスターズ・キャンプ】だよツカサ君」


 見てごらん、と言われて、ツカサは前方を見やる。

 するとそこには……過去の世界とは全く違う世界が広がっていた。

 









 

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